○飯田市環境基本条例
平成9年3月27日
条例第1号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策(第6条―第27条)
第1節 施策の基本方針等(第6条―第11条)
第2節 環境の保全及び創造に関する施策(第12条―第23条)
第3節 地球環境の保全に関する施策(第24条・第25条)
第4節 施策の推進体制等(第26条・第27条)
第3章 飯田市環境審議会(第28条―第32条)
附則
私たちの郷土、飯田市は、南アルプスや中央アルプスをはじめとする山並みに囲まれ、天竜川沿いの河岸段丘に発達した、伝統文化の息づくまちである。美しく雄大な自然に抱かれ、その豊かな水や緑は、古来より、市民生活に潤いを与え地場産業の発展を促すなど、様々な恵みをもたらしてきた。
しかしながら、近年は、過去のような産業公害が減少する一方において、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動の定着や無秩序な都市化の進展により、廃棄物の増大、生活排水や自動車などによる都市・生活型公害、身近な自然の減少、良好な景観の破壊など新たな環境問題が顕在化してきている。
私たちは、ともすれば、生産の向上と便利な生活を追求するあまり、人類も生態系の中の一員であり、自然や文化の深い恩恵にはぐくまれて生存できることを忘れがちとなり、日々の活動による環境への影響は、地球的規模にまで拡大した。人類共通の重要な課題となった地球環境問題は、その解決に向けてわが国の地方自治体にも、大きな役割が求められてきている。
今こそ私たちは、広い視野に立って、すべての人々が健全で豊かな環境の恵沢を享受するとともに、将来の世代に良好な環境を引き継いでいく責務を有することを認識し、環境への負荷を低減するため、すべての者の公平な役割分担の下に社会経済システムや生活様式の変革を図っていかなければならない。
このような認識の下、私たちは、市民の総意として、美しい環境と文化の香りに包まれた持続的に発展することができる都市を、強い意志と行動により築くことを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境基本法(平成5年法律第91号。以下「法」という。)の精神にのっとり、環境の保全及び創造について、飯田市(以下「市」という。)、事業者及び市民が一体となって取り組むための基本理念を定め、並びに市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本的事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民の福祉の向上に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 環境の保全及び創造は、情報の適切な提供及び施策の策定等への市民参加を通じて、現在及び将来の市民の健全で豊かな環境の恵沢を享受する権利の実現を図ることにより、健康で文化的な生活の確保を目的として積極的に推進されなければならない。
2 環境の保全及び創造は、環境の復元力には限界があることにかんがみ、環境資源の節度ある利用を行うこと及び環境の保全上の支障を未然に防止することを旨とし、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を目指し、すべての者の公平な役割分担の下に積極的に取り組むことによって行われなければならない。
3 地球環境保全は、地域の環境が地球環境に深くかかわっていることから、市、事業者及び市民が自らの課題であるととらえ、それぞれの事業活動及び市民生活において積極的に推進されなければならない。
(市の責務)
第3条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市域の自然的社会的条件に応じた総合的かつ計画的な環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 市は、基本理念にのっとり、すべての施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境への配慮を優先し、環境への負荷の低減その他の環境の保全及び創造を積極的に推進する責務を有する。
(事業者の責務)
第4条 事業者は、基本理念にのっとり、次の各号に掲げる事項について必要な措置を講ずる責務を有する。
(1) 事業活動に伴って生ずる公害の防止並びに廃棄物の減量及び再利用その他の廃棄物の適正処理を行うとともに、事業活動において資源及びエネルギーの有効利用並びに廃棄物の削減に資するような物の製造、販売等を推進することにより環境への負荷を低減すること。
(2) 開発事業等に当たっては、地域の環境特性に応じた適正な土地利用を基本に置き、自然及び景観への配慮その他の環境の保全及び創造を自ら積極的に行うこと。
2 事業者は、市民が行う地域の環境保全及び創造活動に積極的に参加協力するよう努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(市民の責務)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、資源及びエネルギーの消費、廃棄物及び生活排水の排出等による環境の保全上の支障を防止するため、市民生活に伴う環境への負荷を低減する責務を有する。
2 前項に定めるもののほか、市民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策
第1節 施策の基本方針等
(施策の基本方針)
第6条 市は、基本理念の実現を図るため、次に掲げる基本方針に基づき、環境の保全及び創造に関する施策を推進しなければならない。
(1) 大気、水、土壌等を良好な状態に保つことにより、人の健康を保護し、及び生活環境を保全すること。
(2) 地域の環境特性に応じた適正な土地利用を基本に置き、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境の保全及び貴重な野生生物の保護を図るとともに、緑化を推進することにより自然と人との共生を確保すること。
(3) 自然環境と一体となった美しい自然景観の保全、地域の歴史的文化的な特性を生かした田園及び都市景観の形成、水や緑に親しむことができる公共空間の形成等を図ることにより、潤いと安らぎのある良好な都市環境を創造すること。
(4) 資源の循環的利用、エネルギーの有効利用、廃棄物の減量化等の推進を図り、環境への負荷の少ない循環を基調とする社会を構築すること。
(5) 山林の計画的な育成管理及び森林資源の有効利用を推進すること。
(6) 良好な環境の形成は、すべての者の公平な役割分担に基づく参加及び行動に負っていることから、一人一人が環境の保全及び創造に主体的に取り組むことができるよう、環境に関する普及、啓発等を推進すること。
(環境計画の策定等)
第7条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、環境計画を策定しなければならない。
2 環境計画においては、環境の保全及び創造に関する目標、目標を達成するための施策、環境配慮指針その他の必要な事項を定めるものとする。
3 市長は、環境計画を策定するときは、市民及び事業者の意見を反映するための必要な措置を講ずるとともに、飯田市環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、環境計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境計画の変更について準用する。
(年次報告書の作成及び公表)
第8条 市長は、環境の状況、環境計画に基づいて実施された施策の状況等について年次報告書を作成し、飯田市環境審議会の意見を聴くとともに、これを公表しなければならない。
(施策の実施と環境計画との整合)
第9条 市は、自らが実施するすべての施策における環境の保全及び創造に関する事項について、環境計画との整合性を図らなければならない。
(総合的調整)
第10条 市は、環境計画の効果的な推進を図るため、次に掲げる事項について総合的な調整を行わなければならない。
(1) 環境に著しい負荷を及ぼすおそれのある市の施策の策定及び実施に関すること。
(2) 環境計画の策定及び変更に関すること。
(3) その他環境施策の総合的な推進に関すること。
2 市は、前項に規定する総合的な調整を行うため、飯田市環境調整会議(以下「調整会議」という。)を置く。
3 前2項に定めるもののほか、調整会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(財政上の措置)
第11条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。
第2節 環境の保全及び創造に関する施策
(開発事業等の計画の立案及び実施に係る環境への配慮)
第12条 環境に著しい影響を与えるおそれのある土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を計画及び実施しようとする者は、その計画の立案及び実施による環境への影響を緩和するために、適正な配慮をするとともに、環境の保全及び創造に努めなければならない。
2 市は、前項の規定による適正な配慮がなされるために必要な措置を講じなければならない。
(規制の措置)
第13条 市は、公害の原因となる行為及び自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるよう努めなければならない。
(経済的措置)
第14条 市は、事業者又は市民が自ら環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとるよう誘導することにより環境の保全上の支障を防止するため、助成その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(良好な景観の形成)
第15条 市は、個性豊かで文化の香る快適な環境を確保するため、魅力ある街並みの創造、美しい緑地及び農地の保全、歴史的文化的施設の保全及び活用その他の良好な景観の形成に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2 市は、特に優れた景観については、その維持が図られるよう必要な措置を講じなければならない。
(施設の整備等)
第16条 市は、下水及び廃棄物の処理施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備を推進するため、必要な措置を講じなければならない。
2 市は、公園、緑地、河川その他の環境の保全及び創造に資する公共的施設の整備並びに森林の整備その他の環境の保全及び創造に資する公共的事業を推進するため、必要な措置を講じなければならない。
3 前2項に定める公共的施設の整備及び公共的事業を推進するに当たっては、生物の多様性の確保に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(資源等の有効利用の促進)
第17条 市は、環境への負荷の低減を図るため、事業者及び市民による廃棄物の減量及び再利用並びに資源及びエネルギーの有効利用が促進されるよう必要な措置を講じなければならない。
2 市は、国内において産する木材の計画的かつ有効な利用を図るため、公共施設への利用を推進するとともに、事業者及び市民における効果的な利用が促進されるよう必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(環境の保全及び創造に関する協定の締結)
第18条 市長は、環境の保全及び創造に関し必要があると認めるときは、事業者及び市民と環境の保全及び創造に関する協定について協議し、その締結に努めなければならない。
(環境教育及び環境学習の推進等)
第19条 市は、市民及び事業者が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともに、これらの者の環境の保全及び創造に資する活動を行う意欲が増進されるようにするため、国、県、市町村その他関係団体(以下「関係団体等」という。)と協力して、環境教育及び環境学習の推進並びに広報活動の充実に関し必要な措置を講じなければならない。
(民間団体等の自発的な活動の促進)
第20条 市は、市民、事業者又はこれらの者の構成する民間の団体(以下「民間団体等」という。)が地域において自発的に行う環境美化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動を促進するため、必要な措置を講じなければならない。
(情報の提供及び市民参加の推進)
第21条 市は、環境の状況並びに環境の保全及び創造に関する情報を適切に提供するとともに、環境の保全及び創造に関する施策の策定等への市民の参加を推進するため、必要な措置を講じなければならない。
(事業者における総合的な環境管理の推進)
第22条 市は、事業者が、その事業活動に伴い生ずる環境への負荷の低減を図るために、総合的な環境管理の方針、体制等の整備を行うことについて、その推進に関して必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(調査、監視等)
第23条 市は、環境の状況を把握し、並びに環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及び実施するため、調査及び研究、監視体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。
第3節 地球環境の保全に関する施策
(地球環境の保全)
第24条 市は、地球の温暖化の防止、オゾン層の保護その他の地球環境の保全に資する施策を講じなければならない。
2 市は、事業者及び市民の地球環境の保全への行動を促すため、普及、啓発等の措置を講じなければならない。
(国際環境協力)
第25条 市は、国際機関及び関係団体等と連携し、環境の保全に関する情報の提供、技術の供与等により、環境の保全に関する国際協力の推進に努めなければならない。
第4節 施策の推進体制等
(推進体制の整備)
第26条 市は、民間団体等と連携を図り、環境の保全及び創造に関する施策を推進する体制を整備しなければならない。
(関係団体等との協力)
第27条 市は、環境の保全及び創造のために広域的な連携を行う必要のある施策について、関係団体等と協力して、その施策の推進に努めなければならない。
第3章 飯田市環境審議会
(設置等)
第28条 法第44条の規定により、飯田市環境審議会(以下「審議会」という。)を設置する。
2 審議会の所掌事務は、次に掲げるとおりとする。
(2) 市長の諮問に応じ、前号に掲げるもののほか環境の保全及び創造に関する基本的事項を調査審議すること。
(3) 第8条に規定する年次報告書に関し意見を述べること。
3 審議会は、環境の保全及び創造に関する基本的事項に関し、市長に意見を述べることができる。
(組織等)
第29条 審議会は、委員30人以内で組織する。
2 委員は、学識経験者のうちから市長が任命する。
3 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長及び副会長)
第30条 審議会に会長及び副会長を置き、委員が互選する。
2 会長は、会務を総理する。
3 副会長は会長を補佐し、会長に事故あるときは、その職務を代理する。
(専門委員)
第31条 審議会に、専門の事項を調査するため必要があるときは、専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、知識経験者のうちから市長が委嘱する。
3 専門委員は、当該専門の事項について調査が終了したときは、解任されるものとする。
(補則)
第32条 この章に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、市長が定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成9年4月1日から施行する。
(飯田市環境審議会条例の廃止)
2 飯田市環境審議会条例(平成5年飯田市条例第66号)は、廃止する。