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第18回飯田市地域史研究集会を開催しました
第18回飯田市地域史研究集会を開催しました。
9月11日から12日にオンラインで開催し、県外からも含め、多くの方にご参加いただきました。今回は、コロナ第五波のさなかで開催され、歴史研究所としては初の試みとなるインターネットを介したオンライン会議システムによる研究集会となりました。事前に市役所の会場参加をお申し込みいただいた方のなかには、オンライン参加に切り替えられない方も多かったようです。昨年から延期していたテーマであり、再延期ができないなか、やむを得ず、オンラインのみの開催となったことについて、ご理解いただけますと幸いです。
テーマ : 暮らしのなかの景観―その歴史と継承
南信州の伊那谷では、山々にかこまれた豊かな自然景観のもとで、ひとびとの日々の暮らしが営まれてきました。こうした長期にわたる日々の営みによって日常の景観はつくられます。現在、コロナ禍によって、日常を見つめ直す時間が増えるなかで、その歴史と継承の問題を考えました。
◆9月11日(一日目)
第一部 景観の歴史と文化―国際比較の視点から
初日の第一部では、法政大学の陣内秀信さんと京都工芸繊維大学の大田省一さんにご登壇いただき、アジアとヨーロッパの景観のちがいといった基本的なことから、景観に対する市民意識、イタリアのテリトーリオという地域の見方、また歴史的に育まれた庭園や風景へのまなざしについて学びました。さらに顧問研究員の吉田ゆり子さんから、両報告に対するコメントに加え、遠山谷の古絵図や古地図を読み解き、近世末から近代における山林資源の歴史と景観の変化についてのご報告をいただきました。
陣内秀信氏 大田省一氏 吉田ゆり子氏
◆9月12日(二日目)
第二部 魅力ある景観をのこす・つたえる
二日目の第二部では、研究員の羽田真也より、近世座光寺村の景観と社会構造に関する詳細な分析、横浜国立大学の中尾俊介さんより東京葛飾柴又を事例とした文化的景観の調査研究の方法についての報告がありました。また、宮田村教育委員会の小池勝典さんより宮田宿の歴史的景観保全の取り組み、九如亭の宮井啓江さんより地域にひらいた古民家カフェの活動についてお話しいただきました。
中尾俊介氏 小池勝典氏 宮井啓江氏
◆二日間を振り返って
今回の研究集会は、こうした多角的な視点から暮らしのなかでつくられる日常景観の現在と過去を考えることを意図したものです。オンラインの会場からは、専門家や生活者の立場からさまざまな意見がよせられました。特に印象的だったのは、歴史の継承といっても、人口減少のなかで山林資源を良好な状態で維持することが困難なこと、あるいは景観そのものを維持することよりも、そこに暮らすひとびとの生活が第一であること等の意見です。こうした課題は、日本全国、あるいは世界のさまざまな地域でも共通する問題といえます。
今回のオンライン研究集会は、100名近くの多くの方にご参加いただき、盛況のうちにおえることができました。飯田市歴史研究所としては、直面する地域の現実と向き合いつつ、研究実践や市民の景観保全の活動との連携をとおして、地道に考えつづけることが重要との思いをつよくしました。(研究員 福村任生)
録画映像の公開
今回の研究集会の録画映像は下記のウェブサイトよりYouTubeを利用した動画公開を行っております。また、DVDの窓口貸出も実施しております。なおYouTubeの公開期間は9/25~10/31を予定しております。
※公開期間は終了しました
関連パネル展示
テーマ : 暮らしのなかの景観―その歴史と継承
10/9(土)~10/25(月)にりんご庁舎2階市民サロンにて今回のテーマに関するパネル展示を実施します。内容は下記のとおりです。
(I) 古地図からよみとく景観の歴史
飯田/川路/伊賀良/座光寺/阿智村清内路
(II) 古民家とまちなみ遺産の現状と展望
古民家の活用と再生/阿智村駒場/大平/宮田村宮田宿/東京葛飾柴又
当日の配布資料
飯田市歴史研究所の窓口にて有料配布(500円+送料)しております。