上黒田の五輪塔
上黒田の五輪塔(かみくろだのごりんとう) 1基
区 分:飯田市有形文化財(平成21年7月22日 飯田市指定第81号)
所在地:飯田市上郷黒田3445-1
所有者:個人
時 代:南北朝時代末期~室町時代前期(14世紀後半)
規模等:高さ128cm、幅49cm、 花崗岩製(※1)
概 要:
製作年代が14世紀後半に遡る五輪塔です。高さ128cm、最大幅49cmと大型で、梵字(※2)は刻まれていません。一般的に、五輪塔はそれぞれの石をほぞ穴を作って接合していますが、本件は各輪にへこみをつけて乗せています。このような接合方法は、静岡県焼津地方の緑色凝灰岩製(※3)の五輪塔の特徴と一致していることから、東海地方の石工により作られた可能性が考えられます。
※1 花崗岩:マグマが地中深くでゆっくりと冷えて固まった岩石で、ご飯にごま塩をふりかけたような白色と黒色で、御影石とも呼ばれます
※2 梵字:古代インドで発祥した文字で、日本の仏教では、仏や菩薩などを一文字で表す際に多く使われています
※3 緑色凝灰岩:大規模な海底火山により火山灰が堆積してできた岩石で、東北地方の日本海側から中部地方に分布しています
解 説:
五輪塔とは
主に墓標や供養塔として使われるもので、下から方形(四角形)、円形、三角形、半月形、宝珠形の五つの輪(りん)を重ねて塔にしています。古代インドで宇宙を構成するという地・水・火・風・空を表しているとされますが、この教義に従い日本で考案されたと考えられます。
現状
空風輪:高さ28cm、幅20cm
火輪:高さ38cm、幅49cm
水輪:高さ26cm、幅39cm
地輪:高さ36cm、幅42cm
道路から一段高い畑の一画に花崗岩の石室があり、この中に安置されています。
空風輪の中央のくびれは小さく、縦長の古い形式をしています。火輪の高さは幅の割に高く、空風輪との接合面は狭くなっています。下面は緩やかな弧を描き、軒面の幅は狭くなっています。水輪は全体的に小ぶりで扁平な形態をしており、上面の火輪との接続はほぞ穴ではなく、火輪の下面の形状に合わせた窪みを設けています。地輪は正方形に近い横長で、上面は水輪下面の窪みに対応した弧状となっています。
特徴等
花崗岩製でありながら本件のような無ほぞ穴で各輪を接続する型式は珍しく、焼津産緑色凝灰岩製の五輪塔にみられる手法です。緑色凝灰岩製五輪塔の古いものの特徴は、火輪が縦長で軒面が狭く、下面が弧を描き、地輪は正方形か横長のものが主流です。
これは本件の特徴とも一致しており、緑色凝灰岩製五輪塔の年代の特徴と比較すると、14世紀後半の南北朝時代末期から室町時代前期あたりに製作されたと考えられます。そして、緑色凝灰岩製五輪塔を制作する東海地域の石工が、当地に招へいされて制作した可能性があります。
見学・アクセス:
信仰の対象にもなっていますので、礼節をもって見学してください。
○通行の妨げになる場所への駐車はお止めください。
○中央自動車道飯田ICより車で14分
○JR桜町駅より徒歩25分