本文
飯田アカデミア第73講座を開催しました
飯田アカデミア2014 第73講座 報告
第73回となる飯田アカデミアを、フランスのパリ社会科学高等研究所のギヨーム・カレ先生をお招きして、12月6日(土曜日)に開催しました。
日本近世史に関する著名な研究者であるカレ先生は、日本とフランスの歴史研究者(特に両国の近世史研究者)による交流において中心的な役割を果たされており、日仏両国の近世史や史学史に深い造詣をお持ちです。
第1講では「近世フランスと日本の職業団体」、第2講では「悪銀と偽銀の江戸時代」と題して、これまでのカレ先生の研究を生かし、日本とフランスの比較を交えながら講義をしていただきました。
第1講では日本とフランスの職業集団の実態や特徴などを通じて、経済的な問題だけでなく、両国における身分の問題についても言及され、比較史の重要性を論じられました。また第2講では、近世における貨幣制度の概略に続き、初期の加賀藩を事例に、中央の貨幣制度を離れて地域で流通した貨幣(「領国貨幣」)について検討を加えられ、経済の中心であった江戸、京都、大坂の三都以外の、地域における貨幣流通研究の必要性を説かれました。
今回のアカデミアは、長年にわたる日仏両国の研究者による交流の結果、開催に至った経緯があり、異なる歴史的な背景を持つ日本とフランスを比較するという視点に大きな特徴がありました。こうした比較という作業は、飯田・下伊那の歴史を考える上でも必要不可欠な営為であり、本アカデミアでは同地域の研究における重要な視角が提示されていたように思います。
講師
ギヨーム・カレ (パリ社会科学高等研究所 日本学研究所長)
1970年生まれ
フランス国立東洋言語文化学院(博士)
研究分野:日本近世史(城下町金沢の町と商人の研究)
主要論文
- 「近世初期の流通転換と問屋 -金沢を事例として-」 (『年報都市史研究』11号)
- 「飯田とシャルルヴィルを比較する」 (『伝統都市を比較する』、山川出版社)
- 「役の周縁・金沢銀座と諸方御土蔵の従業員について」(『東アジア近世都市における社会的結合』、清文堂)
講義概要
第1講 近世フランスと日本の職業団体
- 「同業組合」と「仲間」の起源
- 職業団体と近世の支配制度
- 内部組織と機能
- 同業組合の機能
- 職業団体の理念
- 経済政策の梃子としての役割
- 批判から廃止へ。現代資本主義生産の胎動
- 結論
第2講 悪銀と偽銀の江戸時代
- 三貨制度と領国貨幣
- 「悪銀」の流通の理由と実態
- 偽銀と偽封筒
- 結論