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市長エッセー(散歩道)その91~100

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年9月13日更新

飯田市長・牧野光朗が日々感じたことを記していきます

91 地域活動の独自進化によって生じた「同音異義な状況」(広報いいだ平成24年8月1日号より)

 7月14日から15日にかけて日本公民館学会7月集会が竜丘公民館で開催されました。
 東京大学牧野篤教授の研究チームによる飯田市の分館活動に関する研究発表を拝聴しましたが、その質疑応答からは「公民館」に対する認識の違いが大きいことを実感しました。
 私たちの地域では、ハコそのものではなく、公民館活動の中身を指すことがお約束になっていますが、全国的には必ずしもそうではないようで、なかなか議論が噛み合わない印象でした。
 公民館は、戦後、社会教育法制定によって法的位置づけがなされ、全国に広がりましたが、その活動自体は各地域の実情を反映したものでした。
 飯田の公民館活動も独自の進化をして、一つのモデルとして専門家から注目されるようになりましたが、それに伴って他地域の公民館と「同音異義な状況」が生じていることも明らかになってきました。
 似たような事例として「飯伊地場産業振興センター」がありましたが、こちらは中身に名を合わせるべく「南信州・飯田産業センター」になりました。公民館はそうはいかないでしょうが、今回の集会のように飯田型の公民館を調査研究する中で全国のモデルにしていくことができれば、と思います。 

92 地育力を体現した竜東中学校区の「語り合う会」 (広報いいだ平成24年9月1日号より)

 去る7月29日に、今年度、小中連携・一貫教育のモデル校になっている竜東中学校で「語り合う会」が開催されました。 これは、中学校区内の児童生徒と大人が目線をそろえ、子どもたちは自分の将来の夢を、大人たちはこれまでの自らの歩みをそれぞれ思いを込めて語り合うものです。
 前半のパネルディスカッションでは、中学生や大人が大勢いる前でもノー原稿で堂々と将来の夢を語る男子小学生や、明朗快活に司会を務める女子中学生の姿に「自立していく個」を感じ、目を見張りました。 その後23の班に分かれて行われた分科会を回ってみて改めて気がついたことですが、私たちは近所の子どもたちを地区の行事などで見知ってはいても、彼らの将来の夢をじっくり聞いて話し合うような機会には恵まれていませんでした。
 そんな子供たちの多くが、同じ竜東に住む大人の皆さんの振り返りを聞くうちに、これまで当たり前のこととして見過ごしていた中山間地域の自然や文化の素晴らしさを意識するようになり、例え将来一旦は竜東を離れても、必ずここに戻って来たいと考えるようになったようです。 まさに「地育力による心豊かな人づくり」を体現した「語り合う会」でした。 

93 地域の技能を伝承する若い人材 (広報いいだ平成24年10月1日号より)

 9月11日、県内で10月に開催される技能五輪全国大会とアビリンピックの壮行会が行われました。技能五輪は製造業やサービス業に従事する若手技能者が競い合うものであり、アビリンピックは障がい者の職業能力向上を目指しています。
 飯田下伊那から出場する19人の選手の皆さんの晴れやかな顔を拝見しているうちに、10年程前に訪れたドイツのバイオリン職人養成学校を思い出しました。バイエルン州の南端、アルペン街道に位置するミッテンバルトは、人口約8千人の緑豊かなリゾート地として有名ですが、3百年以上の歴史を有するバイオリン作りの地として、イタリアのクレモナ(こちらは宮崎駿のアニメ映画『耳をすませば』でご存知の方が多いかも)と双璧をなしています。 ミッテンバルトのバイオリン職人養成学校を案内してくれた校長先生が「バイオリンの製作技術は150年以上前に完成しており、これを忠実に伝承していくことが当校の役割である。」と話してくれたことを今でも印象深く覚えています。
 今回の技能五輪・アビリンピックを契機に、当地域の様々な分野で技能伝承を担う若い人材が多く輩出されることを願ってやみません。 

94 悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する (広報いいだ平成24年11月1日号より)

 この度は36年振りの無投票により3期目の市長の任に就かせて頂くことになりました。地域の将来を左右する最重要期の舵取りを託された責は大変重いと認識し、市政に邁進する所存です。これまでのご厚情に感謝申し上げますとともに、今後もどうぞ宜しくお願いします。 さて、10月16日に開催された「朝日地球環境フォーラム2012」の分科会で、「地域を興す〜風と水と太陽と」をテーマに、食環境ジャーナリストの金丸弘美さんとパネルディスカッションをして来ました。全国各地で「小さな経済」づくりに携わっている金丸さんは、今回のフォーラムに臨むにあたり、太陽光・小水力発電やLED防犯灯、ラウンドアバウトなど、私の発表事例を全て事前に現地視察し、自らの発言の中にその評価を織り交ぜてくれました。その真摯さには頭の下がる思いでした。
 印象的だったのは、当分科会の締め括りとして、コーディネーターの安井孝之朝日新聞編集委員が引き合いに出したフランスの哲学者アランの名言、「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」でした。意志をもって事にあたれば、道は必ず開けると信じ、3期目への思いを新たにしたフォーラムでした。 

95 外国人との共生社会に必要な「ルールの明確化」 (広報いいだ平成24年12月1日号より)

 11月12日に開催された「外国人集住都市会議東京2012」には全国各地から430人の参加者が集まりました。飯田の座長都市としての役割はこの会議で一段落し、滋賀県長浜市に事務局を引き継いでいくことになります。 会議の第3部では、先の内閣改造まで外国人との共生に関する担当大臣を務められた中川正春議員を中心に、今後の外国人受け入れに係る国の基本的なあり方について活発な討論が展開されました。その中で私は、わが国における共生社会の構築には「ルールの明確化」が必要、と申し上げました。
 私が「外国人」としてドイツに滞在した当初、様々な場面で窮屈感を持ったものです。例えばアパートの契約書には夜はなるべく音を出さないよう、特にお昼寝時間は静かにするよう等、事細かな取り決めがなされていました。カラーで色分けされた歩道に立っていたら、「そこは自転車専用道!」と注意され驚いたこともありました。 しかしそのうちに、こうした明確化されたルールを守ることによって、そのルールに自分が守られていることに気づきました。これから外国人との共生社会を築いていくためには、ルールを曖昧にしない取組みが不可欠です。

96 創立60周年を迎えた市立病院 (広報いいだ平成25年1月1日号より)

 12月9日に飯田市立病院創立60周年を記念して市民医療フォーラムが開催されました。あらためて市立病院の歴史を振り返ってみると、大きな分岐点が2度ほどあったと思います。
 一つは現在ある場所への移転新築の際です。当時、160億円を越える大型投資を行うことについて激論が交わされたようですが、諸先輩方がやらざるを得ないと決断されたことが今日の医療充実に結びついたと言えます。 もう一つは平成18年から顕在化した地域内での分娩危機でした。地域を挙げた議論がなされ、危機を乗り越えると共に全国に先駆けた定住自立圏の取組みの契機となったのは記憶に新しいところです。 
 現在、病院経営も黒字化し、救急や分娩等に係る増築工事を行っていますが、今日の市立病院があり、当地域の医療を守り続けられたのは、飯田医師会をはじめとした三師会との連携や飯伊地区包括医療協議会における先進的な取組み等はもちろんですが、地域住民の皆さんのご理解があったからこそだと思います。 当地域は、少ない医療資源を役割分担と連携強化によって補う努力を続けてきたことで、全国から注目される健康長寿の医療圏になりつつあります。

97 デザイン思考のすゝめ (広報いいだ平成25年2月1日号より)

 今年の「年頭所感」では、21世紀のものづくりや地域づくりはアイデンティティ(個性)重視の方向に大きく変貌してきており、これに対応するためには人々の感性に訴える「デザイン思考」ができる人材が求められることを述べました。
 デザイン思考というと、何か特別な大それたもので、簡単に実践できるものではないように思われるかも知れませんが、思考する対象によってはそんなに難しいものではないと思っています。簡単なデザイン思考の例として、私の愛用する腕時計を採り上げてみたいと思います。 私の腕時計は高級なものではありませんが飯田でつくられたものです。
 ご当地製なのでついでに誰がつくったのか調べてもらったところ、「現代の名工」として国から表彰されたスーパーマイスター、橋場悦子さんだったことが分かり、大変驚きました。そこで時計の裏面に「made in 南信州・飯田by 橋場悦子」と刻印してもらいました。こうしたことによって私の「持っていて嬉しい度」は跳ね上がった訳です。 以来、この腕時計は私が講演などで飯田のものづくりを語るうえで重要なアイテムになっています。

98 朋あり遠方より来る (広報いいだ平成25年3月1日号より)

  1月末から2月初めにかけて、飯田を起点にした全国に広がるネットワークの集会が連続してありました。一つは、知のネットワーク「学輪IIDA」の全体総会です。今年は19大学から33人の教授や研究者が集まり、飯田女子短期大学を会場に開催した公開セッションでは、約160人の聴衆の前でこれまでの熱心な取組の紹介がありました。
 もう一つは、「地域に飛び出す公務員」のネットワーク参加者が飯田の公民館を学ぶために集まったもので、発案から開催まで短期間であったにも関わらず、全国の自治体関係者約170人が竜丘公民館に集い、活発な議論が展開されました。 2つの集会に共通することは、飯田を学びの場と捉えていることと、ネットワークの力が遺憾なく発揮されていることです。公民館の研究集会においては、2千人以上が参加するネット上のメーリングリストで飯田の公民館活動を発信したところ、高い関心を示す発言が集中し、今回の研究集会の契機となったとのことです。
 改めて飯田の学びがもたらす感動の大きさを実感すると共に、こうした皆さんをお迎えする私たちは、全国のモデル地域としての自覚と責任を持つ必要がある、と感じたところです

99 飯田の先進事例を丸ごと情報発信 (広報いいだ平成25年4月1日号より)

 日本学術会議会長の大西隆先生とは、私のフランクフルト駐在時に日独のまちづくりを比較した座談会でお話をしてもらったり、総務省の「定住自立圏構想の推進に関する懇談会」でご一緒したりして、何かとご縁を感じていましたが、この程、その大西先生が発行人を務める専門雑誌『地域開発』の5月号(5月1日発行)で、飯田の地域づくりを特集してもらえることになりました。
 私のインタビューを含めて飯田の様々な先進的地域づくりに関わる記事10本、約40ページに渡る特集ですが、その趣旨は、これまで長く「地方の時代」と言われながら、多くの地方都市で既存産業の衰退による雇用減少、若者層を中心とした人口流出、あるいは税収減や職員数削減を背景とした自治体の機能低下など様々な課題が顕在化する中で、住民参加によるまちづくりや環境への取り組み、広域連携による体験型観光の運営など、飯田の多種多様な先駆的事例を検証することで今後の地域経営を考察しようとするものです。
 飯田の事例を丸ごと情報発信できることは大変ありがたいのですが、あらためて先進地域として課題解決に取り組むことが期待されている、と痛感したところです。

100 上村プロジェクトの「入口」と「出口」 (広報いいだ平成25年5月1日号)

 1年3カ月ほど前、上村保育園の入園者の目処が立たず「25年度から休園になるかも知れない」との説明を聞いた時には愕然としました。保育園の休園は小学校の休校を招き、ひいてはコミュニティの崩壊に繋がりかねない、との危機感を募らせ、全庁横断的な「上村プロジェクト」を立ち上げました。その後地域の皆さんの一方ならぬ御尽力もあって、今年度の園児数は5名を確保し休園を回避することができました。
 上村プロジェクトの年間予算は300万円程ですが、これは中山間地域の自立に向けた「入口政策」と捉えられます。そして「出口政策」に位置付けられるのが、この3月議会で議決された全国初の「地域環境権」を明記した条例に基づく小水力発電所計画と言えるでしょう。本計画を上村地区主体で立ち上げることができれば、毎年最大で1千万円の利益を見込むことができますから、上村プロジェクトへの還元ばかりか地域医療や地域公共交通などの更なる充実を図ることも可能となります。
 これまでは自立化を促す出口政策を見い出すことがなかなか難しかった中山間地域ですが、今次の条例制定を契機に、新たな持続可能な地域モデルを創出できれば、と考えています。