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飯田アカデミア第96講座を開催しました(20220723-24)

ページID:20220802 更新日:2022年8月2日更新 印刷ページ表示

東京大学大学院人文社会系研究科教授の勝田俊輔さんに、「アイルランドの農村一揆」について講義していただきました

 

アカデミア第96講座 会場写真

 

  • 開催日 : 2022年7月23日(土曜日)、24日(日曜日)
  • テーマ  : アイルランドの農村一揆                                              
  • 講  師 : 勝田 俊輔(かつた しゅんすけ)さん (東京大学大学院人文社会系研究科教授
  • 会  場 : 飯田市美術博物館 2階講堂

  

講義概要

 18・19世紀にアイルランドで頻発した農村一揆を題材に、近世末から近代初期におけるアイルランドの農村社会の特徴や民衆世界について多様な視角から学びました。

テーマ  アイルランドの農村一揆

第1講 「アイルランドの農村社会:貧困と開発

 現在のアイルランドが、アイルランド共和国と北アイルランド(連合王国)の一部になっている歴史的背景の解説から始まり、19世紀アイルランドの人口動態、地主層―借地営農層―農業労働者からなる農村社会構造、ジャガイモ栽培に依存した農業労働者の生活実態などのアイルランド史の基本的事項について概説されました。

 

第2講 「義賊と「キャプテン」:一揆勢のモラル

 映画『遥かなる大地へ』に再現された19世紀のアイルランド農村社会の登場人物を手掛かりに、一揆が発生する原因となる社会の対立構造が説明され、また、一揆勢が単なる暴徒ではなく、義賊とよばれる民衆世界の正義を体現した存在であったことが論じられました。アイルランドのカトリック農民の間では、キャプテン・ロックやキャプテン・ムーンライトと呼ばれる架空の司令官の名を借りて一揆が行われた点を一次史料から紹介されました。こうした民衆一揆における架空の英雄像は、日本の幕末の世直し大明神とも共通し、その他の国や地域でもしばしば見出されます。

 

第3講 秘密結社と千年王国主義:反体制運動の可能性 

 アイルランドの農村一揆の背景には、中世以来のイングランドからの数度にわたる征服と植民事業の結果として形成された複雑な社会矛盾があります。なかでもプロテスタントによるカトリック民衆の弾圧は、現代のアイルランドにも根深い禍根を残しました。19世紀の農村一揆において、千年王国主義という預言が流行し、それによると超自然的な出来事が起こり、プロテスタントは1820年代に滅亡を迎えると信じられていました。こうした預言を信じることで、1820年代の農村一揆は反体制運動という側面も持ちましたが、1790年代のフランス革命期のような新しい社会体制の建設には向かわず、超自然的な力によるユートピアの到来を願う他力本願のものでした。

 

第4講 国家の対応:警察と救貧

 1820年代の「キャプテン・ロック」の農村一揆は公権力側が設立した近代警察と反乱法による夜間外出禁止・家宅捜索等により、一斉蜂起がおこる前に鎮圧されます。警察や判事は、鎮圧に成功しつつも、困窮した貧農の境遇には同情を示しており、中央政府もその救貧政策に苦慮しました。しかし、一揆を引き起こす貧農たちは、ジャガイモ栽培による自給自足生活から脱することができず、手詰まり感がありました。根本解決が図られないまま、1845年に始まるジャガイモ飢饉で、一揆勢の大多数は死亡または移民によりアイルランドから姿を消すこととなりました。

 

関連ファイル

飯田アカデミア 第96講座 (PDFファイル/807KB)

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