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市長エッセー(散歩道)その51~60

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年9月11日更新

飯田市長・牧野光朗が日々感じたことを記していきます

51 私の「定住自立圏構想」の原点 (広報いいだ平成21年4月1日号より)

 この4月から市立病院に新たに産科の先生をお迎えし、里帰り出産の制限をさらに緩和できる運びとなりました。関係者の皆さんのご尽力に感謝いたします。
 振り返ってみれば、私たちの地域では、飯伊地区包括医療協議会の呼びかけにより「産科問題懇談会」が発足し、妊婦健診を行う診療所と、分娩を担当する市立病院とが役割分担する体制をいち早く整備してきました。
 しかし、こうした努力にもかかわらず、市立病院の産科医不足は深刻化し、平成19年末には里帰り出産の制限を発表せざるを得ない事態に陥りました。市立病院の患者さんの4割は市外の方々です。当時の市議会での議論において「制限はまず市外の住民に適用すべき」との主張に対し、私は「産科医は南信州地域全体を医療圏とすることを前提に大学の医局から派遣してもらっている」と応じましたが、確固としたルールがあるわけではなくかなりのジレンマを感じていました。
 こうした限界的な課題に対しては、広域連合を中心とする現在の枠組みだけでは解決が困難と考えていた矢先に、総務省の「定住自立圏構想研究会」に参画させていただく機会を得たのです。産科医不足への対応は、私の「定住自立圏構想」の原点と言えます。

52 代を継いで地域医療を守り続ける (広報いいだ平成21年5月1日号より)

 3月の市議会定例会で同意を頂き、総務省から派遣された丸山達也さんが特命副市長に就任しました。自治体経験豊富な丸山副市長は埼玉県庁出向時に県立病院課長も務めており、地域医療の分野においても飯田市を中心市とする定住自立圏構築に向けて手腕を発揮してくれるものと期待しております。
 地域医療と言えば、この3月に、昭和49年から16年間、旧上郷町収入役を務められた安田達雄さんに高齢者叙勲「瑞宝双光章」が授与されました。特に高松病院の設立、経営に粉骨砕身され、健全経営維持に尽力されたことが認められたものです。当院はその後合併を経て閉院となりましたが、当地の地域医療の中核機能は市立病院に集約され、この5年間で150人以上の医療スタッフ増強に努めた結果、今年度は常勤医92名、看護師383名、総勢725名の体制となり、里帰り出産の制限緩和や心臓手術の再開も可能となりました。
 黒字化を目指した病院改革などまだ課題も多くありますが、「桜守」と呼ばれる人々が、代を継いで三百年以上の永きにわたり南信州の数多くの一本桜を守り続けてきたように、私たちは、安田さんはじめ先人の皆さんが守ってきた地域医療を今後もずっと守り続けていかなければなりません。

53 学びを通した交流の始まりを象徴する「ボレロ」 (広報いいだ平成21年6月1日号より)

 5月2日から4日間、「オーケストラと友に~アフィニスのふるさと飯田音楽祭~」が開催されました。
 20年間市民に親しまれ続けて昨年フィナーレとなった「アフィニス夏の音楽祭」は、全国の交響楽団の団員が飯田に集ってドイツから招聘した音楽家に学ぶプロ向けのクリニックが柱でしたが、今年からは名古屋フィルハーモニー交響楽団を迎えて、団員から中高生を主体とした地元のアマチュアが学ぶ音楽祭に進化したカタチになりました。
 4日の「名曲コンサート」では、飯田では初演と言われるラヴェルの「ボレロ」が演奏されました。この曲には殊のほか思い入れがあり、学生の頃、クロード・ルルーシュ監督の映画「愛と哀しみのボレロ」を何度も観て欧州への想いを募らせたものです。
 今もこの曲を聴くと、当時の世界的なバレエ・ダンサー、ジョルジュ・ドンがパリのエッフェル塔前の広場で踊る光景が目に浮かびます。映画では国境を越え、代を継いで交錯する人生のドラマが最後の「ボレロ」に集約されて描かれていましたが、飯田の「ボレロ」は、音楽祭を継いで展開される音楽家と市民との学びを通した交流の始まりを象徴しているように思えました。

54 対話に基づく地域のビジョンづくり (広報いいだ平成21年7月1日号より)

 5月22日の千代地区を皮切りに、市内20地区を回る市政懇談会「市長と語る会」が始まりました。
 地域自治組織がスタートして2年(遠山郷では3年半)が経過し、各地区の取り組み状況が注目されるところですが、千代地区ではこの3月に策定された「飯田市中山間地域振興計画」をベースに、自分たちの地域の課題を克服するためには何から始める必要があるのか、提言がいくつもなされたことがとても印象的でした。
私にとって、こうした地区の皆さんとの対話は、南ドイツの中小都市オッフェンブルク市の「ローカルアジェンダ」を想起させるものでした。これは、持続可能な地域社会を目指して市民と行政が対話をしながら、時間をかけて地域のビジョンづくりを進める試みです。
 ドイツ駐在時の8年ほど前に市民全体会議に参加させて頂きましたが、市が取り組むべき事業の発表を市民自らが行い、その優先順位を検討するというもので、特にLRT(路面電車)によるライン川対岸の仏ストラスブールとの国際的地域連携を訴える若い人たちのプレゼンに、会場から盛んに拍手が送られていたことを思い出します。対話に基づく地域のビジョンづくりが若者の参画を促した好事例と言えるでしょう。

55 南信州定住自立圏形成を目指した複合的対応 (広報いいだ平成21年8月1日号より)

 去る7月14日に、飯田市は下伊那郡の13町村と定住自立圏形成に向けた協定を全国に先駆けて締結しました。これまでご理解とご協力を頂いた全ての関係者の皆さんに改めて感謝申し上げます。
 この協定は、全国的に人口減少、少子高齢化が進む中、これに歯止めをかけるため、南信州広域連合の取り組みを補完しながら、中心市と周辺町村との役割分担を明確にして全体で定住機能を高め、多様で豊かなライフスタイルを享受できる圏域を共感と謙虚さを持って進めていこうとするものです。
 定住自立圏の形成は、中心市と周辺町村との協定のみで成し得るものではなく、複合的な対応が求められます。大都市圏と地方圏との間で人材のサイクルを構築し、一旦は地域を離れた若者が帰ってきて安心して子育てできる環境を整備する必要がありますし、また、中心市の中でも空洞化する街中や過疎化する中山間地が存在しますから、こうした地区への施策も併せて考えなければなりません。
 7月11日に、島根県中山間地域振興センターの藤山科長を講師にお迎えして、飯田市中山間地域振興計画のキックオフイベントが開催されましたが、これも定住自立圏形成に向けたものと言えます。

56 豊かさを生む「地域の価値観」(広報いいだ平成21年9月1日号より)

 8月17日に澁澤倉庫株式会社の犬塚靜衛会長が市役所を訪ねてくださいました。子どもの頃の夏休みを、いつも松尾の八幡町の実家で過ごされていた会長によると、「飯田は来る度にホッとしたところ」とのことです。
 この実家の家屋は、市の歴史研究所の調査対象になった建物で、私も「やらまい会」の皆さんと一緒に中の掃除をしたことがあります。確かに風情がありますが、会長が子ども心に感じたものは、当地の「豊かさ」ではなかったかと思います。
 ドイツ駐在時に、富山のテレビ局の「豊かさをもとめて」という番組制作のサポートをしました。富山経済同友会が主催するシンポジウムで「真の豊かさとは何か」を議論するために協力してほしい、と要請されたことがきっかけで、山や街の生活を日独で比較しようと考え、オーバーアマガウの受難劇(本欄「その45」で紹介)やウルムの中心市街地の再開発などを取材しました。どの地域の人々もそれぞれ固有の価値観をしっかり持っていて、それが地域の「豊かさ」を生み出している印象を受けたものです。
 尚、今回、犬塚会長から、お祖父さまが「飯田市歌」を作詞された犬塚利国氏だったことを知らされ、大変驚きました。

57 不易流行を体感するこの頃 (広報いいだ平成21年10月1日号より)

 先の総選挙では歴史的な民主党の圧勝となり、政権交代になりました。新政権においては、わが国の内外の環境変化に対応しつつ国民との約束をしっかり守り、国民の「期待と不安」を「信頼と安心」に変える政治が行われることを切望するところです。
 地元経済界では昨年秋以来の世界的不況の中で、「この不況が明けたら日本経済の景色は全く変わる。即ちパラダイムシフトが起こる。」と言われておりますが、このことを先取りするかのように、政治の世界で正にパラダイムシフトが起こったように思います。
 一方、こうした時期だからこそ、いつまでも変わらずにあってほしいとより強く思うものもあります。たまたま総選挙後の記者会見の席上で、上村遠山霜月祭保存会の皆さんが企画した「遠山郷霜月祭」のDVD完成披露がありました。古より上村地区の上町、中郷、程野、下栗のそれぞれで万物の「生まれ清まり」を祈って行われている霜月祭を存分に体感できる貴重な映像記録です。
 私たちの地域を持続可能にしていくためには、パラダイムシフトのような大きな変化にも的確に対応していくことが求められますが、霜月祭のような地域のアイデンティティを守り続けていくことも大切と再認識したこの頃です。

58 飯田の地域政策の広がりを示すLED防犯灯開発 (広報いいだ平成21年11月1日号より)

 最近お呼びがかかる環境モデル都市や定住自立圏関係の講演会では、ビジネスネットワーク支援センター「ネスク・イイダ」が取り組むLED防犯灯開発プロジェクトに言及しています。
 このプロジェクトは、環境省から環境モデル都市に対してなされた「ふさわしい事業を提案すれば全額補助する」との通知から始まりました。飯田市の提案としてはレンタル自転車と防犯灯のLED化が採択されましたが、市販のLED防犯灯は単価が5万円以上もしたため、このままでは市内の防犯灯をあまりLED化できないことは明らかでした。そこで「ネスク・イイダ」に打診したところ、18社の企業が2グループに分かれ、わずか3ヶ月程で半値以下の2機種の製品開発に成功したのです。
 これにより市内に6千基ある防犯灯の半分をLED化する目処が立ちましたが、このプロジェクトは飯田の地域政策の広がりを示す観点から大変意義深いものと捉えています。即ち、 1.行政だけではなく地元産業界が関わることによる「主体の広がり」 2.このLED防犯灯を環境政策に取り組む他の自治体に販売することによる「地域の広がり」 3.環境政策だけでなく産業振興策にも繋がる「政策の広がり」を有していると言えるからです。 

59 洋服の仕立てに例えて地域の自立を考える (広報いいだ平成21年12月1日号より)

 豊橋で開催された第17回「三遠南信サミット」は大変な盛り上がりでした。
 今年は懇親会終了後、首長同士で圏域の今後について意見交換する場が設けられましたが、新政権になって国と地方の関係はどう変わるのかも話題になりました。
 私はこの変化を洋服の仕立てに例えて考えています。即ち、前政権のときは、国から地方に既製服が送られて来ていた。景気が冷えて寒くなると何枚も送られるが、サイズが合わないこともままあった。地方はこれを我慢して着るか、多少仕立て直して着ることにしていた。(因みに飯田はこの「仕立て直し」をよくやっていた。)
 しかし新政権は明確なビジョンを示さないまま、既製服よりも生地(=財源)をなるべく送ろうとしているように見える。寸法を取ったり、生地を裁断したりする経験(=地域政策立案)にまだまだ乏しい地方には不安があるのではないか、というものです。
 そうは言っても、正念場を迎えている私たちの地域は、国のビジョンをただ待つのではなく、自立するためのモデルを自ら示していく必要がある、と痛感しています。こうしたことからも、今後の三遠南信地域連携ビジョンの具体的実践は重要な意味を持つと考えています。

 60 おでかけランチタイムの楽しみ (広報いいだ平成22年1月1日号より)

 時々、お昼の時間に市の職員の皆さんと一緒にお弁当を食べながらよもやま話をすることにしています。
 これまで保健福祉部や産業経済部の各部署、文化会館や歴史研究所、美術博物館などの皆さんとランチタイムを共にしてきました。
 お昼休みなので、話の内容は休日の過ごし方や趣味の話、あるいはペットのことなど、他愛ないものが多いのですが、私にとっては良いリフレッシュになっています。また職員の皆さんにとっても、一緒に仕事をしていても分からない職場仲間の違った側面を知る機会になっているようです。
 よくインターネットの発達により情報共有が容易になったと言われます。確かに私も、出張の際、クルマや新幹線の中でメールのやり取りをすることで、仕事がはかどる経験は何度もしています。
 しかし、顔を合わせて話をすることで思わぬ「気づき」があることも事実です。実際、ICTの人材が集積するシリコンバレーにおいて、多くの新しいプロジェクトがいわゆる「呑みニケーション」から始まっていることはよく知られています。
 そうした意味では、私にとって、おでかけランチタイムは多様な人材がいることを感じられる楽しみなひとときとも言えます。