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和田タイプ(遠山谷南部)の霜月祭

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年1月18日更新

一の湯 一の湯 和田 諏訪神社

目次

1 特徴

2 本祭の流れ(次第)

 ・祓い ・舞 ・湯立 ・神名帳 ・面 ・神返し

3 用語(社殿・道具・役などの説明)

4 神社と本祭の日程

5 他のタイプの霜月祭を見る

6 参考サイト・参考文献等

特徴

遠山谷南部で行われている和田タイプの霜月祭は、遠山谷北部・中部の祭と比べて独自色が強く、祭の背景にある信仰の系譜が異なる可能性も指摘されています。

釜・湯殿 (ゆどの)

湯殿 湯釜と湯殿 (和田 諏訪神社 2017年)

湯釜の数は1口で五徳(ごとく ※)が支えています。

竃の上に吊下げられている木枠と、これを飾る湯の上飾りをまとめて湯殿といいます。湯飾りには、大千道・小千道・八つ橋・湯男などと呼ばれるものがあります。全部で61通りの湯飾りが木枠に着けられるといわれ、還暦と同じ数で、よみがえりを表しているといわれています。

上町タイプは釜と湯の上飾りを合わせて湯殿と呼んでいますが、和田タイプでは釜を含みません。

※ 五徳:加熱用容器を支える、輪と3本または4本の足を組み合わせた金属や陶器などの道具です。

湯立 (ゆだて)

湯立は、一の湯二の湯鎮の湯の3立て行います。

楽器

太鼓のみが用いられ、笛がないことが他の霜月祭と異なります。太鼓のリズムは、天龍村の霜月神楽(外部リンク)と共通するリズムがあります。

面(基本形)

水の王―火の王―八社神・村内の神―神太夫夫婦―猿

和田タイプの祭は41面があり、湯切りは水の王が行います。遠山谷で最も多くの面が奉納されており、遠山谷では南部ほど面数が多い傾向があります。

八重河内の八幡社で管理している面を、和田諏訪神社とそのほかの神社でも用いています。

神名帳が奉読の形をとらない

神名帳が特徴の一つである遠山霜月祭ですが、和田タイプでは奉読されません。代わりに、神名帳の神々は湯立の中で呼ばれます。

一の湯 一の湯の湯召し(和田 諏訪神社 2017年)

舞が発達している

ふみならしの舞 神々を迎える準備のふみならしの舞(和田 諏訪神社 2017年)

遠山谷北部・中部の霜月祭に比べ、舞の割合が全体的に高くなっています。舞によって神を迎え、迎え、送り返します。また、舞は複雑な足踏みを繰り返して行うところに特徴があります。

隅固め  湯釜の隅を基準に神事が行われる

ひいな降し ひいな降しの舞 小幣が2本立つ囲炉裏の西隅が「立場」となる(和田 諏訪神社 2017年)

神事や舞を始める位置を立場(たちば)と呼んでいますが、いずれも右回りに隅を回り、立場に戻って終わります。主に湯釜の西隅を基準とした位置から開始され、北・東・南・西の五隅で繰り返されます。なお、和田タイプ以外では、神事は主に湯釜の正面から始まります。

西隅は日の出を拝む位置であり、数にこだわるなど、和田タイプは太陽と生命の復活を祝うと考えられる要素が多くみられます。

三三九度、七五三 縁起が良い数で構成されている

三三九度は結婚式で夫婦が結びつきを確認する儀式として知られています。七五三は7歳・5歳・3歳の子どもの成長を祝う年中行事です。いずれも、古代中国において、奇数が縁起の良い数と考えられていることも影響しています。

舞では囲炉裏の各隅で決められたステップを3回繰り返します。扇の舞では、閉じた扇で1周、開いた扇で1周、チラシと呼ばれる早い動作で1周舞い、剣の舞では腰に差して1周、刀を抜いて1周、ちらしで1周します。

猿面 和田 諏訪神社(2017年)

面は、舞殿で61歩足踏みして戻れといわれていますが、還暦の数です。最後の猿面は、1周目は各隅で7回づつを3回、2周目は各隅で5回づつを3回、3周目は3回づつを3回、足を上げて軽く跳ねます。

このように、和田タイプの霜月祭は、数に意味が込められた舞となっています。

反閇(へんばい)と呼ばれる呪法で舞う

反閇とは、大地を足で踏みしめ邪気を祓う特殊な歩行法のことで、相撲の四股(しこ)もその一つといわれています。

水の王 水の王(和田 諏訪神社 2017年)

和田タイプの面行は、両手を腰にあてて、太鼓に合わせて左足を大きく上げて踏み出し、その前に右足を出します。次いで、太鼓に合わせて上体を大きく反ります。これを左右交互に繰り返して進みます。

本祭の流れ(次第)

宵祭や、準備(竃や湯飾り、若水迎え、火入れ等)、例大祭(※)、片付け(算日(さんにち))等も大切な神事で民俗行事ですが、ここでは和田諏訪神社を中心に本祭の流れを記します。写真は特に説明のない限り、和田諏訪神社の霜月祭のものです。

※ 例大祭:和田八幡社は旧村社なので、本祭に先立ち禰宜(ねぎ)とは別に神社本庁公認の宮司(祀掌)を迎え、祝詞奏上や献饌などを行います。

1 湯の式(式の御神楽)

湯の式 和田 諏訪神社(2017年)

神々を迎える式です。拝殿楽頭を含む7名が上がり、神楽歌をうたいます。祭場と神が通る道を清めて飾り、神が現れる様をなぞるもので、続いて神々を招待する宣明(せいめい)を奏上し、釜や薪など道具を褒める神楽歌をうたいます。

現在の和田では楽堂で行っています。

(1) 清めの御神酒

楽堂に上がり、御神酒を三度で飲みます。

(2) 祓い

塩祓いをし、幣で太鼓を祓い、剣印で九字(くじ ※)を切り、身滌(みそぎ)の祓を唱えてから、幣を太鼓の注連縄に差します。

※ 九字:災を取り除き、身を護る呪法の一つで、漢字9文字を唱えながら印を結んだり、剣印で空を切ったりします。

(3) 式の御神楽

神集いの詞

楽頭(かつては禰宜)が太鼓のバチを合わせて拝み、神集いの詞を唱え、太鼓を打ちます。

式の御神楽

引き続き、楽頭が神楽歌のモトをうたい、他の禰宜が鈴を振りながらウラをとります。

式の神楽・御神楽(和田 諏訪大明神) (PDFファイル/134KB)

(4) 宣命

禰宜が太鼓を打ちながら唱え、他の禰宜が鈴を鳴らして調子をとります。

(5) 御神楽

四季の神楽・玉の神楽・式の神楽・湯殿ほめの神楽がうたわれます。なお、神楽歌の名称は正式に決まっていないため、仮称です。神楽が終わると禰宜が最後の辞を述べ、二礼二拍手一拝し、一同も一礼して終わりです。

(6) 御神酒

神前で御神酒をいただきます。

2 踏みならしの舞

一年ぶりにお迎えする神様のために、お宮の根太(ねだ ※1)が腐っていないかを確かめるため、あらかじめ踏み固めておく舞といわれています。四つ舞とも四方舞ともいわれ、水干と湯衣を着た4人が扇と鈴を持って舞い、囲炉裏を3周します。炉の西隅には最も熟練した者が立ち、先達(せんだつ ※2)を務めます。

ふみならしの舞 和田 諏訪神社(2017年)

まず囲炉裏の隅に扇と鈴を置き、これに向かい蹲踞(そんきょ ※3)して九字を切るなどし、扇と鈴を手に持ち、左膝立、右膝立、左膝立と3回行って立ちます。

ふみならしの舞 和田 諏訪神社(2017年)

扇を閉じて炉を1周、開いて1周、3周目はちらしといい、調子を早くして舞います。

※1 根太:建物の床を支える部材です。

※2 先達:一般的に、その道に通じていて他を導く先輩のことをいいます。

※3 蹲踞:座り方の一つで、剣道の試合の前に行われる蹲踞が代表的ですが、いくつかのやり方があります。つま先立ちで座り、かかとの上に尻を置いて、上体を真っすぐ伸ばして正面をみます。

3 湯開き

湯開き

湯開き 和田 諏訪神社(2017年)

太夫禰宜と脇禰宜2名が釜の湯蓋(ゆぶた)を取る儀式で、丁重な祓いが伴い炉の周りを3周します。

湯蓋の上に扇子・鈴・刀・湯木(ゆぼく)を置き、炉の西隅に太夫禰宜が、両脇に脇禰宜が立ちます。脇禰宜による塩祓いの後、太夫禰宜による身滌の祓六根清浄祓天地一切清浄祓大祓詞を唱え、二礼二拍手一拝し、大祓詞以外を北・東・南・西の隅で繰り返します。

湯開き 和田 諏訪神社(2017年)

次に湯木と鈴を湯蓋の上に差し出し、右手の扇で軽く3度叩き、湯木を湯桁に載せて拝むなどを、西・北・東・南・西の五隅で繰り返します。

湯開き 和田 諏訪神社(2017年)

3周目に、湯蓋を取る呪文を唱え、両手で持った湯蓋などを釜の上に3度突き出し、続いて湯たぶさで釜湯を祓います。これを、西隅から五隅で繰り返します。

禰宜が扇で釜湯を汲み、西隅のムシロの上に座った氏子総代の扇へ汲み入れる真似をします。

神清め・宮清め

祭神と神社を清める儀式です。釜湯を湯桶に柄杓で7回と半分で汲みます。

宮清め 和田 諏訪神社(2017年)

神清め

湯桶の湯を、西隅から順に八将神の幣の元に注いで清めます。

宮清め

宮清め 和田 諏訪神社(2017年)

太夫が湯桶と湯たぶさを持ち、脇禰宜や保存会員がこれに従い、湯釜・神殿帳場楽屋・へっつい(炊事場)・境内の順に、宮清めをうたい、湯を振りかけて清めます。

4 一の湯

「姫舞」「湯殿渡し」「湯召し」までを湯立(ゆたて)といい、霜月祭の中心となる神事です。和田タイプで湯立ては3立行います。湯殿渡しと湯召しはここでの仮称ですが、上町タイプの霜月祭で似た内容の神楽歌がそのように呼ばれています。なお、和田タイプで神名帳奉読は行われませんが、湯立の中で神名帳の神々が呼ばれています。

一の湯 和田 諏訪神社(2017年)

太夫禰宜を西隅にして、保存会員ら計12人(旧暦閏年は13人 )が、湯木を両手に1本づつ持ち、釜の周りに並びます。

※ 旧暦:太陽の動きを基準にした現在の新暦(太陽暦)が採用される前の、月の満ち欠けを基準にした暦(太陰暦)です。1年が約365日の太陽暦に対し、月は約354日で地球を1周するため、太陰暦は約3年間で1年が約1月短くなりますので、閏月(うるうづき)を入れて調整しました。

(1) 姫舞(湯ばやし・湯立舞)

太鼓に合わせて舞い、炉を3周し、3周目はちらしとなり、早い調子となります。

(2) 湯殿(ゆどの)渡し (仮称)

湯殿渡し 和田 諏訪神社(2017年)

舞姫で3周して立場に戻ると、全員が釜を向き、両手の湯木を袖で包むように持ち、体を左右に振りながら神楽歌をうたいます。太夫がモトをうたい、他がウラをうたいます。

最後に、全員で湯木を重ねて持ち、火伏せの歌を唱えて湯釜の上に伏せます。

湯殿渡し・湯召し・神名帳(和田 諏訪大明神) (PDFファイル/185KB)

(3) 湯召し(仮称)

右手に湯木をまとめて持ち、太夫禰宜が湯召しのモトを唱えると舞人は体を左右に振り、舞人がウラをうたう時に、釜湯の中に湯木の元を入れて、湯の雫を神々に捧げます。

神拾い 和田 諏訪神社(2017年)

神々は、日光月光から始まり、全国の大社、全国の一之宮、村内の神々を丁寧に拾います。村内の神々では、村・集落別の神名帳を舞人に渡し、2人1組で神を拾います。

(モト)〈神々〉  (ウラ)〈神々〉へお湯召す時のおみかげこぐそ」

(4) 姫舞(湯ばやし・湯立舞)

湯はやし 和田 諏訪神社(2017年)

湯立てが終わると、再び姫舞となり3周舞い、4周目は「ウオー」と声を上げながら一周し、そのまま太夫禰宜を先頭に拝殿側へ並び、一礼して終わります。

夕食

保存会員は夕食となります。

子どもの舞

16時頃、小中学生が順次舞います。祭伝承のために、和田小学校、遠山中学校で練習した舞いです。

初参り

子どもが誕生した氏子が、霜月祭のときに家族で産土の神様へ参拝するものです。

初詣り 和田 諏訪神社(2017年)

禰宜が祭の合間をみて、各種祓いを唱え、玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行い、御神酒をいただきます。

5 下堂(げどう)祓い(扇剱の舞)

扇と剣の舞で、扇剱(けんせん)の舞とも呼ばれており、神楽で迎えた神々についてやってきた悪い神様を追い払う舞いとわれています。2 踏みならしの舞と同じく、4人が炉を3周します。

扇の舞

外道祓い 和田 諏訪神社(2017年)

踏みならしの舞と同じく蹲踞(そんきょ)をし、扇を閉じて炉を1周、開いて1周、3周目はちらしといい、調子を早くして舞います。

剱の舞

外道祓い 和田 諏訪神社(2017年)

炉の縁で蹲踞をし、刀をなでて刀を改めます。続いて、1周目は腰の刀の柄頭(つかがしら)を押さえて、2周目は刀を抜き、3周目はちらしで舞います。

6 二の湯 

二の湯 和田 諏訪神社(2017年)

4 一の湯は12人ですが、二の湯は6人で行います。一の湯と同じく、姫舞湯殿渡し湯召しを行いますが、湯殿渡しに火伏せの歌が加わり、村内の神々に古い眷属(けんぞく ※)が加わるなどしており、姫舞で終わります。

※ 眷属:神の使者や位の低い神仏をいいます。


7 願ばたき(願御神楽・金湯)

かつては、大病を患った人の家族等が、病気回復や厄除けを願い(立願)、願帳を持ってお見舞いし、願が叶った場合にお礼の願ばたきを行いました。願御神楽をうたい、金湯の願では釜の湯を受け取り、家を清めます。現在は行われていません。

8 神子の湯(かみこのゆ)

かつては、病弱な子の成長を祈って、願が立てられたりしました。健康を願って立願した人やそれが叶った人などが神の子となり、一生涯神に奉仕することを誓います。現在はほとんど行われていません。

楽堂で神子の御神楽がうたわれ、神子の湯として二の湯と同じ湯立てが立てられます。

続いて、神子となる人を炉の西隅に座らせ、禰宜が左右から湯をかざした湯たぶさを頭上で交えます。太夫禰宜は神子となる人の後ろから、湯衣を本人の上着に着せます。これを禰宜らが詞を唱えながら行います。

儀式が終わると、舞姫を舞い、禰宜や舞人は神殿に座して御神酒をいただき、祝います。


9 祝儀の舞

祝儀の舞 和田 諏訪神社(2017年)

本来は神子の取り上げがあったときに、神子から祝儀をもらい舞うもので、現在は神子の取り上げはしていませんが、舞の保存のために恒例で行っています。

剱と鈴による四つ舞で、刀改めから入り、炉を4周します。

10 鎮めの湯

鎮めの湯 和田 諏訪神社(2017年)

最後の重要な湯立で、非常に丁重に神々を呼んで湯を差し上げます。禰宜・氏子ら12人(旧暦閏年は13人)により、姫舞湯殿渡し湯召しが行われ、最後に日月の舞が舞われます。かつては2~3時間かかったといわれています。

(2) 湯殿渡し

一の湯と同じ神楽歌の最後に、火ぶせの詞があります。

(3) 湯召し

一の湯と同じく、日光月光・全国大社・全国一之宮・村内の神々に加え、街道割り(※1)・谷割り(※2)の神々が呼ばれ、最後に残らずの神に湯を差し上げます。また、無縁の御神まですべての神々が呼ばれます。

※1 街道割り:東山道8ヵ国など、日本の旧国を街道別に、「高い大神低い小神 諸神の御神一社も残らず」が呼ばれます。

※2 谷割り:谷川の奥、源流域を「入り」といい、遠山谷の大小の河川や山の名が呼ばれます。

(4) 日月の舞(鎮めの舞)

鎮めの湯最後の姫舞をいい、一の湯の姫舞と同じですが、1周目で自分の立場に戻ったときに日月の舞の歌が入ります。

11 やおとめ

拝殿で奇数人数の舞人が、右手に中折り紙を持ち舞います。「羽揃えの舞」とも呼んだといわれています。

面下し

神殿脇に置かれた面箱を拝殿奥まで下し、身滌の祓を唱えた後、面箱を開け、三方(さんぽう ※)の上に水の王の面を祀ります。

やおとめ

八乙女 和田 諏訪神社(2017年)

水干姿の舞人5人または7人が横一列に並び、中折り紙を右手に挟み、禰宜のうたに合わせて8の字を書くように振ります。

※ 三方:神事などにおいてお供えを供える台のことです。

12 面

面は41面あり、水の王・火の王に続き、村内の神々が次々と現れ、炉を3周します。続いて神太夫夫婦が出て、最後は猿で終わり、面数が多いので約2時間くらいかかります。

火伏せ(湯伏せ)

火伏せ 和田 諏訪神社(2017年)

湯伏せ 和田 諏訪神社(2017年)

太夫禰宜が炉の西隅のムシロの上に立ち、身滌の祓・大祓詞・を唱え、両袖を合わせた中で九字の印他を結んでから、湯の上に両手を伏せます。これを炉の5隅で繰り返しますが、大祓詞は最初の西隅だけです。

西隅に戻ると、祓幣の先で湯面に「水求」と書き、湯木を釜底まで突き立てます。一歩下がり、再び袖の中で印を結び、火伏せ湯伏せの呪文を唱え、水の王の登場を待ちます。

(1) 水の王(鎮め様)

湯切りを行う鼻高の面で、この湯がかかると一年が息災で過ごせるといいます。

水の王 和田 諏訪神社(2017年)

両手を腰にあてて、太鼓に合わせて左足を大きく上げて踏み出し、その前に右足を出します。次いで、太鼓に合わせて上体を大きく反ります。これを左右交互に繰り返して進みます。反閇(へんばい)と呼ばれる、足踏みや歩き方により清める呪法です。

湯伏せ 和田 諏訪神社(2017年)

1周目は反閇により回ります。2周目は、西隅に来ると両袖を合わせた中で印を結び、火伏せの呪文を唱え、両手を湯の上に伏せます(押伏せ)。反閇で移動し、これを5隅で繰り返します。西隅に戻ると、3周目は右手の水干の袖をたぐり上げて釜の湯をかける真似をし、これを5隅で繰り返します。

湯切 和田 諏訪神社(2017年)

湯切りは4周目に行い、西隅に立ち、左・右・左と湯を跳ねとばします。これを5隅で繰り返します。5周目は再び両手を腰に当てて、反閇により一周し、神前に戻ります。

水の王が引き上げると、西隅で湯を伏せていた太夫禰宜が、火伏せの印を解き火起こしの印に変え、火起こしの呪文を唱えてから戻ります。

(2) 火の王

水の王が帰るまで面箱より出さない決まりです。反閇で登場し、釜の周りを3周して戻ります。

(3) 祭神面

和田諏訪神社では諏訪大明神、八重河内八幡社では八幡大神面で、火の王と同じく釜を反閇で3周して戻ります。

(4) 村内の神・遠山氏一族

常時3・4面が舞殿に出てきて、反閇により釜を3周して戻ります。木沢や上村と異なり特別な扱いはありませんが、近年秋葉面(烏天狗)が湯を切ったり、木沢地区の四面のように跳ねることがあります。舞手が少ない場合は一般の希望者が舞うこともあります。

面 和田 諏訪神社(2017年)

(5) 神太夫・姥(かんだゆう・うば)

爺さと呼ばれる猿田彦命(さるたひこのみこと)と、しょんべん婆さと呼ばれる天宇受売命(あめのうずめのみこと)の2面です。

しょんべん婆さ 和田 諏訪神社(2017年)

右手に笹を束ねた湯たぶさ持った婆さが先に登場します。湯たぶさで観衆の頭をなでて回りますが、観衆は隙(すき)をみて、婆さの尻などを触ると、婆さは湯たぶさで強くたたき返したり、釜の湯を振りかけたりします。

神太夫 和田 諏訪神社(2017年)

爺さは、烏帽子をつけて刀を差して登場しますが、西隅で関守役に止められて、問答をします。

海道下り 八重河内 正八幡神社(2018年)

爺さは問答に負けて、身につけていたものを取り上げられ、元来た道を帰りますが、「伊勢音頭」に合わせたて婆さと抱き合って戻ります。子孫繁栄の象徴です。

(6) 猿(猿楽)

猿舞 和田 諏訪神社(2017年)

最後の面で、全身赤の装束で、七五三に舞われます。

猿舞 和田 諏訪神社(2017年)

1周目は立って舞い、西隅で太鼓に合わせて左・右・左と7回手足を上げて飛びあがります。その場で立って右回りに1回転し(立ち舞い)、右・左・右と7回飛び上がります。続いて左回りに回り、左から7回飛び上がります。これを5隅で繰り返し、移動の際は扇であおいだり、たぶさで顔を掃いたりします。

2周目は1周目と同じく飛び上がりますが、5回づつになり、中腰で腰に手を当てて回転します(腰舞い)。

3周目は飛び上がる回数が3回になります。回転は折り膝で、扇とたぶさで頭をなでるようにする、座り舞いです。

4周目と5周目は3回の飛び上がりによる立ち舞いで1周し、5周目が終わると、同様に北隅・東隅と舞い、再び北隅・西隅と戻って終わります。

舞殿の舞いの前後で神前でも禰宜の謡いに合わせて舞いを行います。

13 神送り(申しの参合)

太夫禰宜・モズ係2名・脇立ちの4名で、西隅より5隅で行います。

脇立ちが塩祓いをし、太夫禰宜が身滌の祓・大祓詞を唱え、宣命を読み上げます。

キチキチキチ 和田 諏訪神社(2017年)

途中、「押付けもんず」の詞のところで、モズ係が、腰をかがめて右手に持った湯たぶさを腰にあてて振りながら、「キチキチキチ」と唱えて交差し、5回入れ替わります。大祓詞を除き、これを5隅で繰り返します。

14 粕舞

粕舞 和田 諏訪神社(2017年)

サイの目に切った大根と豆腐のカス(おから)を載せた盆を持って舞います。神返しした後にも残っている神に、「もうご馳走はカスしか残っていないのでお帰り下さい」という意味です。古くは西隅で粕舞を舞い、天地天地の舞いで1周半しましたが、現在は粕舞で2周するため、合計3周半回っています。

(1) 粕舞

2 踏みならしの舞と同じ足踏みで舞い、粕舞の謡いが伴います。うたい終るとカスが投げられます。

(モト)大荒神となる (ウラ)小荒神となる (略)」

(2) 天地天地の舞

天地天地の舞 和田 諏訪神社(2017年)

太鼓の調子が早まり、西・北・東・北・西隅で舞います。

15 ひいな降し

2 踏みならしの舞と同じに舞い、本来は9周半、現在は7周半炉の周りを回ります。

1周目は舞人一人が湯たぶさと鈴を持って一周します。

2周目は同様に舞い、ひいな降しの謡が伴います。

(モト)宵にゃ神楽 夜中にゃ静め あかとき ひいな降し舞う人舞うやな (ウラ)舞う人は一せもさかえて泰刀まします (略)」

ひいな降し 和田 諏訪神社(2017年)

3周目は右手に鈴、左手に白紙を持ち、踏みならしの舞と同じで1周します。

4周目は鈴を置き、白紙を破りかけながら1周します。

神送り 和田 諏訪神社(2017年)

5周目は紙を破り切り、5隅に置きながら1周します。紙を置くときに「やぶれ紙は千枚よ」と唱えます。

ひいな降し 和田 諏訪神社(2017年)

6周目は5隅に置いた紙を拾いながら「何尋(何拾う)」とモトが唱えると、周囲が「千尋(ちり拾う)」とウラをとります。

7周目は拾った紙を持ち、八将神の小幣を拾い上げ、火中に投げ入れ、8周目は湯たぶさを火中に投げ入れますが、現在は行われていません。6周目で紙と八将神を拾い、火中に投げ入れています。

続いて、粕舞と同じく天地天地の舞を舞います。

16 金剱の舞

金剣の舞 和田 諏訪神社(2017年)

最後の舞です。湯の上飾りを切り落とし、刀を抜いて九字を切ります。

(1) 金剱の舞

舞人1人が西隅から刀を置き、踏みならしの舞と同じ舞で1周します。

舞人が西隅に戻ると、禰宜が湯蓋をかぶせ、舞人がその上にかざした湯たぶさを叩くように鈴を振り、謡を唱えると、周囲がウラをとります。うたい終ると禰宜は湯蓋を取ります。これを各隅で繰り返します。

3周目は刀を腰に差し、踏みならしの舞で1周します。

4周目は刀を半分抜き、湯の上飾りを摺るようにして、1周します。

唱え事をして、刀を抜いては閉じる動作を繰り返して東隅まで半周進み、続いて唱え事を3回して観衆がウラをとり、西隅へ後ずさりします。

(モト)剱めんせ (ウラ)八釼めんせ」

5周目は舞人が刀身を立てて、唱え事をすると周囲がウラをとります。続いて湯飾りを7回にわたり切り捨てながら、炉を1周します。

(モト)剱の文字は (ウラ)湯の上の下道は抜いてこそ払えよ」

八釼 和田 諏訪神社(2017年)

最後に舞人が西隅のムシロの上に立ち、両手で刀を持ち、釜に向けて構え、呪文を唱え、九字を切ります。この時、東隅の刀の先に人が立たないように注意します。

(2) 釜渡し

釜渡し 和田 諏訪神社(2017年)

3 湯開きと同じく、釜の湯を氏子総代に汲み渡す儀式で、扇に汲み入れる真似を3回繰り返します。

(3) 万歳

(4) 直会

一同が神前に集まり、おじやと御神酒をいだだき、解散となります。

解散 和田 諏訪神社(2017年)

用語(祭場・道具・役などの説明)

祭場等

本殿・拝殿 (ほんでん・はいでん)

本殿は祭神が祀られており、祭神を拝む空間が拝殿で、神事の一部や準備などが行われます。一般には開放されていない空間です。

舞殿 (まいでん)

拝殿の前にあり、神楽歌や舞が奉ぜられる霜月祭の主な祭場となる板の間で、中央に囲炉裏(いろり)があり釜がすえられています。村人以外の立ち入りは、基本的に舞殿に限られています。

湯殿 (ゆどの)

竃の上に吊下げられている木枠と、これを飾る湯の上飾りをまとめていいます。

炉・湯釜

正方形の囲炉裏で、湯釜は鉄製の五徳(ごとく)に載せています。元々は3本の生木で支えていたとみられます。

八将神・八丁字 (はちしょうじん・はっちょうじ)

囲炉裏の四隅に立てる小幣で、西隅にもう一つ立てます。

西隅・立場

立場 囲炉裏の西隅と八丁字(和田 諏訪神社 2017年)

和田タイプの霜月祭では、囲炉裏の西隅から神事が始まり、北・東・南・西と移り、元の位置に戻ります。西隅は朝日を拝む位置と考えられています。

また、炉を囲むように人が並んだとき、同じく右回りに東・南・西・北を回り、元の位置に戻りますが、この元の位置を立場といいます。

楽堂・楽屋

楽堂 和田 諏訪神社(2017年)

舞殿の竃の右側にあり、太鼓が叩かれる一段高い空間です。

社務所・帳場

拝殿の出入り口付近にあり、参拝者の奉納の受付やお札などを扱っています。

道具など

湯木 (ゆぼく)

湯立に使われる幣束で、松の割り木2本を一組にしています。

湯蓋 (ゆぶた)

湯釜にかぶせる蓋で、割り板を網代(あじろ)に組み、その対角線に沿って割竹で挟み、麻紐で結びます。

湯たぶさ

笹の葉をまとめて束ねたものです。

湯衣 (ゆごろも)

水の王と祝儀の舞、金剣の舞、楽頭は、神社の古い幟で作ったものを着用します。

神饌 (しんせん)

御酒・御饌(ごせん)・山海のもの、塩など、7ないし9の奇数になるように三方(さんぽう ※)を用意します。

※ 三方:神前や貴人に物を供える時などに使う、儀式的な木の台です。

主な役など

禰宜 (ねぎ)

霜月祭や季節ごとの小祭などの神事を司る神職をいい、村人からはネギサマと敬われています。各耕地(集落)の神社毎に禰宜がおり、霜月祭の重要な神事を行います。

現在の2社以外でも本祭が行われていた頃は、梶谷・此田の禰宜らが中心となり、和田・八重河内・南和田の各社を回り、地元の禰宜と村人で祭を執行していました。

楽頭 (がくとう)

太鼓を打つ役です。

女性

かつては祭のすべてを男性で行いましたが、現在は炊事(かしき)を女性に依頼しています。

ブク

死喪のことをいい、近親者に不幸があった者は祭の参加や重要な役を控えますが、祭の参加希望者は、禰宜により鳥居の手前でぶく祓いをしてもらいます。

精進

本祭の前になると、四つ足(豚・牛・羊など)など獣の肉を食べないなど、精進に心がける人も多くいます。

神社と本祭の日程

和田 諏訪神社

日時:12月13日 12時30分~24時

次第:和田・八重河内 霜月祭次第(PDFファイル/90KB)

場所:飯田市南信濃和田1597(下市場 Googlemap)(外部リンク)

八重河内 尾野島正八幡神社

日時:12月15日 13時~24時

次第:和田・八重河内 霜月祭次第(PDFファイル/90KB)

場所:飯田市南信濃八重河内251(下和田 Googlemap)(外部リンク)


初めて見学される方は、『遠山の霜月祭』の「見学にあたって」をご一読下さい。

上記は平成29年(2017)の日程です。最新の日程は、遠山郷観光協会等でご確認ください。

他に、南和田の大町天満宮では12月23日(旧は17日)に湯立が行われていましたが、現在は省略した形で実施しています。さらに以前には、梶谷集落で12月1日、此田(このた)集落で12月3日、十原(とっぱら)集落で12月8日、夜川瀬(よがわせ)集落で12月11日に霜月祭の本祭が行われていました。

他の地域の霜月祭を見る

上町タイプ(遠山谷北部)の霜月祭 (上村 上町・中郷・程野)

下栗タイプ(遠山谷中部)の霜月祭 (上村 下栗)

木沢タイプ(遠山谷中部)の霜月祭 (南信濃 木沢)

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関連サイト・参考文献等

遠山の霜月祭り(外部リンク)(遠山郷観光協会特設サイト 神社毎の祭の次第・面など詳細やアクセス等あり)

いいだtube.TV(外部リンク) (文化会館サブサイト)

『遠山の霜月祭 南信濃1 和田・八重河内・南和田編』 飯田市美術博物館・遠山常民大学 2010

『遠山の霜月祭りガイド』 遠山郷観光協会 2015

『神々の訪れ -天竜川流域の芸能の面-』 飯田市美術博物館 1996

『遠山霜月祭の世界 -神・人・ムラのよみがえり-』 飯田市美術博物館 2006

DVD 『遠山の霜月祭 和田編』 飯田市美術博物館 2011

文献・DVDは、飯田市立図書館で閲覧・視聴できます。

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