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飯田市歴史研究所の活動
飯田市歴史研究所は、「現在及び未来の市民のために、歴史的価値を有する記録を収集し、保存して、広くその利用に供するとともに、歴史、文化等を科学的に調査研究して、これを叙述し、もって市民の教育、学術及び文化の向上発展並びに活力ある地域社会の想像とその持続に寄与する」(歴史研究所条例第2条)ことを目的に設立され、令和5年12月に20年の節目を迎えました。
今後も、飯田市独自の社会教育機関として、市民のための、そして、地域に寄与する諸活動の更なる充実を図ります。
第6期中期計画(2025~2028年度)
1 計画の位置付け
飯田市歴史研究所第6期中期計画は、「いいだ未来デザイン2028(飯田市総合計画)」と、その教育分野の計画でもある「第2次飯田教育振興基本計画」を上位計画とし、後者の社会教育機関別計画(個別計画)として位置付けられるものです。
2 計画期間
計画期間は、令和7年度から令和10年度まで(2025-2028)の4年間とします。
3 基本方針
(1) 歴史や文化が生み出した歴史的価値を持つ財産を、未来へと継承すべき「地域遺産」とし、これを調査・記録し、保存と公開を図ります。さらにその内容を研究し、成果を多様な形で市民に還元し、共有の財産とします。
(2) 戦争や災害・くらしの記憶や日々過去となりつつある現在を記録していきます。
(3) 調査研究は飯田市を対象に行いますが、飯田市の歴史を広い視野から包括的に理解するため、歴史的に不可分な下伊那地域や関連する諸地域も対象とします。
(4) 地域史研究の拠点として、地域で研究活動をする団体や個人、市社会教育機関と連携して、調査研究だけでなく、地域を担う人材の育成に結びつくよう、教育普及事業に取り組みます。
(5) 歴史研究所の取組の諸成果を地域市民や地域外にも広く発信し、交流を図ります。
(6) 交通環境の変化に対応してきた歴史をひも解き、高速交通網時代の到来により変貌が予想される、これからの地域想像と地域の持続につなげる地域史研究活動に取り組みます。
4 重点目標
(1) 地域アーカイブズの保存・継承
地域アーカイブズ(地域史料)は市民の学習や地域における歴史研究の基盤となるものです。市民の共有財産であり、かけがえのない地域史料を散逸・消失から守り、未来に継承するための、調査・記録・保存活動に継続的に取り組みます。
市役所の非現用文書のうちの歴史的価値のある文書(歴史公文書)の評価選別、整理、保存については、旧役場文書を含め、適切に保存し、市民への公開・利用や、行政利用に供する体制の構築に向けて、協議・検討を進めます。
(2) 地域遺産の再発見と利活用の促進
調査研究を通して発掘した新たな地域遺産や、既存の地域遺産が持つ新たな価値を発見(再発見)し、その成果を市民やその地域に伝え還元していきます。また、地域遺産の地域での利活用に向けた活動を支援していきます。
(3) 市民・地域研究団体等との連携
市民や地域の研究者、研究団体等と連携して地域に密着した調査研究活動を行い、地域史研究や地域遺産の保存継承を進めます。
(4) 地域史研究に関わる人材の育成と教育普及事業の推進
将来的に地域史の調査研究に携われる人材の育成に向けて、古文書講座の中級者向け講座の開設やオーラルヒストリー調査の「聞き手」の育成にも取り組みます。地域史に関心を持つ市民のすそ野を広げられるよう学びの場を提供し、学校現場と話し合いながら高校生などの若年世代を対象とした学習機会の開設や、市民が参加しやすい方法を検討していきます。
(5) 恒久的施設の立地・環境改善に向けた検討
歴史研究所の施設については、市民の利便性や学習支援の効果を期待できる場所への移転について検討し、地域史研究を安定的に行うための施設環境についても検討していきます。また、恒久的施設への移転に向けては、公文書館機能の整備に向けた検討をあわせて行う必要があり、関係部署であるべき方向性を検討します。
※詳細は、以下の関連ファイルをご覧ください。
関連ファイル
飯田市歴史研究所第6期中期計画 (PDFファイル/740KB)
史料調査活動
地域史料に関する情報を広く収集し、所蔵者の協力を得ながら、その内容について綿密な調査を実施します。そして、永く保存するための措置を講じながら、史料に応じた適切な活用方法を考えていきます。こうした作業を市民のみなさんとともに進め、史料を地域の中で保存・活用していくための取り組みも進めています。
収集した史料のうち、公開の可能なものについては、歴史研究所にて閲覧することができます。
関連リンク
研究活動
研究員(研究員・調査研究員・顧問研究員・客員研究員)を中心にした研究活動により、市民のみなさんや各研究機関と連携しながら、地域の歴史や文化について明らかにしていきます。研究活動は、次のような分類に沿って、年度ごとに課題を設定して進めています。
1. 共同研究
複数の研究員と外部研究者による共同研究。
(1)基盤研究
文書調査・歴史的建造物調査・オーラルヒストリー調査など、最も基礎となる史料調査。
(2)課題研究
特定の課題を設定して取り組む共同研究。
(3)単位地域研究
飯田市を構成する各地域の特性を、総合的に明らかにするための研究。
2. 基礎研究
研究員が個別に課題を設定して取り組む研究。
関連ファイル
令和5年度歴史研究所研究計画 (PDFファイル/168KB)
地域史研究集会
研究員による日頃の研究成果を土台としながら、地域に関わる特集テーマを設けて開催するシンポジウム形式の研究会です。地域・全国の研究者による研究発表や、市民のみなさんの参加する討論などを通じて、地域の歴史についてより研究を深めていきます。また、市民のみなさんや市内学校の生徒による自由発表も行われています。
定例研究会
研究の進展をはかるために、研究員などが最新の研究成果を発表する所内研究会を、月1回程度開催しています。研究所内の研究会ですが、市民のみなさんのご参加も歓迎しています。
学習協働活動
歴史研究所は、次のような取り組みを通じて、市民のみなさんが地域の歴史を学んでいくための機会を提供しています。
飯田アカデミア
全国を舞台に活躍する研究者が、最先端の研究成果をわかりやすく解説する講座です。歴史学をはじめとした、さまざまな分野の知見にふれことで、地域の歴史を学んでいくためのヒントがつかめます。
地域史講座
研究員が、日頃の研究によって明らかになった地域の歴史について、わかりやすく解説する講座です。内容に応じて、地域の公民館などで開催します。
歴研ゼミナール・ワークショップ
市民のみなさんが集い、歴史資料の講読や参加者による議論などを通じて、それぞれのテーマについて深めていくための講座です。研究員の指導のもとで行う歴研ゼミナールと、市民のみなさんの自主的な学びの場であるワークショップを開講しています。各ゼミナール・ワークショップは、随時受講者を募集しています。
※開講日が歴史研究所の休所日となる場合は休講となります。詳しい日程は、隔月発行の『歴研ニュース』をご覧ください。
各ゼミ・ワークショップの詳細 (令和7年4月現在)
近世史ゼミ
- テーマ 「飯田御用覚書」を読む
- 担当者 羽田 真也(研究員)
- 日時 第2・第4水曜日 午後6時30分~8時30分
- 会場 歴史研究所 研修室
建築史ゼミ
- テーマ 身近な空間の歴史を調べてみる
- 担当者 岩田 会津 (研究員)
- 日時 第3金曜日 午後6時30分~8時30分
- 会場 歴史研究所 研修室
地域史ゼミ
- テーマ 大正期LYL事件の刑事記録を読む
- 担当者 伊藤 悠 (研究員)
- 日時 第2・4金曜日 午後6時30分~8時30分
- 会場 歴史研究所 研修室
思想史ワークショップ
- テーマ 清水幾太郎『天皇論』他の輪読と論議
- 日時 第1・第3水曜日 午後7時~9時
- 会場 歴史研究所 研修室
満洲移民研究ゼミ
- テーマ 文書・記憶・個人の記録から考える
- 担当者 本島 和人 (調査研究員)
- 日時 第1土曜日 午前10時00分~11時40分
- 会場 歴史研究所 研修室
近現代史ゼミ
- テーマ 昭和11年の胡桃澤盛日記を読む
- 担当者 田中 雅孝 (調査研究員)
- 日時 第4土曜日 午前10時00分~11時40分
- 会場 歴史研究所 研修室
出前講座
地域のさまざまな要望にお応えして、公民館や学校などで地域の歴史について解説する講座を開催します。
研究助成
飯田・下伊那地域の歴史をテーマにした団体や大学院生の研究活動を助成しています。
市民研究員
関心に沿ったテーマについて、研究員の指導を受けながら研究を進め、2年間をかけて論文などの成果物を作成する制度です。毎年、公募で市民のみなさんの中から選ばれています。
市誌編さんと出版活動
自分たちの地域を知り地域を大切に思う心の醸成を目的に、歴史研究所の調査・研究事業の集約の場として位置づけ、地域の歴史を研究するための基礎となる資料集の編さんを継続的に進めています。また、日頃の調査研究事業の成果を、専門的な論集からわかりやすい読み物までいろいろな出版物にまとめて発行しています。
- 飯田下伊那史料叢書
地域史研究の基礎となる資料をまとめた叢書。現在、近世資料編と建造物編が出版されています。 - 『飯田・上飯田の歴史』(上・下)
原始から現代の飯田・上飯田地域の歴史を、テーマごとにまとめています。豊富な図版とわかりやすい記述によって、地域の歴史を深く理解することができます。 - 『飯田市歴史研究所年報』
地域史研究集会の内容をはじめ、論文・研究ノート・随想・調査報告・資料紹介・書評などを掲載し、1年間の研究所の研究成果をまとめています。
関連リンク