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飯田アカデミア第84講座を開催しました(2018721‐22)

ページID:0075820 更新日:2018年8月2日更新 印刷ページ表示

飯田アカデミア第84講座 報告

    

 人びとの息づかいの聞こえるような労働運動史を ―紡績労働者の人間関係と社会意識―

   講師 三輪 泰史 (みわ やすし)さん (大阪教育大学名誉教授)

今回のアカデミアは、7月21日及び22日に飯田市役所で開催し、2日間で約40名の方が参加しました。

  

アカデミア84-1  アカデミア84-2

今回のアカデミアでは、「人々の息づかいが聞こえるような労働運動史を」というテーマのもと、

戦前から戦後にかけての労働運動について講義が行われました。戦前、1950年代、そして1990年代の労働運動について

緻密な分析に基づいて説明がなされ、現代の労働環境などへの鋭い問題提起にもなる内容でした。

講師紹介

三輪 泰史 (みわ やすし)さん (大阪教育大学名誉教授)

 プロフィール

1950年生まれ。長野大学産業社会学部教授、大阪教育大学教育学部教授などを経て、

現在、大阪教育大学名誉教授。

専門は日本近現代史。とくに、労働者史、労働運動史の研究に取り組まれている。著書に『日本ファシズムと労働運動』(校倉書房、1988年)

『日本労働運動史序説-紡績労働者の人間関係と社会意識-』(校倉書房、2009年)などがある。

このほか『菊池謙一・幸子夫妻の戦時下往復書簡』(大阪教育大学歴史学研究室編『歴史研究』53号、2016年)にて飯田歴研賞(特別賞)受賞。

 

講義概要

人びとの息づかいの聞こえるような労働運動史を ―紡績労働者の人間関係と社会意識―

【第1講】 敗戦直後の職場サークル運動 ―東亜紡織泊工場・綴り方サークルの「仲間」―

東亜紡織泊工場を舞台に1950年代に展開された職場サークル運動が紹介されました。

サークル運動を成立させた時代状況・労働者の構成を検討し、サークル内部の親密な人間関係が描き出されます。

サークル運動自体は会社との対立の中で収束していきますが、そこで営まれた水平的な人間関係は

その後も一人一人の参加者の人生に深い影響を及ぼしていたことが明らかにされました。

【第2講】 紡績労働者の人間関係と社会意識の歴史的変遷

戦前にさかのぼり、第1講で説明されたような人間関係がいかなる歴史的文脈の中で誕生したのかが検討されました。

戦前の職場では、恣意的な権力関係と身分差別が横行していました。そこで働く女工たちの間では親密な関係と

その裏返しとしてのいじめがはびこり、距離のある職員の間では人格的傾倒とさげすみが交錯しています。

そのような環境下で女工たちに育まれた辛抱と分相応を重んじるモラルは戦後にも継承されていきました。

【第3講】 1950年代の職場サークルをめぐる対抗

第1講で扱った東亜紡織泊工場のサークル運動とほぼ同時期に行われた、国鉄のうたごえ運動が題材となりました。

自らの悩みをうちあい真の仲間となるプロセスとしてうたごえ運動が存在していたこと、会社の側が東亜紡織の事例と同様に

運動を収束させる方向へ動いたことなどが明らかとされます。

1950年代、サークル運動に取り組んだ若者たちは、活動を通して人権や平和へと自身の認識を深めていったのです。

【第4講】 1990年代労資抗争の一焦点 ―丸子警報器労組と臨時女子従業員差別撤廃訴訟の社会史的研究―

「労働運動冬の時代」などとも呼ばれる1990年代に行われた丸子警報器労組の取り組みが分析されます。

研究者たちがこれまで顧みてこなかった、正規・非正規の壁を越えて企業の横暴と戦い労働者の権利を守ろうとした試みが紹介されました。

歴史研究者が、労働者の環境改善に現場で取り組んでいる人々に有益となる説得力を持った研究をできていない、

という問題提起の意義も合わせ持つ講義となりました。