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市長エッセー(市長室から)その41〜

ページID:0121788 更新日:2025年1月31日更新 印刷ページ表示

飯田市長・佐藤健が日々感じたことを記していきます​。

45 トイレの神様​(広報いいだ令和7年2月号から)

 この原稿を書いている令和7年のお正月は、実に穏やかに過ぎていこうとしています。

 年末には、大谷翔平選手から「リトル・ルーキーに会うのが楽しみ」というSNSの投稿があったと報じられました。今年「二刀流」が復活する予定の大谷選手が、新しい家族を得てさらに活躍することを期待したいと思います。

 その大谷選手を育てた花巻東高校野球部の佐々木洋監督のインタビュー記事を読んでいましたら、花巻東高校野球部では、ピッチャーが寮生活において「トイレ掃除」の役割を担うのが伝統だとお話しされていました。

 曰く「マウンドはフィールド上で最も高い場所です。そこは舞台と同じです。舞台に立てば、一番の注目を浴びます。」だからこそ、監督は投手たちに謙虚さを教えたかったのだと。そして、それ以上に象徴的な意味合いとして、「トイレを見れば、その場所の価値、そこにいる人たちがどんな気持ちで仕事に取り組んでいるかがよくわかります。マウンドがグラウンドで最も重要な場所であるのと同じように、トイレはその施設で最も重要な場所なのです。」

 その重要な場所を磨き続けた大谷選手。野球の神様だけでなくトイレの神様も味方にしているのですね。だから心も「べっぴんさん」なんやね。

 市内各所にある公衆トイレも、飯田市にとって重要な場所。掃除してくださっている皆様に心から感謝申し上げます。

番外編(広報いいだ令和7年1月号から)

 ​ ​ ​ ​​昨年は、元日に能登半島地震が発生し、8月には南海トラフ地震準備情報が初めて発出され、9月には再び能登半島を豪雨災害が襲ったほか各地で災害が発生するなど、災害・防災について考えさせられた1年でした。

被災されたすべての皆様に対し、改めてお悔やみとお見舞いを申し上げます。

令和7年は、穏やかな1年であってほしいと願います。

「安心して暮らせるまち」に

 能登半島地震とそこを再び襲った豪雨災害。自然の非情さ、人間の無力を感じずにはいられませんが、私たちにもできることはあるはずです。

1つは、物理的な安全性を高めること、そしてもう1つは、心理的な安全性(安心感)を高めること。

 物理的な安全性を高めること、例えば、道路や上下水道などの社会インフラを強靭(きょうじん)化・耐震化することや災害時のための資機材を充実することは、行政の役割として着実に進めていきますが、心理的な安全性(安心感)を高めるためには、いざというときに助け合える人と人との「つながり」が不可欠であり、行政だけではいかんともしがたいものです。

 人々の価値観や社会環境の変化の中で「個」が尊重されるようになった結果、「孤」が生じてしまっているとすれば、今の時代に合った形の「つながりの再生」が求められるのだと思います。

 コロナ禍において人と人が接触する機会を減らしたことで、「つながり」が希薄化したと言われましたが、昨年は、休止していたお祭りや地区の運動会・文化祭を復活させたところがたくさんあり、災害対策としても非常に意味のあることだと思いました。

 また、ご近所同士が顔の見える関係であることに加えて、もう1つ別のつながりが持てる場所(最近よく言われる「第三の居場所」)をそれぞれが持てると、いろいろな意味で「安心して暮らせる」のではないかと思います。

今年の「ワクワクすること」

 新春ですから、「ワクワクする」お話もしましょう。

 信州大学の水循環とグリーン水素(水と太陽光から水素を創る)の研究が飯田市を「実証タウン」として行われることになったというのは既にお知らせしているとおりですが、令和7年度にはいよいよグリーン水素を創るためのパネルが、エス・バードの5000平方メートル敷地に設置される予定となっています。この研究を手掛ける堂免一成先生は、昨年、ノーベル賞の登竜門と言われる「クラリベイト引用栄誉賞」を受賞されました。この地域からノーベル賞が出るかもしれないと考えるとワクワクします(関連企業の進出も期待しています)。

 また、今年の秋には、道の駅遠山郷が「かぐらの湯」の復活と合わせてグランドオープンします。青崩峠トンネル(仮称)の開通がいつになるか発表が待たれるところですが、三遠南信自動車道を通じた地域間交流が活発化していく未来にワクワクしますね。

 令和7年度は、飯田市の総合計画「いいだ未来デザイン2028」後期4年間の最初の年。未来に向けた礎をしっかりと築いていきたいと思います。

44 初心にかえって(広報いいだ令和6年12月号から)

 10月に行われた市長選挙で御支持を賜り、引き続き市政を担うこととなりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、4年前に市長になりたての自分がどんな『市長室から』を書いたのかと思い、当時の原稿を探してみると、なんと「未来を見据えながらも、一歩一歩着実に歩んでいきたい」と書いているではありませんか!今回の市長選挙に臨むに当たってキャッチフレーズにした「一歩一歩、着実に」を市長就任当初から使っていたとは、自分でも無意識でした。

 選挙結果だけ見れば、これまでの市政(姿勢)に対し多くの御支持を頂いた形ですが、市民の皆さんが現状をもって良しとしているかと言えば、決してそういうわけではないと受け止めています。私以外の候補に投票した方が9千人以上いるわけですし、有権者の半数近くが投票に行かなかったわけですから。そして、私に投票した方だって、百点をくれたわけではないでしょうから。

 これまで以上に「現場」に出向いて「対話」を重ね、市民の皆さんの声が届く「心かよう市政」となるよう努力してまいります。

 そして、皆さんの願いを一つ一つ形にし、困りごとを一つ一つ解決していくことで、「日本一住みたいまち」に一歩一歩、着実に近づけていきたいと思います。

 今年も残すところあとわずか。どうぞお体には気を付けて。

43 大切なもの(広報いいだ令和6年10月号から)

 某有名中学で「伝説の国語教師」と呼ばれた橋本武さんは、3年かけて中勘助の『銀の匙』を読むという授業で有名でした。

 その橋本さんの口癖は「すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなる」だったそうです。

 この言葉を聞いて、私の頭に浮かんできたのは、『星の王子さま』(サン=デグジュペリ)に出てくる「本当に大切なものは、…目に見えない何かなんだ」というセリフでした。

 今の私たちの回りには、スマホをはじめとして「すぐ役立つ」ものがあふれていますが、そのことで「本当に大切なもの」に触れる機会を失っているのではないかしら、とちょっと不安になります。

 この原稿を書くに当たって、『銀の匙』を改めて読み直してみました。

 最初に読んだのが大学時代だったからなのか、そこから私自身が30年以上齢を重ねたからなのかは分かりませんが、当時の私は何を読んでいたのかと思うくらい、豊かで瑞々しい物語でした。

 昭和40年代生まれの私ですら注釈を読まないと分からないモノや風俗がたくさん出てくる物語を若い皆さんがどう読むのか心配がないわけではありませんが、是非手に取ってみてほしいと思います。

 橋本さんから「大切なもの」をたくさん学んだであろう中学生たちのことを羨ましいと思うとともに、この物語がこれからも読み継がれてほしいと心から願います。

42 伝えたいこと(広報いいだ令和6年9月号から)

 先日、飯田コアカレッジの皆さんにお話をする機会があったのですが、その準備をしている際に、豊田章男さんがトヨタの技術者に語ったこんな言葉に出会いました。

 「皆さんは、自分のために、自分の技術を磨き続けてください。トヨタの看板が無くても、外で勝負できるプロを目指してください。私たちは、どこでも働ける実力を付けた皆さんが、それでもトヨタで働きたいと心から思っていただける環境をつくるために、努力してまいります。他人と過去は変えられませんが、自分と未来は変えられます。皆さん、一緒にトヨタの未来を創っていきましょう。」

 他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる——この言葉を悩み多き青春時代の真っただ中にいる学生の皆さんにお伝えしたかったのが第一ですが、豊田さんの言葉の「トヨタ」を「飯田」に置き換えると、これも私が子どもたちに伝えたいことでありました。

 世界のどこへ行っても活躍できる実力を付けた皆さんが、それでもやっぱり住みたいと思ってもらえる飯田市を創っていきたい。皆さん、一緒に飯田の未来を創っていきましょう!——子どもたちに話をする際には、一度はこの地域を離れても将来帰ってきてほしいと願ってお話ししますが、それはここに縛り付けようということではありません。豊田さんの言葉は、まさに私の思いを言い当ててくれたように思ったのでした。

41 ありがとうエルマー(広報いいだ令和6年8月号から)

 その新聞の「死亡記事」には、亡くなった方の顔写真ではなく、見覚えのある絵本の表紙の写真が載っていました。

 『エルマーのぼうけん』。子どもの頃、私の大のお気に入りだった絵本。

 その作者であるルース・スタイルス・ガネットさんのお名前も、作者が女性だったということも、その記事で初めて認識しました(もちろん本の表紙に作者の名前は書いてありますけれど)。

 それにしても、『エルマーのぼうけん』を私はいったい何べん読んだことでしょう!

 エルマーが「どうぶつ島」に捕らえられている子どもの竜を助けに行き、次々と起こるピンチをリュックサックに詰め込んだチューインガムやら棒つきキャンディーやら歯ブラシやらを使って巧みに乗り越えていく様は、何度読んでもワクワクしたものです。

 作者の訃報に接し、久しぶりに懐かしい絵本を手に取りながら、この本と出合えたことに改めて感謝しました(だって、エルマーが今の私の一部を作ってくれたのは間違いないのですから!)。

 すべての子どもが、そんな大事な一冊に出合えることを心から祈ります。​