クモマベニヒカゲ
クモマベニヒカゲ(くもまべにひかげ) 1種
区 分:長野県天然記念物(昭和50年2月24日指定)
所在地:-
所有者:-

概 要:
本州の中部山岳地帯と北海道の大雪山系に生息する、ジャノメチョウ科(※1)の高山蝶(ちょう)で、ベニヒカゲと近い種類ですが、ベニヒカゲよりも狭い範囲にしか生息していません。本州と北海道のクモマベニヒカゲはそれぞれ亜種(あしゅ ※2)とされており、市内では、木曽山脈(中央アルプス)及び赤石山脈(南アルプス)の標高1800~2000m以上、ダケカンバ(※3)の林間の草地などで生息しています。日本列島以外では、樺太半島・朝鮮半島・ユーラシア大陸北部に生息しています。
メスは橙色帯が淡色で幅広く、その中の眼状紋の中心に小さな白点があります。ベニヒカゲとは、後翅(はね)の裏側に白い帯があることで見分けられます。
ベニヒカゲとクモマベニヒカゲは高山蝶の中では比較的目にしやすい種類で、7月下旬から8月頃発生し、各種高山植物の花を訪れます。漢字では雲間紅日陰と書かれ、天気の良い日しか飛びませんが、陽が当たると草むらに隠れます。1年目の冬は卵で過ごし、幼虫は2年目に高山帯にあるイネ科の植物を食べて、四令幼虫(※4)で成虫になるまで3年間かかります。
※1 ジャノメチョウ科:蝶の仲間で、多くの種類が翅(はね)に眼状紋(がんじょうもん)を持っているので「蛇の目(じゃのめ)蝶」と呼ばれています。
※2 亜種:同じ生物ですが、生息環境やなどの違いによって、わずかな特徴の違いがみられるものです。
※3 ダケカンバ:漢字では岳樺と書き、白樺(しらかば)の幹を少し茶色くしたような木で、標高の高い山岳地帯に分布しています。
※4 四令(齢)幼虫:昆虫は、卵・幼虫・蛹(さなぎ)・成虫の順に成長しますが、幼虫の段階で4回に分けられていることをいいます。脱皮により成長段階が進みます。
見学・注意事項等:
○南アルプスへは、飯田市側からは通常一泊以上を要する本格的な登山となります。
○林道は通行止め等もありますので、事前に交通情報の確認が必要です。
○南アルプス(南部)へのアプローチは、遠山郷観光協会(外部リンク)のHPでご確認下さい。
○文化財保護条例(長野県)と共に、環境省のレッドデータブックにおいても準絶滅危惧(NT)に選定されている種類です。許可なく採取は禁止されています。