ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
ホーム > 分類でさがす > くらしの情報 > 教育 > 歴史・風土 > 飯田歴研賞2018 受賞作品紹介
ホーム > 分類でさがす > くらしの情報 > 教育 > 学習情報 > 飯田歴研賞2018 受賞作品紹介

飯田歴研賞2018 受賞作品紹介

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年11月6日更新

2018年度飯田歴研賞 受賞作品のご紹介

 この賞は、飯田・下伊那の地域史研究における優れた論文や著書等を表彰するものです。今年度の受賞5作品をご紹介します。
 なお、第16回飯田市地域史研究集会(8月25日開催)で授賞式が行われ、受賞された方々には、表彰状等が贈られました。

著作部門

豊丘史学会 様

 『豊丘風土記 第24輯―豊丘から満蒙開拓・第二次世界大戦を考える―』 (豊丘史学会、2017)

 豊丘村風土記第24輯

 本作は、以下の諸点において注目される作品である。

第一に豊丘史学会の活動自体のユニークさが重要である。豊丘史学会はリニア建設の問題を受けた企画など、つねに地域の未来と歴史を関連させて研究活動を行っている。

この点は本作品を読む上でも重要である。中学生の取り組みが紹介されているのも、こうした史学会の姿勢―方法によるのだろう。

第二に、その歴史的課題設定のセンスの高さである。本書は、指摘にあるように「明治150年」問題が意識されているが、近代の「初発」ではなく―少なくとも同時に「帰結」を問題にしようとする歴史意識を打ち出している。

テーマは「満蒙開拓・第二次世界大戦」ではあるが、地域近代史総体へと問題発見の視線が伸びていくことが期待される。

第三に、証言と記録(戦争関連死者数や遺影なども含む)など細部へのこだわりである。

今後、どこまで地域の歴史像を豊富化する記録が整理・確認されるかは課題であるとはいえ、いわゆる証言・手記を多く収録した本書の価値は大きい。

 

公益社団法人 南信州地域資料センター 様

『「伊那青年」とその時代』 (南信州新聞社出版局、2017)

 伊那青年とその時代

 南信州地域資料センターを拠点として、雑誌『伊那青年』(明治33年―明治36年、計38冊)の復刻事業が進行している。

本書は『伊那青年』復刻プロジェクトにかかわっている皆さんによって編まれた、『伊那青年』の研究案内書ともいうべき作品。13本のモノグラフィーからなる。

本書の各論文には、『伊那青年』に参集した下伊那地方の青年たちの人物像、この雑誌の時代的文化的背景が様々な角度から浮き彫りにされており、

日清戦争後の時代にこの地に生きた青年たちの近代的な自我の確立のための努力と彼らの向かっていた方向が、克明に捉えられている。

本書は今後『伊那青年』の重要な研究案内となるであろう。

おそらく、復刻される『伊那青年』は、青年の歴史研究の貴重な史料として各界から注目されることになると思われるが、

それに先立ち刊行された本書は、今後の『伊那青年』の研究上、貴重な基礎文献となるであろう。

本書は全体として、『伊那青年』の歴史的な意義を明らかにしているばかりでなく、雑誌周辺の一人一人の青年たちの実像を生き生きと描き出すのに成功している。

付録として伊那青年の寄稿者と会員名、出身地域、掲載号数が一覧表にして掲載されているのも、今後の『伊那青年』研究に大いに貢献することになろう。

 

論文部門

上條宏之 

「愛国正理社総理坂田哲太郎昌言についての再考」 (『伊那』第65巻第5号、2017年)

 伊那第65巻第5号

 著者は、飯田ゆかりの民権家・坂田哲太郎の思想と行動について、かねてから研究に取り組んできた。

その著者のもとに坂田の遺族からもたらされた新資料が、著者を動かし、再度、自説の検討に向けさせるさまは、読む者を引き込む力がある。

本論の成果としては、故郷熊本での最初期の坂田の履歴(幼少期、西南戦争前後の履歴)が確定されたことがまずは挙げられる。

第二の成果として、坂田のキリスト教入信の経緯が、津田仙の塾に入ったとの新記述を受けて修正された点がある。

第三に、『東京政談』記者となったとの新資料の記述を受けて、1880年中に坂田の元に発刊された7号分の雑誌の目次・内容を確認したことが挙げられる。

近年、松沢裕作『自由民権運動』(岩波書店、2016年)による新たな分析視角として、民権家の「出自語り」と戊辰戦争参戦経験との関係がクローズアップされたが、

その関連でいえば、著者が坂田の西南戦争経験を詳述したことは、時宜にかなう論点となろう。

 

奨励賞

 早苗寿雄 様 

「戦国期武田氏による下伊那地域の領主支配について」 (『信濃』第69巻第11号、2017年)

  信濃第69巻第11号

 本稿は、「武田氏はどのようにして国人領主たちを『武田領国』の支配構造に取り込んだのだろうか」という問題意識の下に、

「武田氏侵攻時の下伊那地域の国人領主の動向と、武田信玄・勝頼による下伊那地域の先方衆に対する政治支配の諸相と諸氏の動向」を考察しようとしたものである。

先方衆は武田家重臣の寄騎として、占領地の城番主を勤めたが城領支配はしなかったこと、有力先方衆が周辺地域の治安維持と先方衆領の知行安堵を行っていたこと、

土豪が武田氏直轄領と先方衆領の両方の代官を勤めていたこと、武田勝頼は先方衆に対し強い警戒心を持っていたことなどが指摘されている。

一次史料を博捜して歴史事実を明らかにしようとする態度には好感が持てる。また、土豪が複数の郷の代官を勤めている事例を抽出した点も興味深い。

佐古新一・佐古香代子 様

『古文書が語る帯川村史』 (飯田共同印刷株式会社、2018年)

 古文書が語る帯川村史

 阿南町帯川に残された数種の豊富な史料群の調査を基礎に、古文書をていねいに解読し、近世から近代初にかけての旧帯川の歴史をまとめた労作。

この時期、わずか高10石・百姓8軒という規模の小さな山里であるが、ここには公儀の帯川関所が置かれ、また山との深いかかわりの中で歩んできた歴史を、多くの翻刻史料や、貴重なデータと共に描く。山里社会のようすを丹念に辿る貴重な成果である。

 

関連リンク

 飯田歴研賞受賞作品一覧