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郷土が生んだ偉人 菱田春草

ページID:0324281 更新日:2024年2月10日更新 印刷ページ表示

菱田春草(ひしだしゅんそう)

菱田春草

1874(明治7)年9月21日に飯田市仲ノ町(当時は筑摩県飯田町)に生まれた日本画家です。〈王昭君〉〈賢首菩薩〉〈落葉〉〈黒き猫〉の4点の作品が国の重要文化財に指定されています。これは明治以降の画家では最も多い数で、近代の日本美術を拓いた人物として名を知られています。

菱田春草の生涯

飯田で生まれ育ち、東京美術学校に入学

13才まで飯田学校(現追手町小学校)で学んだ後に上京し、狩野派の結城正明の画塾に学び、16才の時、東京美術学校に入学しました。美術学校在学中から画才は注目を浴び、卒業制作の〈寡婦と孤児〉では教授の評価が二分し物議をかもしましたが、校長の岡倉天心の裁定により最優等となりました。

日本美術院に参加し、新しい日本の絵画を追求

美術学校卒業後は、同校の教員となりましたが、岡倉天心が学校を追われるにともなって教員を辞職し、天心が新しく発足させた日本美術院の正員となりました。日本美術院の展覧会では、日本の伝統絵画に西洋絵画の技法を取り込み、新たな日本絵画「日本画」の創造に邁進しました。特に輪郭線を無くし、今までの日本絵画になかった色の重なりで描いた技法は「朦朧体(もうろうたい)」と酷評されました。〈菊慈童〉〈王昭君〉はこの時期の代表作です。

インド、アメリカ、ヨーロッパへ渡り見聞を広める

28才から30才にかけてインド、アメリカ、ヨーロッパを訪問し、国外の美術を見聞しました。帰国後は、日本美術院の茨城県五浦への移転により家族とともに移住します。この頃は絵の注文がほとんどなく、生活は貧困を極めました。その中で色彩研究を進め、朦朧体で得た技法を生かしながら装飾性と写実性を兼ね備えた日本画の完成を目指しました。

日本画の名作を次々と生み出すものの36才で早世

五浦の地で苦心の末描いた〈賢首菩薩〉を第1回文展に出品し好評価を得ました。ところがその後、腎臓病による失明の危機に見舞われ、絵の制作の中断を余儀なくされました。長い療養生活の後、ようやく小康状態を得て代表作〈落葉〉を発表。さらに〈黒き猫〉で画壇の注目を集めました。これらの作品は日本画の名品として今も多くの人々に愛されています。しかし、病は再び春草の身体をむしばみついに失明、37才の誕生日を前にした1911(明治44)年9月16日に短い生涯を終えました。

飯田市所蔵の名品〈菊慈童〉

菊慈童菊慈童

飯田市では現在30点の菱田春草作品を所蔵しています。その中で最も重要な作品は〈菊慈童〉です。25才の時の作品です。〈菊慈童〉にはほとんど輪郭線を用いていません。木々の重なり、渓流の流れ、地面や岩などを色だけで描いています。この技法は「朦朧体」と呼ばれ酷評されましたが、現在では、日本絵画を一新させた画期的な画法として高く評価されています。不老不死のおめでたい画題とされてきた「菊慈童」を、深山の中でひとり少年のままたたずむ孤独な姿として描いています。紅葉の山の深遠な奥行きは、どこか飯田の自然風景を思わせます。
2002(平成14)年に飯田市民をはじめとした多くの方々の募金によって購入することが叶った作品です。毎年1回、約1ヶ月間、飯田市美術博物館で公開しています。

春草が生まれ育った町

元飯田藩士の菱田家に生まれた春草は、旧飯田城下町の仲ノ町に育ちました。少年時代に学んだ飯田学校は、現在の追手町小学校にあたり、旧飯田城内に設置されました。春草が学んだ頃の校舎は昭和の初めに建て替えられ、ほぼ同時期に建った講堂とともに国の登録有形文化財として学校の歴史を刻んでいます。
また飯田市役所に近い箕瀬町の柏心寺には、春草が眠る墓所があります。春草の墓は終焉の地の東京にもありますが、郷里の飯田の墓は今も大切に守られ続けています。
春草生家付近は、飯田大火をくぐり抜けた建物も残っており、小京都と称された飯田町の面影を忍ぶことができます。

春草生誕地に「菱田春草生誕地公園」が完成!

平成22年に「春草を顕彰しその偉業を伝える公園の整備を」と橋北地区から声があがり、署名活動が行われました。
そして「春草生誕の地」の整備を願う市民の会が発足し募金活動が行われ、市内外の多くの方からの浄財を基に、平成27年3月末、公園が完成しました。
今後は住民組織の「春草公園を愛する会」により、維持管理と活用が行われます。

開園式生誕地公園の図

所在地

飯田市仲ノ町307番地1

アクセス

JR飯田線:飯田駅から徒歩20分、桜町駅から徒歩15分
中央道高速バス:飯田商工会館から徒歩15分
中央自動車道:飯田ICから車で10分

菱田春草リンク集

菱田春草について(飯田市美術博物館HP)(外部リンク)

菱田春草が家族に宛てた書簡