本文
飯田アカデミア第109講座を開催しました(飯田市歴史研究所)
「新しい世界史教育を目指して―理論編&体験編」
【開催日】 2026年2月14日(土曜日)
【会 場】 飯田市役所C棟3階会議室(オンライン受講併用)
【講 師】 小川 幸司 さん(伊那弥生ケ丘高校 教諭)
講義内容
現在の歴史教育は、従来の知識注入を重視するあり方から、歴史資料をていねいに読んで思考力を養う方向へ転換しつつある。その意義を、講義と模擬授業を通して紹介していただいた。
第1講 13時30分~15時00分
「理論編―歴史実践としての世界史」
歴史を学ぶ意義と方法に関して、講師自身の経験にも即しながら、以下のことが述べられた。
1994年の松本サリン事件での体験と松本深志高校における図書館ゼミナールの活動から多くを学んだ。とくに重要だったのは、「事実というものがとても見出しにくいということ」(事実発見の難しさ)である。事実の見え方は多面的であり、だからこそ、(1)解釈や意義づけから切り離した事実そのもの(「揺らがない事実」)の検証、(2)その事実に対する解釈や意義づけの検証(事実間の因果関係や連関性・構造性などの検討)、(3)異なる意見間の対話、を積み重ねていくことが求められる。日本の歴史教育においても、2022(令和4)年度の新学習指導要領から、歴史事象を生徒自らが考察し、対話することが大事にされるようになった。
一方、現在の世界は、自身に好都合なフェイクばかりを取り上げ、ファクト(事実)を軽視する「ポスト真実の時代」を迎えている。しかし、「揺らがない事実」は人びとが対話を行ううえで不可欠なものであり、人類が共生していくための基盤となる。こうした中で、「揺らがない事実」の存在に依拠して、歴史事象の実証・解釈・批評・叙述・対話・創造を繰り返していく歴史実践(歴史の学び)は、私たちが現代社会を生きていくための有効な術を与えてくれる。
以上の話の後、「世界史探究」の授業例として、「明の海禁・朝貢体制と日本」というテーマで、足利義満が明へ送った手紙を取り上げた授業の内容が紹介された。
第2講 15時15分~16時45分
「体験編―中世ヨーロッパの十字軍の授業」
中世ヨーロッパの十字軍をテーマとした模擬授業が行われた。十字軍に関する世界史教科書の叙述が検討されたうえで、教科書にはまったく記載のない第5回十字軍と、それを担い、戦いではなく話し合いを選択した神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世を素材として、フリードリヒ2世が自著した『鷹狩りの書』も踏まえながら、彼を教科書にどう書き込むか、それによって教科書の歴史像がどのように変化するか、という論点について受講者間で意見交換を行った。

