山本のハナノキ
山本のハナノキ(やまもとのはなのき) 1本
区 分:長野県天然記念物(昭和40年4月30日指定)
所在地:飯田市山本6771 外
所有者:個人等
概 要:
ハナノキはカエデ科の落葉高木で、花楓(はなかえで)ともいわれます。春、葉が開く前に赤い花を咲かすことが名前の由来とされ、秋にも美しく紅葉します。日本の固有種(こゆうしゅ ※1)で、恵那山(えなさん)を中心とした岐阜県東部から愛知県北東部、長野県南西部にかけて分布しており、雄と雌が株ごとに完全に分かれている雌雄異株(しゆういしゅ)の植物です。
ハナノキは生きた化石ともいわれます。
今から2300万から530万年前、地球が今より10度以上も暖かかった時代、ハナノキの祖先種は東アジア・ヨーロッパ・北アメリカと広く分布していました。その後、気温が低下するとともに分布範囲を狭め、北米と東アジアに分断されました。これを隔離分布(かくりぶんぷ)といいますが、現在は日本列島に日本固有のハナノキが、北米大陸にハナノキの姉妹種であるアメリカハナノキとギンヨウカエデが分布しています。
水気を好むため、飯田市山本から阿智村、阿南町にかけての水が湧く湿地(ハナノキ湿地)に自生しています。
この木は雄株で、高さは23m、枝張りは東西22m、南北20mもある大木で、3月下旬から4月上旬にかけて開花し、10月下旬から11月中旬に紅葉します。
※1 固有種:その国やその地域にしかいない動植物をいいます。
3月下旬から4月上旬に開花します。
約一月半で種子ができ(「山本のハナノキ」は雄株なのでできません)、5月下旬頃に、ヘリコプターのプロペラのように「翼果(よくか)」が回転しながら舞い落ちます。
10月下旬から11月中旬にかけて紅葉・黄葉します。
見学・注意事項
周辺は私有地ですので、駐車等はご配慮をお願いします。
アクセス
○信南交通 乗合バス駒場線「二ツ山」 徒歩13分
山本はハナノキの宝庫
飯田市山本地域から阿智村にかけては多くの小湿地があり、ハナノキが多く分布することで知られています。その中でも、山本地区の国道153号 二ツ山の信号の南東側の堂坂稲荷(どうざかいなり)といわれる場所のハナノキは、鮮やかな紅葉で目立つ存在です。しかし、開発や土地利用の変化などによって生息地である小湿地が減少しており、ハナノキの減少が心配されています。
書籍等案内
『ハナノキ湿地の自然史 ―赤き楓のかなでる交響楽―』 飯田市美術博物館