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田アカデミア第80講座を開催しました(20170520‐21)

ページID:0075657 更新日:2017年5月30日更新 印刷ページ表示

飯田アカデミア第80講座 報告

    映画上映会 澄川さん
 

 飯田アカデミア第80回「山里の暮らしを描く」として、映画『タイマグラばあちゃん』の上映会と、上映作品の監督である澄川嘉彦氏の講演会・意見交換会が、5月20日に竜丘公民館大ホールにて開催されました。

 映画は、岩手県早池峰山(はやちねさん)の麓にある「タイマグラ」を舞台に、そこに住む「タイマグラばあちゃん」こと向田マサヨさん夫婦の暮らしと、開拓農家が残した空き家に新たに住み始めた若者との交流、さらに若者の家族がばあちゃんから受け継いでいく味噌づくりを中心に、厳しくも美しい自然の中で育まれる暮らしを、人々に寄り添って描いた110分のドキュメンタリー作品でした。

 アイヌの言葉で「小さな沢の多い森」「森の奥に続く道」という意味が込められたタイマグラの地名の由来の解説から、澄川さんの話は始まりました。山奥深いタイマグラの立地や、戦後の開拓の歴史、昭和63年に「昭和の最後に灯ったあかり」という新聞記事が掲載されて、澄川さん自身がNHKの番組製作のために初めてタイマグラを訪ねたこと、上司からの「この婆さんは歴史を背負っていないから」という指摘に戸惑いながら製作した番組が思わぬ反響を呼び、自身もばあちゃんたちの暮らしに引込まれ、退社してタイマグラに移住し、映画の制作を行うようになった経緯が語られました。
 
 向田夫妻が初対面の澄川さんを温かく向い入れた際の「壁のなさ」や、分け隔てなく「よく来た」と来客を迎える姿を印象深く語たり、心に残るものがあったと話しました。そしてタイマグラでの暮らしの中では、ばあちゃんの水や樹木、寒さといった自然の恵みを利用する知恵の奥深さや、自然に対する畏敬の念に感銘を受け、自分が一人では生きていけないことを知っているからこそ、水や動物、山と皆で一緒に助けあって生きることを大切にしていたと言います。だからどんな人にも壁を作らず、堂々と生きているのではないかと。

 澄川さんは、ばあちゃんに受け継がれた太古からの暮らしで育まれた自然との関係は、タイマグラだけではなくもともとは日本各地にあり、それを引き継いでいない自分たちの世代との間には、大きな歴史的な断絶があると指摘されました。

 その自然との共存の中で培われた精神性の断絶は、私たちが飯田・下伊那をフィールドに行っている調査活動の中でも、確かに感じられるものです。澄川さんは、記録者として山里の暮らしの中に身を投じ、15年という長い時間をかけて、ばあちゃんが話す僅かな言葉や満ち足りた微笑みを抽出しながら、その断絶の存在と一方で味噌づくりを受け継ぐ若者の家族を通して継承の意義を鮮やかに描き出していたように思います。

 講師

澄川 嘉彦 (すみかわ よしひこ)さん (映像作家)
1963年広島市生まれ。東京大学卒業後、NHKにディレクターとして入社し、仙台放送局に赴任する。
東北を中心にドキュメンタリー番組を担当し、ローカル番組の取材で「タイマグラばあちゃん」こと向田マサヨさんと出会う。99年に退社して岩手県川井村(現宮古市)タイマグラに移り住み、向田さんの記録を続け、2004年春、記録映画「タイマグラばあちゃん」をまとめた。同映画は2006年3月にスイスのフライブルグ国際映画祭において最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなど内外で高い評価を得た。最新作は、タイマグラで暮らす子どもたちの成長を7年間にわたって見つめた「大きな家~タイマグラの森の子どもたち~」(2009年)で、現在、ハヤチネプロダクション代表として様々な映像作品を手がけている。

 講義概要

第1講座 「タイマグラばあちゃん」上映会

<あらすじ>
 岩手県早池峰山(はやちねさん)の麓にある「タイマグラ」と呼ばれる開拓地を舞台に、そこに住む「タイマグラばあちゃん」こと向田マサヨさん夫婦の暮らしと、開拓農家が残した空き家に新たに住み始めた若者と彼の家族が引き継いでいく手作りの「味噌づくり」を中心に、厳しくも美しい自然環境の中で育まれる、世代を超えた交流を人々に寄りそって描いた作品です。

第2講座 「講演・質疑応答」

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