手打ちソバ
味の文化財(手打ちソバ)(あじのぶんかざい てうちそば)
区 分:長野県選択無形民俗文化財(昭和58年7月13日選択)
所在地:県内一円
概 要:
ソバを麺にしてつけ汁にして食べる、いわゆる切ソバのことです。ソバは夏でも涼しく、霧が発生するような地域で良質なものが採れます。長野県は標高が高い山間地が多く、全国的にもそば処として知られています。飯田市内でも遠山谷などの山間部ではソバの栽培と食文化が伝統的に行われており(※1)、現在は上村下栗において特に盛んです。
ソバの調理法は焼き餅(団子)・ソバがき・煎餅などがあります。これらが日常生活で食されたのに対し、手間と技術を要する手打ちソバ(遠山谷においては「ソバ切り」と呼ぶ)は、ハレ(※2)の機会に食べられる特別なものでした(※3)。
文化財としての手打ちソバは、家庭・地域での食文化であり、店舗で提供されるソバのことではありません。しかし、遠山の飲食店などで地物のソバを楽しむことができます。
※1 飯田市周辺は長野県の南端に位置し温暖な気候です。ソバよりも米麦(現在はムギは稀)の栽培が盛んで、お盆の素麺やうどんなど小麦粉由来の麺類が郷土食として根付いています。
※2 ハレ:「晴れ着」や「晴れの舞台」などのように、祭や年中行事、日常的でないときをいいます。
※3 遠山霜月祭では、氏子の家を回る神事(家浄め)での振る舞いにおいて、あるいは氏子が自宅に親戚などを招待してご馳走を振舞う際に、ソバ切りが用意される家庭・集落があります。社殿での行事食でソバ切りは振る舞われません。
参考文献等:
『長野県選択無形民俗文化財調査報告書 ―味の文化財―』 長野県教育委員会 1984
『遠山谷中部の民俗』 飯田市美術博物館・柳田國男記念伊那民俗学研究所 2010