中央構造線程野露頭
中央構造線程野露頭(ちゅうおうこうぞうせんほどのろとう) 1区域
区 分:飯田市天然記念物(平成30年12月14日指定)
所在地:飯田市上村16-47
所有者:個人
概 要:
中央構造線とは、九州から関東まで約1000km以上連続する日本最大の断層で、活動時期は約1億年前に遡るとされています。
当地域では、赤石山脈の西麓を青崩峠から地蔵峠、分杭峠、杖突峠へと南北に連なっています。
この露頭(ろとう ※1)は平成24年7月に程野で新たに発見されたもので、露頭部分の幅は約8m、高さ約3mを測ります。
露頭のほぼ中央部に外帯(赤石山脈側)の変成岩・堆積岩系の岩石と内帯(伊那山地側)の花こう岩系岩石とが接する破砕帯(はさいたい ※2)が観察できます。
赤石山脈を走る長さ約90kmの中央構造線沿いには、北から主に板山露頭(伊那市高遠)、溝口露頭(伊那市長谷溝口)、北川露頭(大鹿村鹿塩-国天然記念物 ※3)、安康露頭(大鹿村大河原-国天然記念物 ※3)などがあり、いずれも破砕帯を伴った断層露頭が観察できます。これらの露頭の破砕帯は堅い岩石になっていますが、程野露頭の破砕帯は手で押すとへこむほど柔らかく、直線的な細かい縞状の破砕の繰り返しが観察できます。
こうした特徴は、断層形成後あまり時間が経過しておらず、断層が今なお活動的であることを示しています。
また、露頭の上部の尾根筋は、中央構造線の破砕帯のところだけが部分的に少し窪み、この窪みを軸にして尾根筋がS字にカーブしています。尾根筋の高低差と水平面上の曲がり方を測量した結果、尾根筋の垂直面で外側に対して内側が相対的に約2m隆起しており、尾根筋のS字カーブの測量結果では、水平面で外帯側に対して内帯側が相対的に北方向へ約6.5mずれていることが確認されています。このことは、中央構造線が「右横ずれ運動(※ 4)」をする活断層として活動していることを示し、ほかの露頭では観察できない貴重な変形地形と言えます。
活断層としての中央構造線程野露頭 概要 (出典:『南アルプスジオパーク・エコパーク 遠山郷の魅力』)
※1 露頭:土壌や植物に覆われずに直接地表に現れている岩盤や地層のことです。
※2 破砕帯:断層運動(地下の岩盤に力が加わり、断層面を境にずれ動くことです。地震の原因になります)によって砕かれた岩石が一定の幅をもって帯状に連続分布する部分のことです。岩盤が割れて隙間の多い状態になります。
※3 国天然記念物「大鹿村の中央構造線 北川露頭・安康露頭」(外部リンク)…信州の文化財(公益財団法人八十二文化財団)
※4 右横ずれ運動:断層を境にして自分がAの大地に立っているとき、反対側のB側の大地が自分(A側)から見て右側に動く運動のことをいいます。
「中央構造線程野露頭」の価値
(1)日本列島の成り立ちを語る上で欠かせない大断層の露頭であること
中央構造線は、関東から中部・近畿・四国を経て九州まで、ほぼ東西に連続する日本最大の断層です。地質学的には、断層北側の西南日本内帯と呼ばれる花こう岩を主体とする地域と、南側の西南日本外帯と呼ばれる堆積岩・変成岩地域の境界を成す断層です。活動時期は約1億年前の中生代白亜紀に遡るとされており、日本列島の成り立ちを語る上で欠かせません。
(2)活断層としての中央構造線を観察できる露頭であること
記録に残る赤石山脈一帯の中央構造線の地震活動は、享保3年(1718)に起こった遠山地震のみです。また、程野露頭の破砕帯の状況から、断層が今なお活動的であることをうかがうことができます。したがって、程野露頭は活断層としての中央構造線を観察することのできる露頭として貴重です。
(3)中央構造線の活動を地表からも観察することができること
露頭の上部の尾根筋は折れ曲がっており、中央構造線の活動によって生じた水平・垂直方向の「ずれ」を地表から観察することができます。
(4)地震災害や防災教育の教材となること
現場は容易に近づける場所であり、露頭及び尾根に見られる変形地形を一体的に観察することで、地震災害や防災教育にに活用することができます。
見学・注意事項
○遊歩道等が整備されていません。転倒・滑落・落石・野生動物等にご注意下さい。
アクセス
○飯田市街地から車でおよそ50分