ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
ホーム > 分類でさがす > くらしの情報 > 教育 > 文化財 > 文化財保護いいだ > 天龍峡十勝

天龍峡十勝

ページID:0113005 印刷用ページを表示する 掲載日:2024年1月4日更新

 十勝とは、峡谷の特徴的な奇岩や淵などのことで、漢詩風の名前がつけられています。明治の書聖と呼ばれた書道家日下部鳴鶴は、奇岩など形容と旧称からイメージされる場景を漢詩に詠み、新たに名をつけ、鑑賞のガイドとしました。

十勝には、その付近の岩肌にその名が彫られています。岩彫は日下部の書の写しを元にしたもので、素晴らしい筆跡です。それ自体も鑑賞の対象ですが、十勝の本体は奇岩や淵などで、岩彫ではありません。

天龍峡十勝 龍角峯の岩彫。「峯」は高さ5尺(約1.5m)に近い大きさです。

垂竿磯 (すいかんき)  旧称:さぶり岩

垂竿磯

川路側の北側、舟下りのコースよりも上流にあり、遊歩道から少し外れています。水位の上昇により水没したものを引き上げています。

漢詩意訳:

《太公望(たいこうぼう ※1)の釣した渭水(いすい ※2)のほとりはどんなところだったのか。あの厳陵(げんりょう ※3)の釣した瀬はどんな瀬であったのか。世には無数の釣の場所はあろうが、仙者(※4)はどんな所を求めて釣をするのだろうか。》

※1 太公望:古代中国の周の建国の功臣で、名は呂尚(りょしょう)といいます。周の文王が渭水のほとりで出会い、これが先君太公の待ち望んだ賢人であるといったところから太公望といわれます。文王に召されて周に仕え、武王のときに殷を滅ぼし周を建国する際に武功を挙げたとされます。

※2 渭水:中国の大河、黄河の支流の一つです。

※3 厳陵:古代中国の漢の人物、厳光(げんこう)のことです。若いころに後漢の光武帝となる劉秀とともに学び、劉秀が皇帝となると隠居し、畑を耕し釣をして暮らしたといい、厳光が釣りをした場所は厳陵瀬といわれています。

※4 仙者:仙人のことです。

烏帽石 (うぼうせき)  旧称:烏帽子岩(えぼしいわ)

うぼうせき

川路側の北にあり、舟下りのコースから外れていますが、遊歩道で付近まで近づくことができます。烏帽子とは、平安時代から近代にかけて男子がかぶっていた帽子です。

漢詩意訳:

《賑々(にぎにぎ)しい春の峡谷、この神仙境に春風が和やかに香っている。山桜の花びらが烏帽石を彩(いろど)っている。さながら、仙人たちの粧(よそおい)のようである。》

姑射橋(こやきょう)

姑射橋 初代姑射峡(明治15年〈1882〉 ケンブリッジ大学図書館蔵)

川路地区と龍江地区を結ぶ橋です。明治10年(1877)に龍江村戸長の澤柳善十郎らの尽力によって橋が架けられ、善十郎の居住地名から「大田橋」と呼ばれていました。日下部鳴鶴によって新たに命名された姑射橋は、奇岩断崖と並ぶ景観の一要素として価値が付けられました。現在の姑射橋は4代目のもので、命名当時の橋は残っていません。

漢詩意訳:

《姑射橋の上にやってくると、俗地上から隔たっていて、心が自然と休まってくる。どうしてあちこち尋ねまわる必要があろうか。この人間の世にも、不老不死の仙境はあるものだ。》

歸鷹崖 (きようがい)  旧称:鷹待崖(崖は山かんむりがない字)

帰鷹崖

「歸」は「帰」の旧字体です。川路側の姑射橋のすぐ南側にあり、姑射橋の歩道から見ることができます。

漢詩意訳:

《突風が夕煙(ゆうけむり ※)を巻きおさめて過ぎる。西日が静かに木立を照らしている。立派な鷹がどこからか突然巣に戻ってきた。この山中には小鳥の姿などはほとんど見られない。》

※ 夕煙:夕方に立つ煙、夕食の準備で立ち上る煙をいいます。

浴鶴巌 (よくかくがん)

龍江側の姑射橋南側、遊歩道沿いにありましたが、もともとの岩彫は崩落してしまい、現在は近い位置の岸壁に改めて文字が彫られています。

漢詩意訳:

《澄んだ流れには塵(ちり)ひとつ見られない。明るい月が流水の水底深く照らしている。時々見かけることである。鶴が飛んできて大きな岩のほとりで純白の羽毛を洗っているのを。》

烱烱潭 (けいけいたん)  旧称:てらてら淵・てらが淵

けいけいたん 水位が上昇したため、命名時とは様子が異なる。写真右手の岸壁に岩彫が見え、左手に淵がある。

「烱」は「あきらか」とも読み、光り輝いて遠くからも見えることで、「潭」は淵のことです。姑射橋南側の淵をいい、文字の印刻は川路側にあります。

漢詩意訳:

《どこまでも碧(みどり)に澄んでいるが、深いので底を窺(うかが)うことはできない。美しい淵は夜空に明るく見えている。誰がここに月がないからといって、他の場所に親しむことだろうか。星影がきらきらと輝いて照らしているだけで充分である。》

樵廡洞 (しょうぶどう)  旧称:廂岩(ひさしいわ)

しょうぶどう

「樵」は「きこり」と読み、「廡」は庇(ひさし)のことです。天龍峡第三公園付近にある、オーバーハングした岩をいいます。つつじ橋などから見ることができます。

漢詩意訳:

《両岸の切り立った岩は高い庇のようである。ここには酷暑の夏にも涼風が吹いている。どんな生活よりも、ここで樵の人となろう。この山中でみる夢の何と清らかなことか。》

仙牀磐(せんじょうばん)  旧称:千畳敷岩

せんじょうばん

仙とは仙人を意味する字ですが、ここでは数の千をあらわしたもので、広く平な岩という意味でしょう。川路側の天龍峡第二公園付近の崖下にありますが、現在は近づけません。

漢詩意訳:

《この大岩で一体誰が遊び休むのだろうか。ここは千人もの人が座ることができよう。私も家をひっさげてここに移り、猿や鶴を友として暮らそうと思う。》

芙蓉峒 (ふようどう)  旧称:富士巻狩岩、富士の巻狩

芙蓉とは富士山のことで、その容姿から、富士に例えられたのでしょう。つつじ橋のやや上流にありますが、現在は大半が水没しています。

漢詩意訳:

《遠い諏訪湖や高い山々の白雪、その清水や白雪が天竜に流れ入っている。何千年もこの冷たく澄んだ流水によって、この大岩は磨かれて白い芙蓉のようにここに存在している。》

龍角峯 (りゅうかくほう)  旧称:花立岩

龍角峯

谷底から垂直にそそり立つ塔状の巨岩で、天龍峡を代表する奇岩です。つつじ橋の少し上流、龍江側にあります。遊歩道が岩の頂部を通っており、峡谷の北半分を眺望できる休息所にもなっています。

漢詩意訳:

《筆を揮(ふる)って切立った岸壁に文字をなすと、淵の底から雲烟(煙)が湧きおこってきた。すると、たちまち不可思議なことがあらわれて、龍角のような巨岩が中天高くそそり立った。》

 

名勝天龍峡について

名勝天龍峡全体のことについては、下記のページをご覧ください。

名勝天龍峡(天竜峡)

 


お知らせ
指定文化財等の紹介
文化財関連施設
埋蔵文化財(遺跡)の手続き等
指定文化財の管理・手続き等
リンク集1 (飯田市教育委員会等)
リンク集2 (文化財の紹介・研究等)