大塚古墳 (飯田古墳群)
大塚古墳(おおつかこふん)
区 分:史跡(平成28年10月3日 国指定「飯田古墳群」)
所在地:飯田市桐林2024 他
所有者:個人
時 代:古墳時代(5世紀後半)
構 造:前方後円墳
規模等:
墳丘測量図(水色線は墳丘推定線・破線は周溝推定線)
○墳丘;全長53m(推定) (後円部径東西35.4m)・主軸N50°E(※1)
○埋葬施設:不明(竪穴式石室〈※2〉か)
- ※1 遺構の中心線が、北(North)から64度東(East)へ傾いているという意味です。西へ傾く時はW(West)を用います。
- ※2 竪穴式石室:古墳時代の石室には、縦方向に掘られ、蓋(ふた)をした竪穴式石室と、横穴を設けて出入り口とした横穴式石室があります。5世紀代は竪穴式石室、6世紀以降は横穴式石室が用いられました。竪穴式石室が個人を埋葬したのに対し、横穴式石室は入口を開ければ数代にわたり埋葬できます。
概 要:
本古墳の東には丸山古墳、南西には兼清塚(けんせいづか)古墳と、3基の前方後円墳が並んでいます。兼清塚古墳は、出土遺物から5世紀中頃と、飯田古墳群の中でも最も古い前方後円墳の可能性がある古墳です。
本古墳は5世紀後半と考えられていますが、竜丘単位群の中でも古い一群の系譜上にある古墳です。
後円部を中心に残る墳丘
埋葬施設等は確認されていませんが、竪穴式石室と考えられています。
後円部西側
墳丘の西側の水田は窪地になっており、周溝(※3)の痕跡と考えられています。
- ※3 周溝:墳丘の周囲にある溝をいい、区画や墳丘を大き見せる効果、墳丘の土の供給などの役割がありました。
出土遺物
円筒埴輪片・形象埴輪片・五鈴鏡
五鈴鏡
竜丘地区の様相:
竜丘地区は、天竜川支流の毛賀沢(けがさわ)川から久米(くめ)川までの間ですが、新川(しんかわ)を境に南北のグループに分けられます。
4世紀から5世紀前半にかけては、葺石を貼るものもありますが、弥生時代以来の方形周溝墓(※4)につながる小型の方墳が造られて続けています。
5世紀中頃に兼清塚古墳が造られたと考えられており、兼清塚古墳の後には丸山古墳、大塚古墳と5世紀後半まで造られます。小河川を挟んで兼清塚古墳の南側では、兼清塚古墳にやや遅れて内山塚古墳(円墳)、鏡塚古墳・鎧塚古墳(帆立貝形古墳)、塚原二子塚古墳などが築かれ、塚原古墳群を形成します。なお、発掘調査事例が多くないことも考慮しなければなりませんが、竜丘地区から馬の埋葬事例は確認されていません。
6世紀になると、兼清塚古墳の一群は途絶えますが、塚原二子塚古墳の前方後円墳の系譜は金山二子塚古墳と続き、やや距離は離れますが、6世紀中頃の御猿堂古墳、6世紀終末の馬背塚古墳へと続いていきます。
一方、新川の北側では5世紀後半に権現堂1号古墳が築かれ、しばしの空白があり6世紀後半に塚越1号古墳が築かれています。
6世紀終末の馬背塚古墳を最後に、飯田下伊那では前方後円墳は築かれていません。
竜丘地区は、飯田古墳群の中でも最も古墳が密集する地区で、5世紀中頃から6世紀末まで前方後円墳の系譜が途絶えることなく続きます。飯田古墳群は、最終的に竜丘地区に集約していく様子がうかがえます。横穴式石室の特徴からみれば、東海地方と畿内との関わりが強い地域であったと考えられます。
その後の7世紀の様相は不明ですが、竜丘地区南部の上川路には、白鳳時代(※5)の瓦が出土している頃から、寺院が建立されたと考えられています。竜丘地区は古墳築造が終わったも、仏教文化を受け入れることで地域を治めていた集団が存続したと考えられています。
- ※4 方形周溝墓:周囲に四角い溝を掘った墓をいいます。弥生時代以来の方形周溝墓は、古墳に比べ盛土の高さが低いことが特徴の一つです。
- ※5 白鳳時代:飛鳥時代と奈良時代の間、645年から710年までのことをいいますが、年代については諸説あります。仏教文化が栄えた時代です。
書籍等案内:
- 史跡 飯田古墳群
- 『飯田は古墳の博物館 古墳ガイドブック』 飯田市上郷考古博物館 2017
- 国指定史跡飯田古墳群パンフレット (PDFファイル/7.29MB)
- 特集国指定史跡飯田古墳群(広報いいだ平成29年1月1日号より部分転載) (PDFファイル/12.71MB)
- 飯田市有形文化財 飯田古墳群馬匹関連遺物
- 『飯田における古墳の出現と展開』 飯田市教育委員会 2007
- 『飯田古墳群』 飯田市教育委員会 2012
- 『飯田古墳群 -論考編-』 飯田市教育委員会 2013
- 『下伊那史』第二巻 下伊那誌編纂会 1955
- 『黄金の世紀』 飯田市美術博物館 2011
アクセス・見学・注意事項:
- 駐車場はありません。私有地・通行の妨げになる場所への駐車はお止めください。
- 無断での立ち入りはご遠慮いただき、周辺より外観を見学して下さい。
- 塚原古墳群 徒歩8分
- JR飯田線「時又」駅 徒歩14分
- 信南交通 市民バス 久堅線 「駒沢橋」 徒歩2分