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令和6年飯田市議会第4回定例会 開会市長あいさつ
令和6年飯田市議会第4回定例会 開会 市長あいさつ
本日ここに、令和6年飯田市議会第4回定例会を招集し、令和6年度飯田市一般会計補正予算案などの案件についてご審議いただきますことに対し、深く感謝申し上げます。
今議会は私にとって2期目最初の定例会となりますので、少しお時間を頂いて、2期目に臨む私の所信を申し述べたいと存じます。
改めて、私として1期目の4年間を振り返りますと「がれきを取り除いて整地をし、種まきを始め、その一部が芽を出し始めた4年間」という風にまとめることができるのではないかと思っております。
長く地域の課題であった運転免許センターの設置に道筋をつけ、将来にわたって持続可能な水道事業とするための料金改定を15年ぶりに行い、桐林クリーンセンターの後利用についても目途を付けることができた。これらは「がれきを取り除いて整地をした」いわば、未来に向けた下ごしらえの部分であります。
また、環境省の「脱炭素先行地域」に選定され、信州大学の水循環・グリーン水素の研究の「実証タウン」となることが決まり、桐林クリーンセンター跡地にはセイコーエプソン社がバイオマス発電所を建設することが、龍江インター産業団地には綿半ホールディングスがチップ工場を皮切りに事業展開することが決まりました。これらは「種をまいたことが芽を出し始めた」、未来に向けた道筋が見えてきたところであります。
最初の市長選挙に臨むときから、「環境」をテコに経済を再生する、持続可能な経済発展のために「環境」の視点から社会の在り方を見直していく、と申し上げてまいりましたが、「環境」を軸としたまちづくり、環境先進企業、環境関連産業の集積により産業・経済の活性化を進めていくというこのまちの将来に向けた大きな道筋の1つが見えてきました。これを確かなものにするための礎を築くのがこれからの4年間であると考えております。
特に、信州大学が行う水循環・グリーン水素の研究の「実証タウン」として、水循環技術やグリーン水素について、利活用と産業振興の両面から取り組んでいくための基盤を産学官共同で築いていくことが、このまちの将来にとって、さらには日本の将来にとって、大変重要です。
この飯田に、環境に関する研究、環境先進企業、環境関連産業の集積が始まりつつあります環境でメシが食えるかという人もいますが、これからは環境がメシの種に、産業のタネになる時代です。
その先頭を飯田が走っていく。環境を軸に、企業が集積し、研究機関が集まり、集積が集積を呼ぶ形で、まちが、産業が、活性化していく。「環境のまち・飯田」として世界中から認知される。そんな未来を目指して、環境を軸としたまちづくりに取り組んでいくこと。これを2期目に臨む所信の第一に申し上げたいと思います。
未来に向かって種まきをしてきたことが芽を出し始めた一方で、当地域にとって大きな課題である人口減少については、未だ歯止めがかかっておりません。
飯田市の総合計画である「いいだ未来デザイン2028」では、飯田市の人口について、2028年時点で約9万6千人を目指しておりましたが、今議会にご提案いたします基本構想の改正案では、「約9万2千人」に下方修正しております。
構想策定時には2027年にリニア中央新幹線が開業するという効果も見込んでいたとはいえ、この4年間にも毎年千人規模で人口が減り続け、長野県全体が社会増に転じている中で飯田市では社会減が続いているという現実は、真摯に受け止めなければなりません。
この状況に歯止めをかけるにはどうすればよいか。
人口減少問題を飯田市全体で考えようとすると、やや漠然として核心を突ききれないところがありますが、20地区の単位、あるいはもう少し小さな区や集落の単位で考えると、かなりリアルに戦略が見えてきます。
私としては、島根県中山間地域研究センターの藤山浩さんが提唱する「田園回帰1%戦略」の考え方に沿って、各地区各集落で、毎年こういう年代を何世帯取り戻す、そういう具体的なプランを立てることで、人口減少対策が地に足の着いた取り組みになると改めて考えているところです。
もともと、現在各地区で取り組んでいる「田舎へ還ろう戦略」も「田園回帰1%戦略」にならって始めたものですが、近年、少し取組の焦点がぼけてきていると感じておりました。
10月30日に藤山浩さんをお招きして開催した研修会で改めてお話をお聴きし、飯田市としての「田園回帰1%戦略」である「田舎へ還ろう戦略」に、今一度、各地区の皆さんと力を合わせて取り組むことが、人口減少に歯止めをかける道筋であると強く思ったところであります。
これまでも取り組んできた移住希望者お一人お一人に寄り添って希望を叶えていく丁寧な移住定住サポートに、各地区の「田舎へ還ろう戦略」を組み合わせ、地区ごとに人口安定を実現していくというアプローチにより、人口減少に歯止めをかけたいと考えております。
加えて、「若い人が帰ってこない」という構造的問題を改善するため、先に述べた「環境」を軸としたまちづくりにより環境先進企業・環境関連産業の誘致を進め、若者の働く選択肢を増やすとともに、人手不足を訴える地元企業と「働く場所がない」と嘆く学生やその保護者とのミスマッチを解消するため、地元企業の優位性を高校生・大学生やその保護者に伝える取り組みにさらに力を入れてまいります。
また、若者や女性のチャレンジを応援し、起業を含めた多様な働き方・暮らし方ができる地域であることをアピールしてまいります。
そして、そもそも論として大事なことは、この地域で育つ子どもたちが、「たとえ一旦は地域を離れても、いつかは帰ってきたい」と思えるような、地域に対する誇りと愛着を持って巣立っていくことです。
個人にとっても地域にとっても、大事なことは自己肯定感を持てることです。
子ども・若者がまちづくりに主体的に関わり、自己有用感・自己肯定感を感じられる文化・風土をつくるとともに、ここで育ってよかった、ここで育ててよかったと思えるよう、子育ち支援・子育て支援に引き続き力を入れて取り組んでまいります。
「対話と現場主義」を貫く。これも、2期目に臨む所信として改めて申し上げておきたいことであります。
今回の選挙結果について、私自身は、真摯に受け止めなければならない、と感じております。
有権者の半数近い皆さんが投票に行かなかったという事実は、市政への関心の低さを表しているに他なりません。
また、市政に関心を持っていただいている皆さんも、これまでの取組について説明すると「そんなことをやっていたとは知らなかった」という反応が多々あり、アピールが足りていないと痛感した次第です。
SNSなど広報の手段を多角化し、充実することはもちろん必要ですが、市民の皆さんの関心の在りかや置かれている状況と、市政とのズレが生じないようにしなければ、市政に対する無関心や無力感は広がるばかりだと思います。
改めて、市民の皆さんと向き合ってご意見に耳を傾ける、現場に赴いて状況を実際に見て一緒に考え行動する、「対話と現場主義」という私の政治信条、原点に立ち返ることが、市政に臨む姿勢として肝要であると考えます。
2期目初登庁の職員訓示においても、職員の皆さんに対し、私と同じ姿勢で臨んでいただきたいとお願いしました。
議員各位にも、引き続き、市民の皆さんの声をしっかりお聴きいただき、この議場に届けていただきますようお願いを申し上げたいと存じます。
これからの4年間は、今後の持続可能な財政運営にとっても、正念場と言える時期となります。
これからの4年間に、来年秋のグランドオープンを目指す道の駅遠山郷の再整備、2028年度の一部供用開始を目指すリニア駅周辺整備事業をはじめ大規模な財政投資を伴う事業が予定されているほか、将来には新文化会館整備なども控えております。
単に収支のバランスを取るだけでなく「投資すべきは投資する」というスタンスは変わりませんが、物価高・資材高に伴う建築費の高騰、人件費の上昇、税制改正に伴う収入減への懸念など市の財政を取り巻く環境は一層厳しくなっております。
これまで以上にメリハリのある財政運営、また、必要な事業も状況に応じて進度を調整するなど、柔軟な財政運営を行うことが求められます。
長期財政見通しを「ものさし」とし、決算審査と予算編成を軸としたPDCAサイクルを回すことを基本に、慎重かつ柔軟な財政運営に努めてまいります。
課題は山積、財政状況は今まで以上に厳しい。これからの4年間、1期目以上に難しい舵取りになることは、覚悟しております。
議員各位にも、議場における活発な議論と、市政の最終的な意思決定機関としての適切なご判断をいただきますことを重ねてお願い申し上げます。
以上、私の市政に臨む所信の一端を申し述べさせていただきました。
それでは、本日提案いたします案件についてご説明申し上げます。
本日提案いたします議案は、人事案件2件、条例案件8件、一般案件26件、予算案件5件の計41件です。
議案第107号「副市長の選任について」は、高田修副市長の再任についてお諮りするものです。提案理由につきましては、後ほど改めてご説明いたします。
議案第117号「基本構想の変更について」及び議案第118号「基本構想に基づいて定める基本計画の政策施策の体系を定めることについて」は、いいだ未来デザイン2028の人口ビジョンを変更し、来年度から始まる後期計画の政策施策体系を定めたいとするものです。
ご承知のとおり、いいだ未来デザイン2028は、2017年度から12年間の計画であり、今年度は、令和7年度から令和10年度までの4年間を計画期間とする後期計画の策定を進めてまいりました。
策定にあたっては、市民会議である「いいだ未来デザイン会議」での協議に加え、飯田短期大学、飯田コアカレッジといった学生の皆さんや、市内高等学校の生徒の皆さんとの意見交換を行ったほか、市議会からも原案に対しご意見・ご提言をいただきました。
こうした様々な皆さんとの協議を重ねる中で、持続可能な社会を創造するために大切にすべき4つの視点を定め、その視点から7つの基本目標からなる後期計画案をまとめましたので、よろしくご審議をいただきますようお願い申し上げます。
議案第120号から議案第132号までの13議案は、下伊那郡内の町村と締結しております定住自立圏形成協定の一部を変更し、消費生活センター運営事業の実施を追加したいとするものです。
長野県は、本年9月の長野県議会第3回定例会において、長野県消費生活センターについて、来年4月に県内4カ所にある県消費生活センターを松本市の中信センターに集約し、機能強化を図る方針を発表しました。
これに伴い、飯田市にある南信消費生活センターは閉鎖されることから、令和7年4月から飯田市消費生活センターを広域化し、13町村を含む南信州圏域全体の消費生活相談に対応したいとするものです。
住民の消費生活の安定と向上を目指し、県と市町村がそれぞれの役割分担に応じて機能強化を図るものであり、南信州圏域14市町村としては、定住自立圏構想の枠組みの中で飯田市消費生活センターの体制を強化・拡充し、住民にとって身近な相談窓口として広域的な対応を行えるように進めてまいりたいと考えております。
議案第143号「令和6年度一般会計補正予算第5号案」は、歳入歳出ともに10億2,300万円余を追加したいとする補正予算です。
主な内容は、公定価格の改定や入所児童数の増加等に伴う民間保育所等運営費負担金の増額のほか、能登半島豪雨への災害支援として実施している、ふるさと納税災害支援代理寄附に係る経費、また、令和7年4月から広域化する飯田市消費生活センターの設置に係る経費などを計上しています。
そのほか各議案の詳細につきましては、後ほど関係部課長からご説明いたします。
「環境」を軸としたまちづくりを進めようとする私にとって、地球環境のことなど何とも思っていない、「掘って、掘って、掘りまくれ」とうそぶく人物が次期アメリカ大統領に再び選ばれたことは、大きな心配ごとであります。
とある有識者の前でその心配を口にしたところ、「いや、アメリカの主だった企業は、『大統領が誰であれ行うべきことを行う』と表明している。大丈夫だと思う。」とおっしゃっていました。その言葉を信じたいと思います。
かつて『不都合な真実』を著し、環境問題に熱心に取り組んでいたアメリカのゴア元副大統領は、ノーベル平和賞の授賞式典における演説でこんなアフリカの諺を引用しました。
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
「2050年、日本一住みたいまちになる」、「環境のまち・飯田」と世界中が認めるまちになる、この大きな大きな目標は、そう簡単にはたどりつけない「遠く」にあります。
もちろん、一年でも早く、一日でも早く、そこにたどり着きたい。
私が先頭に立って走っていく覚悟ですが、私一人の力ではたどり着けません。議員各位をはじめ、市民の皆さんの力が必要です。
市民の皆さんとともに、「日本一住みたいまち」に向かって、一歩一歩、着実に。
議員各位には市政運営に忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げますとともに、市民の皆さまのご理解ご協力をお願いいたしまして今議会開会に当たってのご挨拶といたします。 ありがとうございました。
※掲出文は原稿ベースであり、実際の発言と異なる箇所があります。