飯田アカデミア第87講座を開催しました(2019629‐30)
飯田アカデミア第87講座を6月29日及び30日に飯田市役所で開催しました
- 開催日 2019年6月29日(土曜日)、30日(日曜日)
- 講 師 小島 庸平(こじま ようへい)さん(東京大学講師)
- 会 場 飯田市役所 C棟3階会議室 (飯田市大久保町2534)
詳細日程・講義概要
テーマ 戦前日本の農村社会をどうみるか──長野県に視座を据えて──
本講座では、地主制・産業組合・経済更生運動・満洲移民といった、かつて農業史研究で盛んに議論されてきた
トピックを取り上げ、近年の研究動向と新たな知見を長野県に視座を据えて紹介しました。
農村に基盤を置いた経済発展のあり方と、それが「ファシズム」へと帰結したメカニズムを、可能な限り史料に即して報告しました。
講義の概要
6月29日(土曜日)
第1講 地主制の再評価をめぐって
近代日本で「地主」がいかに位置づけられたかについて、研究史を整理し、近年では地主制の合理的な側面を再評価する潮流が生まれていることが紹介されました。
長野県埴科郡五加村を対象に、地主と小作人双方の契約に着目し、両者の力関係の実相を分析しました。
実際は地主の側が小作人に対して優位に立っており、小作人の実力を過大評価することはできないと指摘されました。
第2講 産業組合の政治経済的機能
小県郡和村(かのうむら)をフィールドに、産業組合がその組合員に対して行った信用審査に関する史料を活用し、組合員への融資の実態を明らかにしました。
当初は信用審査によって、担保を持たない組合員へも融資を行っていた産業組合が、担保に基づく貸付を重視する方向へ変質していく過程を明らかにしました。
6月30日(日曜日)
第3講 大恐慌下の救農政策と森林資源
上郷・座光寺両村を対象に、各地域の森林資源の状況が紹介され、豊富な森林資源を持つ上郷、脆弱な座光寺という状況が明らかにされました。
そのような経済状況は、昭和恐慌の時代に行われた救農政策の効果にも違いをもたらしました。
救農政策が、結果的に地域間の経済格差の拡大に拍車をかけるものになってしまったことが指摘されました。
第4講 農山漁村経済更生特別助成事業と「満洲」移民
昭和恐慌で深刻な打撃を受けた清内路村(現阿智村)が分析の対象となりました。
昭和恐慌に苦しむ清内路を対象にして実施された経済更生特別助成計画は、計画の段階から無理をはらんでいました。
その無理を打開するため、村人を満州移民に送り出し、満州での収奪により村の経済を回復させようとした側面があると指摘されました。
負債を整理し、現地から村へ送金を行うために、自ら積極的に満州へ渡る人々も出た可能性があると指摘されました。