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研究報告「喜久水酒造愛宕蔵に関する所見」

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年6月3日更新
研究報告「喜久水酒造愛宕蔵に関する所見」の写真です

 長野県飯田市愛宕町に所在する喜久水酒造愛宕蔵は、仕込蔵、中蔵、一蔵、白米蔵の土蔵群と上糟場、事務所・居室、食堂・浴室等からなる複合建築である。これらはかつて加藤酒店の施設であったが、昭和19年喜久水酒造設立後、同社の管理下に置かれた。

 愛宕蔵建築群のうち、仕込蔵と中蔵がもっとも古く、それ以外の建物は後の増築部分である。ここでは建築的に重要とみなされる仕込蔵と中蔵について、その建築的特徴および価値について述べる。

建築様式

仕込蔵

 棟札によると、大正6年5月16日の上棟で、当主加藤勘治郎、棟梁小川繁郎。加藤家は勘治郎先代の小平の代までは、焼酎醸造を行っていたが、勘治郎の代になって酒造業に乗り出すことになる。この蔵は加藤家が本格的に酒造業を始めるにあたって新築されたものである。
 梁間14.4メートル(8間)、桁行21.6メートル(12間)、総2階建て瓦葺・土蔵造の建築で、愛宕建築群のうち、最大規模を誇る。3尺ごとに側柱を入れ、入側部分には3間おきに丸太柱を立てる。
 1階は土間床で天井高は4.2メートルに及ぶ。天井は2階床を兼ねており、梁行方向に2列の大断面の牛梁を通し、3尺ごとに根太を入れる。

 2階は丸太柱筋を基準として太い梁を井桁に組み、堅牢な和小屋形式の小屋組をつくる。2階床から棟木までの高さは6.5メートルに及ぶ。
 壁は土壁に白漆喰を塗り込め、腰部分は海鼠壁とする。入口は冠木門形式をとり、両端の壁は円弧状になっており、当時モダンなデザインとして流行した小片のタイルが貼られている。

中蔵

 棟札に年号はないが、「建主加藤勘治郎」あることから、一連の施設として仕込蔵と同時期に建設されたものである。棟梁は松澤猪六と梅村特市郎。

 梁間15.1メートル(8.4間)、桁行16.8メートル(9.3間)、総2階建て瓦葺・土蔵造りで、基本的な建築形式は上記仕込蔵と同一である。仕込蔵より平面規模はやや小さいが、1階天井高4.5メートル、2階棟木高6.9メートルと、高さで仕込蔵を凌ぐ。
 仕込蔵は道路に直接面するが、中蔵は道路から約10メートル引いた位置にたち、仕込蔵に隣接する。中蔵背後の一蔵は後に増築されたものである。

建築的価値

飯田繁栄のシンボル

 愛宕蔵の中心をなす仕込蔵と中蔵は、飯田市内はもとより長野県内においても最大規模の酒蔵群であって、飯田の産業が繁栄のピークを迎えた大正6年に建てられたという点で、当市の近代化への活気を象徴する建物であり、時代の生きた証人という意義をもつ。

大空間と構造合理性

 こうした大空間を実現するにあたって、構造形式は伝統的な構法を継承しながらも、柱・梁のシステマティックで合理的な構造が採用されており、伝統的構法の到達点を示している(戦後建てられた喜久水の仲町土蔵は洋風トラス構造へと移行)。

蔵の町並み景観

 道路から見た愛宕蔵の景観は、対面する加藤酒店の土蔵と併せて、土蔵群が立ち並ぶ美しい町並みを形成している。こうした群景観は飯田で唯一のものであり、貴重である。

保存再生への可能性

 喜久水酒造愛宕蔵、とりわけ仕込蔵と中蔵は上記のように飯田市にとって、きわめて貴重な建築であり、何らかの保存的措置を講ずることが必要である。またこの建物はさまざまな機能に転用可能な大空間を備えており、時代の要請に応じた再生計画を考えるべきであろう。その場合、注意すべき点として以下のことを指摘しておきたい。

構造補強と建築基準法

 この建物はきわめて合理的な構造形式を採用しており、基本的な構造部材は堅牢と言ってよい。建物基礎部分も腐食・虫害に侵されていない。ただし、一部壁が破損していたり、床に傾きが生じている問題箇所が認められる。再用するにあたっては、適切な構造補強および耐震補強を施し、安全性を確保する必要があろう。
 またこれを居室として使うためには、開口部その他、現行の建築基準法に則った改変が必要となるが、技術的には十分解決可能な問題であると思われる。

用途

 当面、空調設備を要しない物品の収蔵スペースとして再利用するのが妥当である。しかし、将来的には市民参加を得て、この大空間をうまく生かした再生計画を考えていくことが望ましい。

関連リンク

喜久水酒造(外部リンク)

オンリーワンの酒蔵見学1(喜久水酒造)(外部リンク)

愛宕蔵(観光サイトより)(外部リンク)

地図

愛宕蔵