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飯田アカデミア第99講座を開催しました(20230624)

ページID:20231111 更新日:2023年11月11日更新 印刷ページ表示

信越放送ディレクター 手塚 孝典さんに「ドキュメンタリーが記録した満州移民」について講義していただきました

アカデミア99 会場写真アカデミア99 会場講師写真

  • 開催日 : 2023年6月24日(土曜日)
  • テーマ  : ドキュメンタリーが記録した満州移民                                              
  • 講 師 : 手塚 孝典さん (信越放送ディレクター)
  • 会 場 : 飯田市公民館 2階多目的ホール

  

講義概要

 20年にわたるドキュメンタリー制作の中で出会った人々との対話を手がかりに、満州移民の歴史を探ることを通して、現代の日本社会が抱える課題や歪みが浮き彫りにされました。

テーマ ドキュメンタリーが記録した満州移民 

第1講 「満蒙開拓の残像 〜国策と棄民の戦中戦後史〜

 河野村開拓団を取り上げたドキュメンタリー(2009年「残された刻~満州移民・最後の証言~」、2013年「刻印~不都合な史実を語り継ぐ~」、2018年「決壊~祖父が見た満州の夢~」)や戦後の再開拓地である福島県葛尾村を対象としたドキュメンタリー(2015年「棄民哀史」、2021年「まぼろしのひかり~14歳の満蒙開拓~」)を制作し、関係者への取材を進める中で考えたことが紹介されたうえで、最後に、満蒙開拓や戦後開拓を初めとする国民のための国策が、国民に犠牲を強い続けているという、日本社会の構図・矛盾が指摘されました。そして、こうした国策を担保している公共性や公益性という言葉の前提には、「社会の成長や人間の豊かさは経済発展に拠る」という搾取を前提にした経済原理が存在し、それは弱者への想像力を欠如させること、また、公共性・公益性が前面化した社会では、個が抑圧・排斥され、公に追従・加担させられる側面があることが述べられ、個(私)の自覚と自省の重要性が主張されました。

 

第2講 「東アジアからの問い 〜中国帰国者と朝鮮人満州移民の声〜

 最初に朴仁哲氏の著作『朝鮮人「満州」移民のライフヒストリー(生活史)に関する研究』の成果に基づいて、朝鮮人満州移民の戦中・戦後の体験が紹介されるとともに、満蒙開拓や日本の植民地支配がもたらした惨劇の複雑さが明らかにされました。さらに、中国からの帰国者(中国残留孤児の子孫たち)に光をあてたドキュメンタリー(2002年「ふたつの祖国に生きて~中国からの帰国者はいま~」、2012年「遼太郎のひまわり~日中友好の明日へ~」)を制作した経験を踏まえ、時代とともに形を変えながらも、今も日本の社会の底流に「日本の優越意識」や「多様性への嫌悪感」がうごめいていることが指摘されました。そのうえで、ドキュメンタリーを通して、定式化・均質化されない満蒙開拓の実相を多角的な視点から伝え続けたいとの抱負が語られました。

 

 本講座では、満州移民に関わる様々な人々と対話を積み重ねながら講師が感じたこと、考えたことが率直に表明されましたが、それは現代の日本社会が抱える課題や矛盾を鋭くえぐり出すものでもありました。このことは、満州移民というできごと、ひいてはそれにとどまらない歴史というものが、過去の遺物ではなく、現在にも大きな影響を及ぼしていることを鮮やかに示しています。その意味で、歴史を学ぶ、研究するという行為の意義を再確認できた講座でした。

 

関連ファイル

飯田アカデミア 第99講座 (PDFファイル/1.19MB)

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