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飯田歴研賞2019 受賞作品紹介

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年10月1日更新

飯田歴研賞2019  受賞作品を紹介します

 飯田歴研賞は、飯田・下伊那の地域史研究における優れた論文や著書等を表彰するものです。

 第17回飯田市地域史研究集会(9月7日・8日開催)で授賞式が行われました。

 今年度の受賞5作品をご紹介します。 

歴研賞授賞式

        

著作賞

 大日方 悦男 (おびなた えつお)様

 満洲分村移民を拒否した村長佐々木忠綱の生き方と信念』     (信濃毎日新聞社、2018年)

大日方氏著書

本書は、優れた人物評伝である。本書によって、満洲分村移民を拒否した村長として知られていた佐々木信綱の生涯が明ら

かにされた。多くの史資料にあたり、関係者の話を丁寧に聞き取り、調査を重ねて、一人の人物の厳しい時代の状況下での

信念と行動のあり様が、社会的背景や家族・友人関係まで含めて丹念に著述されている。著述は平明でわかりやすく、青少

年にも十分理解できるように配慮されている。大下条村で代々庄屋を務めた農家に生を享け、進学の夢かなわず就農者とし

て人生を歩み始め、向学心に燃えて伊那自由大学の受講生となった青年期。地域の人たちに信頼されて村長に選出され、

なにより村人の暮らしといのちを第一に考えて、満洲移民の国策から村を守り、さらに、地域に中等教育機関を実現しようとし

て尽力し、地域医療の向上にも尽くした成人期。そして戦後、満洲からの帰国者のために西富士原野の開拓事業(現在の朝

霧高原)に貢献した人生。本書には村人の暮らしといのちを守り続け、卓越したリーダーとなった佐々木忠綱の生き方と思想

が、生涯にわたって、じつに見事に描き出されている。一読して、佐々木信綱の生き方とそれを支えた人々の存在に心を打た

れ、また、この評伝に取り組んだ著者の佐々木忠綱に向けるまなざしにも、同時に心を打たれた。

 

中平区誌編纂委員会 様

『中平区誌』  (中平区誌刊行委員会、2019年)

中平区誌 

本書は、飯田市鼎中平区が自身の手で、88年に及ぶ区の歴史を振り返り、現状を含めて包括的に編纂・叙述した力作であ

る。十数年をかけた区の取り組みによって編纂されたもので、中平の位置と自然から説き起こし、古墳時代以来、近世を経て

1931年の中平区成立から現代に至る歴史の歩み、また現状について、多面的に豊富な資料や写真を用いてオリジナルに叙

述する。特に、中平という纏まりの歴史的な経緯、区域と共にある松川との関わり、道路や鉄道・上下水道などのインフラ整

備と維持、多様な産業と変遷、アジア・太平洋戦争期の地域の様子、地域を構成してきた学校や自治会を初めとする諸団体

や施設、また固有の文化などを、区の自治の歩みとともに丁寧に描き、高いレベルの区誌となっている。地域市民が、生活や

仕事の単位・枠組みとしての区の歴史を編纂するという営みにおいて、一つの到達点を示したものと評価でき、歴研賞に相応

しいものと判断させていただいた。

 

細谷 亨 (細谷とおる)様

 『日本帝国の膨張・崩壊と満蒙開拓団』 (有志舎、2019年)

 細谷氏著書

 本書の価値は、飯田・下伊那郡における「満州移民」(本書では「満蒙開拓団」)の開拓団送出前後・戦後「引揚」をふくんだ

一事例の分析(川路村)にとどまるものではない。地域の個性をていねいに論じながら、政策への対応・地域サブリーダーの

役割など既存の論点の再検討を行い、さらに山形・新潟、あるいは長野県内においては富士見村など多様な送出過程を整

理するなかで飯田・下伊那地域の個性を明らかにする論点を提示したことにある。 

「帝国」内の人の移動にとどまらす、論点としては提起されてはいたがなかなか実際の作品として叙述されることのなかった

異民族支配と満州移民の関係を取り上げたことも重要である(満州での生活史の重層性)。 

教育階梯をたどる社会的上昇(青少年義勇軍論)や、「近代的家族」への願望(「大陸の花嫁」論)などにまで議論を広げるこ

とが可能であれば、筆者のいう「日本帝国」の移民―「人の移動」の経験史はよりさまざまな場所での議論を誘発するであろ

う。多様な経験のなかに共通性と差違性を読み込み、議論のアリーナを作っていくことが「語り継ぐ」方法の一つであろうから

である。

 

奨励賞

 速渡 賀大(はやと ますひろ) 様 

飯田藩領における借屋人の生活形態―上飯田村・山村を中心に」    (『飯田市歴史研究所年報』第16号、2019年)

  16号

 

この論文は、上飯田村の「出来分」(箕瀬・愛宕坂・箕瀬羽場)に関する18世紀末の「借屋改帳」や、近世後期にかけての「送

り切手」などを丁寧に分析し、その多様な生業=職分や「家」の在り方、また移動の実態を検討しながら、飯田城下の周縁とし

ての町場における民衆の存在形態の特質を考察したものである。ここでは借屋人の性格を階層一般として捉えるのではな

く、かれらの生業や「家」の継承の具体相を丹念に辿り、いくつかの新たな論点を提起することに成功している。特に、借屋人

の「家」が、高齢者の戸主の下に養子として入ることで相続される事実を明らかにした点、またそうした「家」の具体的事例を

提供したことは重要な成果である。ここで示された論点の展開、あるいは飯田城下との関係でこの対象域をどう把握するか

など、課題を多く残すものの、歴研賞(奨励賞)として十分な内容を有す論文であると評価させていただいた。

 

 

関連リンク

 過去の飯田歴研賞受賞作品