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モリアオガエルの繁殖地

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年9月15日更新

モリアオガエルの繁殖地(もりあおがえるのはんしょくち) 1区域

区 分:長野県天然記念物(昭和40年4月30日指定)

所在地:飯田市上郷黒田3841 (野底山池の平)

所有者:飯田市

概 要:

モリアオガエルはアオガエル科の日本固有種(※1)のカエルです。樹上に直径15cmほどの白い卵塊(らんかい)をぶら下げるように産卵することで有名です。本州、四国の湿り気の多い林内に生息し、伊那谷では高森町・喬木村伊南の地域で分布が確認されています。

野底山池ノ平の繁殖地は蛙沼とも呼ばれており、小さな沢地形にできた池で、所々に浮島があります。野底山一帯は大規模に植林されていますが、蛙沼周囲は自然林が残されており、モリアオガエルの生息に適した環境になっています。

蛙沼は、松川の支流である野底川の奥、標高1060m付近にあります。野底川の支流池の平沢の崩落によって谷状の窪地が堰(せ)き止められ、約2000年前にできたと考えられています(※2)

蛙沼の規模は、昭和7年の調査では、東西は最大で24m、南北は56mの860平方mの広さ、水深は最大で197cmを測りましたが、年々土砂が堆積し、陸地化が進んでいます。現在は水深50cmに満たない程度ですが、堰堤(えんてい)を設けるなどして、昔から大切に保護されています。

また、本繁殖地は、昭和7年から23年にかけて調査されており、長野県のモリアオガエルの先駆(せんく)的な研究地でした。

※1 固有種:その国やその地域にしかいない動植物をいいます。

※2 約750年前とする説もあります。

池の平

らんかい

蛙沼には、ニホンマメシジミ、カワコザラといった貴重な淡水の貝類、オオミズゴケ、カビゴケなどの希少種をはじめ、多くの湿地性の生物が生息しています。

モリアオガエル

もりあおがえる 北城節雄氏撮影 画像の無断転載を禁止します。

特徴

体長は、オスが42~62mm、メスが59~82mmほどとやや大きく、指先に吸盤があり、木の上での生活に適応しています。体色は緑色ですが、褐色の斑(まだら)模様がある個体もいます。目の虹彩(こうさい ※3)が赤褐色です。

ニホンアマガエル(※4)やシュレーゲルアオガエル(※5)と似ていますが、モリアオガエルはより大型のカエルで、また、ニホンアマガエルとは目から耳にかけて黒い帯模様がないこと、シュレーゲルアオガエルとは虹彩が赤っぽいことで区別できます。

オスが繁殖期に「コッコッコッコ」と鳴きますが、近づくと鳴き声は止んでしまいます。

※3 虹彩:眼球の瞳孔(ひとみの穴)のまわりにある膜で、瞳孔に取り入れる光の量を調節します。

※4 二ホンアマガエル:「ゲッゲッゲッ」「クワックワックワッ」「ガーガー」と雨が降るとひと際よく鳴くカエルです。

※5 シュレーゲルアオガエル:4月から5月にかけて水田に水を張ると「キリキリッ」「コロロッ」と鳴くカエルで、モリアオガエルとは近い仲間です。

暮らし

主に森林に生息し、他のカエルと同じく虫などを食べます。伊那谷での繁殖期は6月中旬から7月中旬にかけてで、6月上旬にオスが冬眠から覚めて沼や湿地に集まり鳴きます。メスが産卵場所にやってくるとオスが背中にしがみつき産卵が始まりますが、複数のオスが群がります。卵は300~500個生まれるといわれており、産卵と同時に分泌される粘液をオスメスがかき回してできた、白い泡の塊が卵を乾燥や外敵から守っています。

カエルは水中に産卵するものがほとんどですが、モリアオガエルは水面上にせり出した木の枝や草などに卵を産む、珍しい性質です。

あめ

おたまじゃくし

卵は1週間ほどで孵化(ふか)してオタマジャクシとなり、雨で溶ける泡の塊とともに池に落ち、水中生活を始めますが、多くはイモリやヤゴ(トンボの幼虫)などに食べられてしまいます。オタマジャクシは藻(も)類やプランクトン、動物の死骸(しがい)などを食べ、50日前後で四肢(しし ※6)ができます。しばらく水辺で生活したのち、やがて森へ帰ります。冬は浅い土の中や苔の下で冬眠します。

市内では、野底山の他に標高400~2000mの山地に生息しており、特に上飯田や遠山谷で卵塊をみることができます。

※6 四肢:手足、前脚・後脚のことです。

見学・注意事項

林道は通常閉鎖されています。

野底山森林公園キャンプ場より先の林道は、通常閉鎖されています。見学希望の方は、以下へお問合せください。

○野底山森林公園管理事務所(0265-22-0915)

なお、現地保護を兼ねて、森林公園内八王子神社前の池でもモリアオガエルの卵塊を見学することができます。

落石・倒木・野生動物に注意!

ミズバショウ(水芭蕉)を植えないでください!

以前、蛙沼にミズバショウが繁殖していました。ミズバショウは、本州では日本海側に分布しており、伊那谷にはもともと分布していません。自然繁殖ではなく、人の手で移植された可能性が高いといえます。美しい姿であっても伊那谷においては外来種(※7)であり、蛙沼本来の生態系(※8)を変えてしまいます。また、ミズバショウの葉が水面を覆い、卵塊から落ちるオタマジャクシが水面にたどり着くのを妨げることも考えられます。

ミズバショウは種だけでなく、地下茎(ちかけい ※9)でも繁殖する強い植物です。地上部の茎を除去しても、地下茎を完全に取り除くのは難しく、翌年にまた生えてきます。完全な撤去には数年かかりました。

ミズバショウの移植に限らず、蛙沼に生息するモリアオガエルの採取や、蛙沼の現状を許可なく変更することは禁じられています

※7 外来種:国の内外は関係なく、もともとはその地域に生息していなかったのに、人間の活動によって他の地域から持ち込まれた生物をいい、生態系に悪影響を与える場合がしばしばあります。さらには、同じ種類の生物であっても、山系や水系ごとに異なる特徴をもつ種類が多く、生物の安易な移植は生態系を乱します。

※8 生態系:食う食われるなどの生物のお互いの関係と、それを取り巻く水・空気・光・土等の総合的にとらえた概念をいい、水たまりから特定の地域や山地、地球全体まで、その範囲は大小さまざまです。

※9 地下茎:地上部の茎と同じ構造ですが、栄養を蓄えて繁殖するものもあります。チューリップの球根やジャガイモや玉ねぎなども地下茎の一種です。

アクセス

○飯田市街地から野底山森林公園まで車で15分、ゲートから蛙沼まで車で16分

○野底山森林公園から蛙沼まで徒歩約1時間

関連リンク・書籍等案内

野底山森林公園(外部リンク)

「野底山を中心とせる森青蛙の研究」 宮下忠義 1939・1940 (『信濃教育』632・637・641・643・644号)

『伊那谷の自然』2 伊那谷自然友の会 1997