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令和5年飯田市議会第1回定例会 開会市長あいさつ
令和5年飯田市議会第1回定例会 開会 市長あいさつ
本日ここに、令和5年飯田市議会第1回定例会を招集し、令和5年度飯田市一般会計予算(案)をはじめとする重要案件についてご審議いただきますことに対し、深く感謝申し上げます。
昨年11月から拡大傾向にあった新型コロナウイルス第8波は、1月中旬頃から減少傾向となり、南信州圏域の感染警戒レベルは1月30日にレベル4、2月15日にはレベル3へと引き下げられました。
また国では、3月13日からマスクの着用を個人の判断に委ねることや、5月には新型コロナウイルス感染症の法律上の位置づけを第2類相当から第5類に移行するとの方針が示されています。
医療機関や福祉施設などにおいては引き続き感染に対し細心の注意を払うことが必要であることに留意しながら、コロナウイルスと「共存」する社会へと、上手に舵を切っていきたいと考えております。
なお、私自身、2月5日にコロナ陽性が判明し、一週間の自宅療養となりました。感染防止対策を呼び掛けている立場にある者として、どこかに隙があったのだと反省をしておりますが、市民の皆さんには、いつどこで誰が感染してもおかしくない状況であることを改めて申し上げたいと思います。
本日提案いたします「令和5年度一般会計予算案」は、いいだ未来デザイン2028に掲げる「目指すまちの姿」の実現に向けて、「若年層が『住みたい』と思うまちづくりを推進すること」をテーマに編成をいたしました。
2020年国勢調査の結果によれば、飯田市の人口は、人口ビジョンにおける展望人口を維持できていない状況にあることから、人口減少に歯止めをかけるべく、特に若年層の社会増に向けた取組を強化しなければならないと捉えています。
年明けに発売された宝島社「田舎暮らしの本」2023年2月号で最新の「住みたい田舎ベストランキング」が発表され、当市は人口5万人以上10万人未満のまちの総合部門で全国1位という評価を頂きました。これは、これまでの移住定住推進の地道な取組が評価されたものであり、移住コンシェルジュの皆さんをはじめとする市民の皆さんのご協力の賜物と感謝しておりますが、一方で、昨年の人口動態調査によれば、飯田市の社会減の数字は、県下の市町村の中で長野市に次いで大きい337人の減となっており、500人を超えていた一昨年の数字よりは改善してはいるものの、この現実は真摯に受け止めなければならないと考えております。
地元を離れた若者が帰ってこない。このことは、長年にわたってこの地域の課題となっているところでありますが、2020年の国勢調査の結果を分析してみますと、その構造的な課題が改めて浮き彫りになりました。
すなわち、20歳前後に大学進学等を機に多くの若者がこの地を離れ、20代後半から30代にかけてこの地域に帰ってくる動きはあるものの、その回帰定着率は全体として4割程度にとどまり、特に女性については一貫して低い傾向にある、という状況です。
この構造的課題が一朝一夕に改善できるとは思いませんが、リニア開通を見据えたまちづくりを進めるうえで、改めてこの課題に焦点を当て、大学のあるまちづくり、女性が住みたいと思うまちづくりを核として、人口減少に歯止めをかけるという思いで、予算編成を行ったところです。
令和5年度の一般会計予算の総額は、490億6,000万円、前年度比13億1,000万円、率にして2.7%の増となりました。
令和5年度から本格的に工事に着手するリニア駅周辺関連道路事業に係る用地買収や物件補償のほか、川路地区を中心に展開していく「脱炭素先行地域づくり事業」、妊娠と出産時における「出産子育て応援給付金」などの事業を予算化したことなどにより、一般会計の予算規模は過去最大となりました。
以下、令和5年度当初予算の重点となる9つのポイントについてご説明いたします。
1つ目は「若年層が「住みたい」と思うまちづくり」です。
このテーマは、どの事業、どの予算にも横断的にかかわるものではありますが、具体的・直接的な取組としては、「住みたい田舎日本一」という評価をさらに高め、また広くPRしていくため、オンラインセミナーやSNSの活用による情報発信力を強化し、また、当地域の魅力を地域外の皆さんに伝える役割を担う「結いターンアンバサダー」を育成するなど、関係人口・つながり人口を増やす取組を推進いたします。また、引き続き、移住を希望する方お一人お一人のニーズや気持ちに寄り添って仕事・住まい・暮らしの相談に応える相談体制の充実を図ってまいります。
若年女性の社会増へのチャレンジとしては、新たに「男女共同参画推進コーディネーター」を配置し、飯田市男女共同参画計画に掲げる取組を着実に推進するほか、女性の就業や起業を支援する研修会・交流会を充実いたします。また、女性が働きやすい環境づくりに向けて、国が認定する「えるぼし」「くるみん」などの企業認証について、取得を支援してまいります。
若者の回帰・定着を促進する取り組みとしては、市独自の取組として、「仕事」と「暮らし」を同時にお試し体験できる「結いターンシップ事業」を新たに始めるほか、地元企業のPRを充実させるため、学生や就活者向けに工夫を凝らした企業紹介動画の作成を支援してまいります。
2つ目は「大学のあるまちづくりの推進」です。
学輪IIDA等の大学研究者や大学生が、市民にとってより身近な存在となるよう、学びや地域づくりのパートナーとして専門性を発揮してもらえる機会や環境を作るとともに、地域おこし協力隊制度を活用して「大学連携コーディネーター」を配置し、大学と地域の橋渡しを推進するなど、この地域とかかわりを持つ大学生を関係人口につなげる取組を進めてまいります。また、昨年秋に、大学のあるまちづくりに向けて、飯田女子短期大学と飯田コアカレッジの学生の皆さんと意見交換を行いましたが、頂いたご提案ご要望のうち各種資格取得を支援する補助金の創設などを具体化いたしました。
3つ目は「持続可能で足腰の強い地域づくり」です。
昨年11月に脱炭素先行地域に選定されたことを受けて、国の交付金を活用し、川路地区を中核として一定のエリア内で独立した電力網による運用を行う地域マイクログリッドの構築に着手いたします。
また、国際情勢に左右されない足腰の強い地域としていくため、化学肥料や農薬の削減に取り組む「環境に配慮した農業」を推進するための地域相互認証制度を創設して地域循環型農業を推進するとともに、建築物への地元産材の活用を事業所等の民間建築物にも拡大するなど林業の振興も図ってまいります。
4つ目は「子育て環境・教育環境の充実」です。
常にこどもに最も良いことは何かを考えていく「こどもまんなか社会」の実現に向けて、ヤングケアラーの支援や子どもの貧困対策に当たるコーディネーターを配置して取組を強化するほか、ヤングケアラーのいる家庭に対する家事支援を行うヘルパーの派遣など、子育て世帯の孤立を防ぎ、出産や子育ての希望を叶える取組を充実してまいります。
また、教育においては、子どもたちの読解力向上に向け、授業の充実、学校図書館システムの整備や学校司書の全校配置を行うほか、学校に通えない子どもたちの居場所づくりを支援するため、新たにフリースクール等に対する支援制度を創設します。
5つ目は「健康づくりの推進と地域福祉の充実」です。
高齢者の皆さんが、楽しみながらフレイル予防活動に取り組めるよう、新たに「健康ポイント制度」を始めるほか、高齢者の皆さんの身近な相談体制を充実するための地域包括支援センターの増設、既存のサービスの対象となっていないゴミ出し支援等を行うNPO法人等に対する支援制度の創設など、地域福祉の充実を図ってまいります。
6つ目は「賑わいのあるまちづくり」です。
令和5年度は、りんご並木と動物園の70周年、飯田駅開業100周年、さらにはいいだ人形劇フェスタ25周年、オーケストラと友に音楽祭15周年という節目が重なる年となります。これらの周年事業を、デジタルコンテンツも活用しながら、中心市街地の賑わいづくりにつなげてまいります。また、りんご並木では、歩行者中心の賑わいあるまちづくりに向けて、車両規制による歩行者空間づくりの社会実験も実施いたします。
7つ目は「安全・安心なまちづくりの推進」です。
安全で安心に暮らせるまちを目指して、住民の皆さんに災害リスクを正しく認識していただくための研修会や、避難の実効性を高めるための個別避難計画の策定支援を行います。また、避難施設のトイレ整備、通学路安全対策アクションプログラムに基づく通学路の整備を、引き続き着実に進めてまいります。
8つ目は「リニア・三遠南信時代を支える基盤整備」です。
「駅周辺整備事業」は、関連する市道整備など令和5年度から本格的に工事が始まります。また、将来の二次交通の在り方や、駅前空間の利活用について、プロジェクト体制を整えながら検討を進めるとともに、新たなモビリティの導入に向けた自動運転の実証実験も行ってまいります。
また、三遠南信自動車道から長野県への「南の玄関口」として重要な役割を持つ道の駅遠山郷の再整備に向けて、温泉復旧の準備を進めてまいります。
9つ目は「デジタル化による市民サービスの向上と地域DXの推進」です。
今年度に引き続き行政事務のDXを推進しつつ、製造業におけるDX推進やIT化の支援をはじめ、市民へのデジタル技術講座や市が所有するデータのオープンデータ化とその利活用推進など、地域DXを推進してまいります。
以上、ご説明いたしました重点事業のほか、地域通貨の導入について引き続き研究を進めるとともに、森林による温室効果ガスの吸収量をクレジットとして認証する「J―クレジット」の活用検討、架線集材による木材の搬出可能性調査、次世代エアモビリティの研究推進など新たな取組につながる調査や研究にも積極的に取り組んでまいります。
また、誘致推進協議会と連携した信州大学新学部誘致の取組、飯田警察署の建て替え・運転免許センターの設置を見据えた市道の拡幅についての検討、新文化会館の基本構想の策定、土地利用計画の見直しに向けた検討など、地域にとっての重要な課題について、引き続きしっかりと取り組んでまいります。
それでは、今定例会に提案いたします案件についてご説明申し上げます。
本日提出いたします案件は、報告案件2件、人事案件8件、条例案件18件、一般案件2件、そして只今ご説明した「令和5年度飯田市一般会計予算案」をはじめとする予算案件19件の計49件でございます。
議案の詳細につきましては、後ほど関係部課長から説明いたしますので、宜しくご審議いただきますようお願い申し上げます。
ここで、天竜舟下り事業について、ご報告申し上げます。
昨年1月に信南交通株式会社が舟下り事業からの撤退を表明した以降、関係者により事業の継続が模索されてまいりましたが、株式会社南信州観光公社が「和船文化の灯火を絶やしたくない」との思いから、M&A(企業の合併買収)により舟下り事業部門を取得し、新たに南信州リゾート株式会社を設立されました。
同社は、天竜川を基軸として、和船文化の継承だけでなく、様々なアクティビティによる観光事業を展開する経営計画を掲げ、本年4月中旬の正式オープンに向けて、現在準備を進めておられます。
設立に当たっては、ホテルや旅館といった関係する民間事業者から多くの出資が表明され、金融機関でも支援が検討されており、それらを踏まえて、南信州広域連合会議の場において、各市町村でも支援を検討するとの方向が確認されたところです。
舟下り事業を始めとした天竜川を活用する観光事業の継続は、地域経済への波及に大きく寄与することが期待されることから、飯田市としてもこれを支援したいとして関係予算を計上したところであります。
次に、最終処分場「グリーンバレー千代」の使用期間延長について申し上げます。
廃棄物の最終処分場でありますグリーンバレー千代の埋立量は、ごみ減量に対する市民の皆さんのご理解とご協力によって、想定していた埋立量より減少傾向となっています。
このため、令和5年度までとしていた使用期間を延長することについて、地元の皆様と協議してまいりましたが、このたび、使用期間を12年間延長し、令和17年度まで使用させていただく旨の協議が整いました。
廃棄物の最終処分場は、市民生活に欠くことのできない、大切なライフラインです。
そのライフラインであるグリーンバレー千代の設置と運営にこれまでもご理解、ご協力をいただき、また、今後の使用延長に対してもご理解をいただきました地元千代まちづくり委員会、毛呂窪区をはじめとする千代地区の皆様に、この場をお借りして改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
最後に、水道料金の改定について申し上げます。
去る1月20日に飯田市上下水道事業運営審議会を開催し、水道料金の改定について諮問いたしました。
水道事業は、集中投資が行われた拡張期から40年以上が経過し、現在のところは全国で見られるような老朽化による大きな不具合は発生してはいないものの、施設の老朽化は日々進行しており、事故発生のリスクが積み重なっていると考えられます。
将来にわたって、安全で安心な水道水を安定して供給するためには、妙琴浄水場をはじめ、老朽化した施設の長寿命化・耐震化など、計画的な更新を進めて行く必要があります。
これまで3年或いは5年という見通しの中で料金改定の判断をしてまいりましたが、この度、令和5年度から令和28年度までの長期間にわたる建設改良計画を基に長期的な経営見通しを試算した結果、今ここで料金改定を行うことが必要であるとの判断に至りました。
物価高騰の中、料金の値上げをお願いすることは心苦しい限りございますが、10年以上料金改定が行われていない中で、これ以上の先送りは、次の世代につけを残すことにもなりかねないという判断、苦渋の決断の末、審議会に諮問申し上げたところです。
審議会の皆様には、負担増による市民生活への影響を勘案しながら、安定した水道事業を持続させるにはどのような料金を設定すればよいかという、大変難しいご議論をお願いしております。慎重にご審議いただいていることに感謝申し上げます。
審議会から答申を頂きましたら、それに基づいて料金改定の時期・内容をとりまとめ、条例改正案として議員の皆様にご審議をお願いすることとなりますので、よろしくお願いいたします。
3年に及んだコロナ禍の中で社会の価値観も大きく変わり、また、当地域は特に、リニアと三遠南信自動車道という2大交通インフラ整備を控えた環境変化を見据えた対応が求められております。
難しい舵取りではありますが、私自身、その先頭に立って全力で市政運営に当たってまいります。
引き続き、議員各位のご理解・ご協力をお願い申し上げまして、開会に当たってのご挨拶といたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
※掲出文は原稿ベースであり、実際の発言と異なる箇所があります。