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飯田歴研賞受賞作品一覧(2024年度〜)

ページID:0128863 更新日:2025年10月14日更新 印刷ページ表示

2025年度 受賞作品

著作賞

小林 旅人(こばやし たびと)さん
  『和傘ってどんなもの? 阿島の和傘篇』
(喬木村文化遺産プロジェクト推進委員会、2024年3月)

【講評】

 喬木村阿島では、古くから和傘(阿島傘)が盛んに製造され、主力産業となっていたが、現在では生産量が激減しており、技術と伝統を未来に継承すべく、地域の方々が積極的に活動を行っている。本書は和傘職人を営みながら「地域おこし協力隊」として喬木村に着任した筆者が、和傘とはどのようなものであるか、長野県における和傘の生産の特色な何であり、阿島はそのなかでどのような位置を占めるか、和傘をとりまく文化などについて、豊富な事例と多くの絵図や写真をもとに論じた労作である。和傘生産の技術的な側面についてていねいに解説していること、また、阿島の和傘生産の歴史について一次史料をもとに調べ、史料とデータを紹介していることなど、特筆すべき点が多い。子どもでも読める平易な文章でありながら、専門的な内容にもふみこんでおり、学術的にも価値を持つが、なによりも和傘と和傘にかかわる人々に対する温かいまなざしにあふれていることが、本書のおおきな魅力となっている。

論文賞

林 優一郎(はやし ゆういちろう)さん
 「三穂小学校校歌に関する考察」
(『伊那』第72巻第10号、2024年)

【講評】

 本論文は、三穂小学校の創立150周年事業のひとつである記念誌の制作において行われた調査の成果である。三穂小学校の校歌について、従前の「昭和の初期に村歌が校歌に転じた」という見解の再検証を主題とし、校歌の歴史を紐解きながら、次々と浮かび上がる問いに真摯に向き合い、重層的に論が進められる。調査にあたって、小学校所蔵史料のほか、関連する地域史料や官報などをていねいに読み解きながら検討が重ねられている。まずその着実な過程により明らかにされた諸事実そのものの価値が大きい。  また、諸史料から導き出された結論、すなわちもともと明治43年に三穂小学校校歌として作られ制定されたものが、一方で村歌としての要素も持ち合わせ、「『校歌』が『村歌』としての意味を成していた」との見解は、一校歌の研究事例にとどまらず、当時の学校と村との関係性や、村歌制定と村民のアイデンティティ形成など、多様な論点の考察につながるもので興味深い。  よって本論文は、飯田歴研賞にふさわしいと評価した。

奨励賞

青島 重行(あおしま しげゆき)さん
 『青島秋夫日記と満洲移民―シベリアに眠る祖父へ―』
(2025年3月)

【講評】

本作は、著者の祖父・青島秋夫が残した日記ー1930年および1933年―を翻刻し、その時代背景を研究したものである。この日記は1930年代に長野県で教員を務めた青年が、何を学び、時代に向き合ってどのように生きたかを伝える歴史資料である。いわゆる「二・四事件」の教育現場への影響や、のちの満洲移民につながる記述もあり、史料的な貴重性は高い。また、著者は祖父がのちに活動することになる中国・東北部の移住先跡地を訪問したことも記録していて、歴史の継承として意義深いものがある。この作品が、飯田市民の手によって、飯田市歴史研究所での共同の研究を通じて作り上げられた点を高く評価したい。共に研究してきた粟谷真寿美氏、本島和人氏も原稿を寄せており、満州移民など、その後のつながりや背景も知ることができる。このように、市民一人一人が自らにつながる歴史を調べ考えることを支えるのは、歴史研究所の重要な役割であろう。その点から、本作を奨励賞としたい。

2024年度 受賞作品

著作賞

山野 晴雄 (やまの はるお)さん 
 『大正デモクラシーと地域民衆の自己教育運動―自由大学運動の研究―』
(自由大学研究・資料室、2023年12月)

【講評】

 1970年代、学問とは何か、教育とは何か、という切実な問いのなかから自由大学運動研究はスタートした。山野氏はその先駆者であり、先導者でもあったが、本書は氏の永年の研究成果を集大成した著作である。
 周知のように自由大学運動においては土田杏村・山本宣治・高倉テルら知識人の文化論・学問論と、学習運動を実際にになった地域青年たちの意識状況を総合的に分析していくことが求められる。そのことを通してはじめて「学問」とは何か、それを「自由」に地域の青年たちが「担う」とはどういうことか、といったアクチュアルな問題が浮かびあがってくるが、本書の叙述はこうした問題を提示するうえで優れたものとなっている。また地域(新潟や伊那、福島など)における自由大学運動の発掘は本書の白眉でもある。
 研究史の叙述や年譜など関連資料も充実しており、後進にとってよい研究の手引きともなっている。
 以上、(1)充実した内容をふくむ歴史叙述、(2)今後の研究へのよい入門書であること、そしてなによりも(3)市民自らが学問・研究をすることとはどういうことか、といった問題を提示していることにおいて飯田市歴史研究所の設立理念にも沿う、この3点によって歴研賞受賞にふさわしい作品と評価した。

奨励賞

土井 麦穂 (どい むぎほ)さん 
 『夕陽に對す 祖父の漢詩ににみる満州開拓の日々』
(2023年6月)

【講評】

 土井麦穂氏『夕陽に對す 祖父の漢詩にみる満州開拓の日々』は、当地出身の著者が、祖父の残した漢詩を手がかりに、戦争の時代を捉えようとした作品である。その祖父は、戦時期に川路地区で組織された満洲開拓団の団長として活動し、現地で命を落とした人物だった。ひとつひとつの詩の背景や人物像を丁寧に綴ることで、戦後世代が過去を生きた人に思いをはせる、一つの良きあり方を示している。小品ながら、歴史研究所所蔵の地域資料や、このテーマを専門的に調査してきた研究員の支援を活用し、関連する資料を調べ読みこんでいる点が優れている。多くの市民に、ぜひこのような形で研究所を活かしてほしいという願いも込めて、奨励賞としたい。情報の爆発的増加や、フェイクニュースの存在は、歴史をめぐる社会の認識をいよいよ揺さぶっている。本書で取り組まれた家族史のような、現在と地続きの歴史に目を向ける営みと学問との協働が一層必要だろう。

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