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飯田文化会館情報誌 toi toi toi!第4号 学ぶ側から創る側へ。"音楽愛"を広げる新たな世代
飯田文化会館情報誌 toi toi toi! これからの文化を担っていく人を紹介するコーナー「Toward the next stage」。
今回は「学ぶ側から創る側へ。"音楽愛"を広げる新たな世代」と題して、オーケストラと友に音楽祭~アフィニスのふるさと飯田音楽祭~若手実行委員の皆さんにお話を聞きました。

市民が創る音楽祭
飯田のゴールデンウイークは毎年、クラシック音楽にあふれます。市民が名古屋フィルハーモニー交響楽団(名フィル)と一緒になって創り上げる「オーケストラと友に音楽祭」、通称「オケ友」のシーズンです。
飯田文化会館を主会場に、地元音楽団体や名フィルによるコンサートを連日開催。ホールでのコンサートのほか、りんご並木、商業施設、体育館などでもコンサートが開かれ、市民がクラシック音楽を身近に楽しめる貴重な機会となっています。企画運営は市民中心の実行委員会が担っており、まさに「手作り」の音楽祭です。
オケ友のもう一つの特色は、「学び」を大切にしていること。小学生を対象にした楽器体験「楽器とあそぼう」や、オーケストラで働く人たちにスポットを当てた「オーケストラで働く人たち」は、オケ友ならではの催しです。中でも、アマチュア演奏家が名フィルの指揮者や団員から指導を受ける「音楽クリニック」は、この音楽祭の柱の一つです。令和7年は小学生から大人まで過去最多の309人が受講。3月から課題曲のレッスンを重ね、オケ友の「クリニックコンサート」で成果を披露しました。また、音楽クリニックとは別に年間を通して、演奏の基礎を学ぶ「基礎コース」も年2回行われています。

音楽クリニックの様子
アフィニスの精神を次世代へ
オケ友の前史は平成元年、アフィニス文化財団が飯田市で「アフィニス夏の音楽祭」(アフィニス)を始めたときにさかのぼります。これは毎年8月に国内のプロオーケストラの若手楽団員が世界一流の演奏家から学ぶ、プロのためのセミナー形式の音楽祭でした。
平成20年、アフィニスは第20回を機に飯田市での開催を終了。これを受け、市民有志らが新たな音楽祭を模索し、アフィニスの精神でもあった「学び」から「市民自身が学べる音楽祭にしたい」と思い、市民が主体となり、クラシック音楽を「学ぶ」「楽しむ」音楽祭として「オーケストラと友に音楽祭」が翌年からスタートしたのです。
それから18年。クリニックで学んだこどもたちが音楽の道に進んだり、地元音楽団体で活躍したりする例も増えています。そこで今回は、音楽への愛を次世代に伝えようとしている若手実行委員の皆さんにインタビューをしました。
プロとの演奏はとにかく楽しい
クリニック部会所属 西浦 遼 さん

西浦 遼 さん【プロフィール】
平成11年、飯田市生まれ。
東京で理容師の修行を積み令和5年に帰郷、実家の理容院に勤務。
バイオリン奏者として飯田交響楽団に所属。地元ピアニストらとの共演も行っている。
私は3歳からバイオリンを始めて、小学生の時はアフィニスに地元演奏家として参加しました。高校の部活動では弦楽班に入ってオケ友の音楽クリニックにも参加しました。最初は一人での練習が好きじゃなくて、みんなと一緒に何かをやることが楽しかったですね。
転機は、高校2年の時に参加した長野県高校オーケストラフェスティバル。同学年とは思えない演奏に「こんなにいい音が出るのか」と感動して、それからは練習に熱が入るようになりました。高校を卒業する時、飯田交響楽団の団長から「絶対に飯田へ帰ってこいよ、楽団での席は温めておくから」と言われて、東京での7年間はずっとそれが心に残っていました。
飯田に帰ってから入団し、オケ友では名フィルと飯田交響楽団合同の「いいなぁオーケストラ」にも出演させてもらっています。プロとの演奏はとにかく楽しいですね。とても勉強になるし、客席も楽しんでくれているのが伝わってきて、会場が一体になるのが分かるんです。
私はオケ友実行委員会のクリニック部会に所属し、音楽クリニックの企画運営もしています。母校の後輩たちと顔を合わせるので、「飯田に帰ってきて一緒にやろう」と声をかけると、「絶対そうします」と答えてくれる後輩もいます。
最近は部活動がなくなるという話も聞きます。音楽人口が減りかねないこの時代、若いうちから音楽を身近に感じられるオケ友のような機会は、とても大切だと思います。

20周年に向け 若い仲間を増やしたい
クリニック部会・オケ友音楽ひろばプロジェクト所属 宮澤 元彌 さん

宮澤 元彌 さん【プロフィール】
平成12年、下條村生まれ、飯田市在住。
パーカッション奏者として飯田市民吹奏楽団、下條村民吹奏楽団に所属するほか、他楽団への賛助出演も多い。
飯田市立病院に臨床工学技士として勤務。
私は中学2年の時からパーカッションを始め、中学高校時代にオケ友の音楽クリニックを受講しました。名古屋の専門学校を卒業して地元に戻り、令和4年から音楽クリニックの「大人の吹奏楽コース」に参加し、さらに実行委員としてオケ友に関わっています。
オケ友は、3月から始まる音楽クリニックやゴールデンウイークの本番に加え、年2回の「基礎コース」などもあり、企画や準備するのは大変ですが、「楽しかった」と受講された方の声を聞くとうれしく思いますし、本番を全て無事に終えた時は大きな達成感があります。
パーカッションは、誰に師事するかによって演奏法や曲の解釈に違いがあります。オケ友では名フィル打楽器奏者の3人の講師が、それぞれ違う視点から教えてくれるので勉強になります。また、プロの指導を受けると新たな表現力が身に付くように感じています。例えば指揮者の川瀬賢太郎先生は曲のイメージを伝える時に「ぬれせんべいのような」とか「酔っぱらいが電車の中で吐き気を我慢しているような」なんて表現をされます。言葉の引き出しが多彩です。
令和7年の音楽クリニックは受講者数が過去最多となりました。そこで学んだ後輩が進学で飯田市外に出た後も「飯田に戻って音楽をやりたい」と思えるような環境つくりができればいいなと思います。実行委員会にも若い仲間を増やして、2年後の20周年に向けて企画に携わりたいです。

裏方の大変さ スタッフになって改めて実感
総務広報部会所属 飯島 ひかり さん

飯島 ひかり さん【プロフィール】
平成4年、飯田市生まれ。
飯田病院で看護師として勤務。
オケ友実行委員会には職場からの企業派遣として参加している。
八分音符をかたどった水引ピアスがお気に入り。
小学校1年の時からアフィニスの親子向けコンサート「あいうえ音楽館」を観に行っていて、楽器に憧れを持ちました。本当はフルートをやりたかったんですが、小学校の金管バンドでトランペットを始めたら「ドハマリ」してしまって。高校からはクラリネットを始めて、高校3年の時に初めて音楽クリニックに参加しました。成果を披露する「クリニックコンサート」に向けて、必死になって練習したことを覚えています。終わった時はすごく達成感がありました。
そうした体験があったので、社会人になってからはアンサンブル・ヴィルトゥオーゾ吹奏楽団(飯田市)に入りました。楽団はコロナ禍の影響で解散してしまいましたが、その分、今はオケ友のスタッフとして音楽に関わらせてもらっています。
私は飯田病院からの企業派遣という立場で、職場の先輩から実行委員を引き継ぎました。所属する総務広報部会では、パンフレットのデザインや広報の仕方をみんなで考え、当日は受付などをしています。運営側になって改めて、この音楽祭がいろいろな裏方の人たちの苦労の上に成り立っているということを実感しました。
実行委員はこれからも続けていきたいと思いますし、毎年オケ友の時期になると自分もクラリネットを吹きたくなります。来年こそは音楽クリニックに参加しよう…と思いながら、自分の楽器を眺めるだけの日々がここ何年か続いているので、いずれクリニックに参加するタイミングをつかみたいですね。

インタビュー
飯田の人たちは音楽の楽しみ方を知っている
名古屋フィルハーモニー交響楽団 音楽監督・指揮者 川瀬 賢太郎 さん

川瀬 賢太郎 さん【プロフィール】
昭和59年、東京生まれ。
平成19年、東京音楽大学音楽学部音楽学科作曲指揮専攻(指揮)を卒業。
これまでに指揮を広上淳一氏などに師事。
名古屋フィルハーモニー交響楽団では平成23年から指揮者、令和元年から正指揮者を務め、令和5年に第6代音楽監督に就任。卓越したプログラミングを躍動感あふれる演奏で聴衆に届け、海外でも活躍している。
東京音楽大学作曲指揮専攻(指揮)特任講師。
名フィルの正指揮者になって以降、新型コロナで中止になった2年間を除いてゴールデンウイークは毎年飯田に来ています。自然豊かで空気がきれい。それにとても静かなので、勉強や楽譜の読み込みがはかどります。メンバーも毎年飯田に来るのを楽しみにしています。
音楽クリニックは朝から晩まで続くのでヘトヘトになりますが、その後においしい食事とビールが待っていると思えば集中できます。飯田は焼き肉が有名ですが、お寿司もいいお店がありますね。
飯田には市民の皆さんが音楽を気軽に楽しむ伝統がある。音楽クリニックに親子で参加する方もいて、その文化が脈々と受け継がれているのを見ると、本当に素敵な街だと思います。

日本は世界的に見ても音楽祭の多い国ですが、オケ友のような市民の皆さんによる手作りの音楽祭は多くありません。これからも飯田の皆さんが、音楽そして名フィルとますます友達になってくれるような音楽祭にしていきたいですね。令和8年は名フィル60周年なので、飯田でも記念になることができるといいと思っています。ぜひお楽しみに!


