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第21回飯田市地域史研究集会を開催しました
第21回飯田市地域史研究集会を開催しました
テーマ : 国史跡指定10週年記念 恒川官衙遺跡研究の最前線
― 浮かび上がる古代伊那郡の役所<伊那郡衙> ―
◆9月7日(一日目)
講演 文献史料からみた史跡恒川官衙遺跡/田島公(東京大学名誉教授、歴史研究所顧問研究員)
報告 史跡恒川官衙遺跡 正倉院発掘調査の成果/羽生俊郎/(文化財保護活用課)
講演 郡衙正倉にみる在地の建築技術/海野聡(東京大学)
報告 恒川官衙遺跡と座光寺の歴史文化/田口博人(座光寺 歴史に学び地域をたずねる会)
9月月7日・8日に「恒川官衙遺跡研究の最前線 ―浮かびあがる古代伊那郡の役所〈伊那郡衙〉―」をテーマとして、第21回飯田市地域研究集会を飯田市教育委員会文化財保護活用課と共催で開催しました。今年は恒川官衙遺跡が国史跡に指定されてから10周年となります。長年の発掘調査に基づいた考古学の成果を踏まえながら、文献史学や建築史学からの検討を交差させて、古代律令国家のもとにあった伊那郡衙や下伊那の姿を考えることを目指しました。
1日目は講演2本と報告2本を行いました。田島公さん(東京大学名誉教授、歴史研究所顧問研究員)の講演「文献史料から見た史跡恒川官衙遺跡」では、文献史料に加え木簡や小字地名なども用いて、郡衙以前の評衙段階から検討し、都への貢納品の徴収・運搬や牧の運営における郡衙の役割が明らかにされるとともに、官僚制の導入(役人の出退勤管理)と寺院(郡寺)との関係といった新たな論点が提示されました。
また、羽生俊郎さん(文化財保護活用課)の報告「史跡恒川官衙遺跡 正倉院発掘調査の成果」では、発掘調査で顕著な成果を得た正倉に焦点を絞り、その最新の成果が報告されました。これをうけて海野聡さん(東京大学)の講演「郡衙正倉にみる在地の建築技術」では、全国各地での発掘調査の成果を踏まえ、建築史学の視角から、郡衙正倉の立地・空間・建築構造・荘厳性などを整理したうえで、恒川官衙遺跡の注目点が指摘されました。
さらに、この遺跡を未来へ引き継ぐための活動に取り組む地元・座光寺地区の田口博人さん(歴史に学び地域をたずねる会)には、会の紹介と史跡公園の整備に対する思いをお話しいただきました。その後、小林正春さん(前長野県考古学会長)や加藤友康さん(東京大学名誉教授)からもコメントをいただき、質疑応答・全体討論を行いました。
◆9月8日(二日目)
恒川官衙遺跡と飯田考古博物館の見学
2日目には、恒川官衙遺跡と飯田市考古博物館の見学会を実施しました。2日間で延べ137人の参加がありました。今回の研究集会を通して、伊那郡衙の具体像を解明する手掛かりや今後の研究課題が浮き彫りになりました。成果は来年度刊行の年報で公表する予定です。
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