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飯田歴研賞2026 受賞作品紹介

ページID:20260912 更新日:2026年10月1日更新 印刷ページ表示

飯田歴研賞2026 受賞作品

 飯田歴研賞は、飯田・下伊那の地域史研究における優れた論文や著書等を表彰するものです。
 今年度の受賞作品をご紹介します。 

 

著作賞

松澤 保さん

『《歴史探訪》榑木運材にかかわった信州代官の動向 阿智村の宮崎三家と市岡氏の足跡を訪ねて』(南信州新聞社出版局、2026年1月)

松澤保受賞本

【講評】

 本書は『伊那』に掲載された7本の論考を1冊にまとめたものであり、伊那谷の榑木運材を担った宮崎三家と市岡氏を中心に関連人物の動向を描く。遠山谷や遠州船明などにおける運材の様相のみならず、下伊那から転出した先の近江醒ヶ井における施政や、代官の一族が紀州徳川家に仕えた様子、京都町奉行、江戸町奉行として活躍した様子などにも幅広く言及する。
 本書は文献史料を中心に、石碑や絵図、地形などの厳密な分析に基づく、優れて実証的な手法によって描かれており、著者が歴史学の手法にきわめて熟達していることがうかがえる。なによりも醒ヶ井や和歌山などに自ら足を運び、現地調査を行っていることが強い感銘を与え、ここに本書の大きな魅力がある。
 本書を通読することによって、17世紀末の幕政の転換が在地代官の一族の運命を大きく変えていったことが立体的に浮かび上がり、江戸幕府の権力構造とその変化を考えるうえでも高い学術的価値を持つ。以上から本書は歴研賞の著作賞として高く評価される。

 

奨励賞

清水 文夫 さん

「普門院創建と宝憧寺・大龍寺私見」(『伊那』第71巻第6号、2023年6月)
「行倒れの旅人への対応―元禄5年「飯田御用覚書」より―」(『伊那』第72巻第7号、2024年7月)
「堀家飯田藩の江戸廻米と天竜川の水運」(『伊那』第73巻第5号、2025年5月)

清水文夫受賞本

【講評】

 一連の論文は、飯田市歴史研究所の「近世史ゼミ」において延宝2年「飯田御用覚書」の読解に参加した著者が、他の年の「飯田御用覚書」に興味を持ち、独自に分析することによって書かれたものである。3本は延宝から元禄期を対象としており、それぞれ飯田藩の祈祷寺である普門院の創建過程と大龍寺の位置、飯田から西国に巡礼に出かけ行き倒れた者と他所から藩領に入り込み行き倒れた者をめぐる動向、飯田藩による江戸廻米の過程についてとりあげている。内容が大きく異なるが、飯田藩政と地域に暮らす人々にとっていずれも非常に重要なトピックを深掘りしたものである。実証的に手堅く、学問上有用な事実が明らかにされている。それぞれ単独の作品として優れたまとまりを示しており、著者の研究者としての高い可能性を十分にうかがうことができる。今後のさらなるご活躍を期待したい。

 

奨励賞

南信州文化財の会

『わがムラの石造文化財』1~3(南信州新聞社出版局、2016年2月・2020年7月・2025年5月)

南信州文化財の会

【講評】

 本書は、地域に残るさまざまな石造文化財について、長い時間をかけて地元の方々が調査してきたものだ。石造文化財のつくられた時代は近現代まで含む広範なものである。碑文だけではわからない由来や時代背景を学ぶことができるため、地域市民が日々接する景観の意味を、より深く読み解くための助けとなるだろう。長い時間の中で伝わりにくくなる、碑を建てた過去の人びとの意思を継承する試みとも言える。住民主体の歴史継承として重要な成果だ。地元紙での連載がまとまって刊行され、読みやすさの点でも大きな意義がある。こうした蓄積がウェブサイトなどを通じて視覚的に整理され、より広い層に届くことを願いたい。

 

関連リンク

 過去の飯田歴研賞受賞作品