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飯田アカデミア第82講座を開催しました(20180310‐11)
飯田アカデミア第82講座 報告
飯田アカデミア第82講座は講師に東京大学史料編纂所の保谷徹先生をお迎えし、「海外史料から読む幕末維新史」と題して、4コマの講義をして頂きました。
第1講では、「在外日本関係史料調査の歴史と日本コレクション ―ロシア調査の事例から―」というテーマでお話しを頂き、海外に所在する日本関係史料(在外日本関係史料)調査とデジタルアーカイヴ化事業の概要や、近年取り組まれているロシア調査の事例などから、19世紀初頭の日本とロシアとの北方紛争についてお話を頂き、この紛争の接収品はロシアの旧都サンクトペテルブルクへ送られ、現地の日本コレクションの一部となっていることなどをご紹介いただきました。
第2講では、「攘夷主義と対外戦争の危機」と題し、1864年の下関戦争、そして翌年の条約勅許に結果する過程を、イギリスやアメリカなどの西欧列強側の史料などをもとに読み解き、開港後の攘夷運動の高揚が外国人へのテロ・襲撃事件を招き、幕府はそうした中で一度開港した港を閉じる「鎖港」を各国に要求したこと、この鎖港要求に対する、通商体制の維持・拡大を主張する条約諸国の思惑や動向などについてお話を頂きました。
第3講では、「国際法のなかの戊辰戦争」というテーマでお話しを頂き、最新の研究成果を紹介しながら、条約諸国は局外中立策をとったものの、日本周辺への海軍力配備は怠らなかったこと、そして戊辰戦争が国際法と国際監視の中でおこなわれた戦争でもあったことなどを指摘されました。
最後に第4講では、「ガラス原板写真に見る明治初年の日本」と題し、国内にはほとんど存在しない、幕末維新期の日本を映したコロジオン湿板写真のガラス原板ネガ、今回は新たに海外調査で「発見」されたオーストリアのガラス原板ネガに記録された幕末・明治初期の日本の風景や風俗、社会などについてお話を頂きました。
近年の調査や研究の成果を反映し、海外史料を中心としたお話は、大変興味深く、また幕末維新史の新たな切り口を提示されるものばかりでした。現在、政府によって明治150年を記念する行事などが企画されていますが、今回のお話では、日本の幕末維新期について、世界史的な視野から見直し、改めて同時代、そして「明治維新」について考える上で大変重要な視角や史料などを数多く提示して頂いたように思います。
講師
保谷 徹 (ほうや とおる)さん (東京大学史料編纂所教授)
1956年、東京都生まれ。東京大学史料編纂所助教授を経て、現在、東京大学史料編纂所教授。幕末維新史、特に外交・軍事と社会および画像史料の研究。主要著書に『戊辰戦争』〈戦争の日本史18〉吉川弘文館2007、『幕末日本と対外戦争の危機 下関戦争の舞台裏』吉川弘文館2010などがある。
講義概要
海外史料から読む幕末維新史
- 第1講 「在外日本関係史料調査の歴史と日本コレクション―ロシア調査の事例から―」
- 第2講 「攘夷主義と対外戦争の危機」
- 第3講 「国際法のなかの戊辰戦争」
- 第4講 「ガラス原板写真に見る明治初年の日本」