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飯田アカデミア第79講座を開催しました

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年11月8日更新

飯田アカデミア第79講座 報告

   吉見先生 アカデミア79
 

 飯田アカデミア第79回が、11月5・6日に、吉見義明先生(中央大学商学部教授)を講師として、「戦中体験から戦後体験へ ―「焼跡からのデモクラシー」の形成をめぐって―」というタイトルで開催されました。

 本講座では、戦中~戦後を生きたふつうの人びとが書いた日記を素材として、伝統的な民衆意識の持続とその変革(自己変革)という側面から、「平和」や「民主主義」についての意識をさぐることが課題とされました。

 1日目には、横浜空襲を体験し、戦後に砥石屋を営んだ敗戦時20歳の男性の日記(第1講)、戦時中に中島飛行機武蔵工場に勤務し、戦後は小学校教員となった敗戦時22歳の女性の日記(第2講)が取り上げられました。2日目はいずれも飯田に関わる人物で、戦時中から小学校教員や校長を勤め、戦後に下伊那教育会や下伊那教員組合の運動に深く携わった男性の日記(第3講)、戦時中に女学校の教員となり、戦後も中学校教員を勤めた女性の日記(第4講)が取り上げられました。
 
 これらの日記をていねいに分析されたうえで、最後のまとめでは、戦後民主主義を「与えられた民主主義」とみる考え方に対しては、民衆の主体性への着目が不十分だと批判しつつ、一方で民主主義は戦前より自ら作り上げてきたものだとする「自前の民主主義」論に対しても、戦時期の全民衆的な戦争体験の意味を踏まえる必要があることを指摘されました。また、明治以前から存在した民衆的な伝統―すなわち、勉学や修練を積み重ねることによって人格を完成させるという「修養」の道徳や、アジアの諸民族に対する優越意識・差別意識として現出する「帝国意識」―、これらが戦中の戦争支持や戦後の平和・自由・民主主義の形成の中でいかなる意味をもつのか検討が求められるが、そのためには高度成長期の日記の分析が課題となってくるとも述べられました。

 それぞれの日記を丹念に読み込み、個々人の生き方や思いに寄り添って、その固有な人生の全体像を描き出し、そのうえで当時の民衆に共通する意識を浮き彫りにしていく吉見先生の研究は、そこで明らかにされた事実は言うまでもなく、社会の中で名を残すことなく、しかし懸命に自らの独自の人生を歩んだ、ふつうの人びとの歴史を明らかにする方法を考えるに際しても大きな示唆を得るものでした。

 講師

吉見 義明 (よしみ よしあき)さん 〔中央大学商学部教授〕

1946年山口県生まれ。1970年東京大学文学部卒業、1972年同大学院人文科学研究科国史学専攻修士課程修了。東京大学文学部助手、中央大学商学部専任講師等を経て、現在中央大学商学部教授。歴史学者。専攻日本近現代史。

主要業績(著書) 

日本人の戦争体験、占領期の民衆意識、日本軍の毒ガス戦、「従軍慰安婦」などを研究。

  • 『草の根のファシズム―日本民衆の戦争体験』(東京大学出版会)
  • 『焼跡からのデモクラシー』全2巻(岩波書店)
  • 『従軍慰安婦』(岩波新書)、『毒ガス戦と日本軍』(岩波書店)
  • 『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(岩波ブックレット)など多数

 講義概要

戦中体験から戦後体験へ ―「焼跡からのデモクラシー」の形成をめぐって―

第1講 「ある砥石屋の戦中・戦後体験」(横浜市)
第2講 「中島飛行機女子職員の戦中・戦後体験」(浦和市)
第3講 「ある小学校男子教員の戦中・戦後体験」(飯田市)
第4講 「ある女学校・中学校女子教員の戦中・戦後体験」(飯田市)

   吉見先生  吉見先生